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2話 三賢者の塔

こんなに長くなる予定じゃかったのに…。

文章まとめるチカラが欲しい…。

「うおぉうぁぁ!」


 痛っ……てか重力の方向が変わったぞ!

 落ちた方向が下から横に変わっちまったぞオイ。


 なワケで足から落ちたはずなのに、背中から落ちた。

 ある意味不意打ちなのでキツい。


「うぅ~なんで落ちる方向変わるかなー」


 上体を起こしながらボヤいてると、なんか後ろのほうから視線を感じる……。

 そこには3人の爺さんがいた。


「で、出た。なんか出てきたぞ」

 青いローブで背が高くて白髪の爺さんが驚いた顔をしている。

「なんじゃ、これは人間か!」

 黄色いローブで小太りの禿頭の爺さんが目を見開いてる。

「とりあえず、人型に見えるのぅ」

 赤いローブでちっこい金髪の爺さんが目を細めている。


 とりあえず、この人たちは誰なんだろう?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 で、いろいろと話をした結果、ここは『コミレントゥ』という俺にとっての異世界で、この三人は賢者さんらしい。ちなみにここまでにかなりの時間を費やしている。

 そりゃ異世界とか賢者とかすぐ信じるとか無理だし、仕方あるまい。


 以下あちらの自己紹介。

 青い爺さんが『オーキリ』、ポーション系の道具作りが得意とか。

 黄色い爺さんが『ゲンモー』、この人は魔道具の研究が専門。

 赤い爺さんが『チャリス』、攻撃魔法の研究者で……たぶんマッドだな、この人。


 そして三人が共同で異世界への門を開く魔法を初めて実験してみたら、なんでだか俺が出てきたらしい。

 出てきたっつーか、落ちてきたんだけどね。

 その後あっちの世界とこっちの世界の話を情報交換して少し落ち着いたあと、元の世界に戻れるか聞いてみたんだが……。


 …………


「これは……難しいな……ハァ……」

「なぜじゃろうな、全く同じ手順なんじゃが……ヒィ……」

「そろそろキツいのぅ、もう魔力も尽きそうだのぅ……フゥ……」


 あぁ、コレダメだわ。

 さっきから門を開くたびにギュウォォーとかゴオォォーとか音を立てながら空気が吸い込まれてく……宇宙モノで船に穴が開いた時になるアレだ。

 そうだよなー、考えてみたら異世界ったってほとんど宇宙空間だもんなー。

 地球の、しかも地表に門が開くとか無茶な確率としか言いようがない。

 そもそも太陽系どころか天の川銀河にも門を繋げられるかどうか……。

 てか繋いだ異世界が俺の居た世界かどうかも判らんし。


 なので俺は決断した。


「あの~もういいです、なんか無理っぽいですし」


「しかし、お主がこちらの世界に来てしまったのはわしらの責任」

「そうじゃ、責任を持って元の世界に返さねば」

「そうそう、毎日続けていればいつかは上手くいくはずよのぅ」


 まぁなんだ、基本いい人達みたいなんだよなー。

 分別と良識のある大人としては、上手くいくのが奇跡だと理解できるので、ここは涙を呑んであきらめよう。

 あきらめたら試合終了?自分だけの問題なら何度も延々と繰り返すのだが、今回の場合頑張るのは他人だ。俺はあきらめが良いのだ……別名根性無しとも言うが。


 はぁ~、せっかくリタイアしてのんびり生活するはずだったんだけどなぁ……。


「なんか無理っぽいですし、やるとしてもよっぽどヒマな時で良いですよ。気長に行きましょう。 それよりもこっちで生きていかないとならないんで、生活できるようにいろいろと教えてもらえませんか? あと当面の生活に必要な衣食住と、手に職をつけたいんでその辺口利きとかお願いできればと……」


 なんか楽で稼げる仕事があればいいなー。


「おぉ!それならわれらが魔法を教えてやろう!」

「そうじゃな!わしらが教えてやれば、すぐにいっぱしの魔道士じゃ!」

「ついでに魔道具の作り方も教えてやろうかのぅ、バーン!と爆発するのが楽しいのぅ」

「ポーションも作れれば、食いっぱぐれはないぞ」

「久しぶりの弟子じゃな!盛り上がってきたぞ!」

「ならレベルも上げておいたほうが良いのう、魔力が多いほうが練習できるしのぅ」


 なにやら赤青黄の信号爺さん達が盛り上がってるようなので、お言葉に甘えよう。


「助かります、ぜひともお願いします」

 下げる頭にはちゃんと誠意を込めてある、実際有難いと思ってるしね。


「よし、ならば早速始めるか」

「まてまて、まずは住む場所を造らねば」

「場所は塔の近くで良いかのぅ」

「側は土魔法で良いな」

「よし、すぐに必要な魔道具をもって来よう」

「れっつ建築じゃのう」


 そして、俺の住まいの建築が始まった。イヤ、この爺さんたち行動力あるわー。



 あれよあれよという間に、土壁でできた2階建てのプレハブっぽい建物が出来上がってしまった。

 正味3時間てとこか、内装コミでこの短時間はすごいな……。

 上水道は魔道具を使い、下水道も魔道具を使って処理した後近くの川へ。バス・トイレ別でダイニングキッチンと研究用の実験室付き、トイレはちゃんと水洗で窓はガラスが無いが侵入除けの魔道具付き……うむ、良い物件だ。


「いやぁ、これは……素晴らしいですね。ありがとうございます」

 ここは素直に褒めておこう、実際すごいし。


「うむ、至らぬところがあれば言ってくれ。すぐに直そう」

 青い爺さんが胸を張っている、どうやら満足のいく仕事だったらしい。


「いえ、直したい個所があれば、自分でできるようになってから挑戦してみようと思います……というか、いろいろ教わればできるようになりますよね?」


「まかせておくのじゃ、わしらに任せておけばもっと凄いことができるようになるぞい」

 黄色い爺さんがニヤリとイタズラ小僧の笑みを浮かべる。


「もっと凄いこと……ですか……」


「どどーん!と草原に穴をあけたり、ばばーん!と森を平らにしたりできるのぅ」

 と赤い爺さんが……イヤ、まぁ、凄いんだろうけど生活系を優先したいので、それは後でよろしく。


「と……そろそろ暗くなってきたのぅ」

「そうじゃな、あとは明日からでいいじゃろ」

「うむ、晩飯とするか。新しい弟子の歓迎会だな」

「うほ~い、だったら酒がいるのぅ」

「だがメシは普段のしか無いぞ」

「竜魚の肉ならあるぞい」

「やた! 充分充分! あれは美味いからのぅ」

「よし! 宴じやぁ!」


 ……宴らしい。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝になり新居のベッドで目が覚めた。

 天井が視界に入ったが、特に何も言うつもりは無い。若干昨日の酒が残っているのでめんどくさいのだ。


 窓から外の景色を眺める。ちなみにここ、寝室は2階だ。

 すぐ近くに赤・青・黄と3つある、おおよそ12~3mの高さであろう3人の賢者の塔。

 この辺りは開けた土地だが、周囲は奥深い森林に覆われている。あまり見慣れた自然に感じられないのは、樹木の種類によるものか異世界ゆえのものなのか、はたまた単なる気のせいか。


「異世界なんだよなぁー」


 ちょっとばかり感傷に浸ってみる。まぁ、ちょっと考えるのがめんどくさかったというのもあるが。

 そこそこ大人になってから身に付けた技能『思考停止』だ。うむ、この技能はやはり使える。


 ん? いつの間にか爺さんたちが近くに来てたか。

「おぉ、起きておったかのぅ、やる気マンマンじゃのぅ」と赤い爺さん。

 うんにゃ、朝日が眩しすぎて寝てるのがしんどかっただけです。明日からあっちの窓は閉めて寝よう。

 そういや、こっちの世界も朝日は東から昇るのだろうか?


 そんなこんな考えてるうちに爺さんたちが家の中に……おい、無断で入るなよ、もらいもんだが一応俺の家だぞ。


「おーい、早く降りて来んかい。早く始めるぞ」

 あの声は青い爺さんだな、あの人けっこう厳しそうなんだよなー。


 下に降りたらもう3人とも座ってて準備万端、なにやら丸いテーブルにアイテムがゴロゴロしてる。

 モノに興味が湧くが、とりあえずお話だ。


「おはようございます。それで、まずは何を?」


「まずは『ステータス』じゃの。考えてみたら、お主にも『ステータス』があるのか、確認しておらんじゃった。」

「そうじゃったな、とりあえずやってみろ。念じるだけだ、簡単だぞ」


「なるほど。それじゃ、やってみますね」

 出来なかったらどうしよう、などとちょっと不安も感じつつ念じてみる。

『ステータス!』


 おぉっ! 出てきた!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名 前:ナミタロー・ヒラナカ


 種 族:人間

 称 号:異世界人

 職 業:三賢者の弟子


 レベル:1

 生命力:103

 魔 力:147


 筋 力:13

 知 力:14

 頑 健:9

 敏 捷:10

 器 用:10

 精神力:7

  運 :21


 スキル:異世界言語自動翻訳 スキル取得(中)

 加 護:造物主の加護


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 半透明のボードが目の前に開いた。良かった、ステータスがあった。

 コレ、たぶん現実の自分を反映してるんだろうなぁ……。

 精神力の7は面倒事から逃げる癖だな、運の21は……資産の運用が上手くいったのはこのせいか。

 会話が成立してるのは、この『異世界言語自動翻訳』のおかげだな。ふむ、別に言葉が同じでも無ければ俺がこっちの言葉を話しているのでも無いんだな。

 誤訳とか無いだろなー、ちと怖いぞ。

『スキル取得(中)』はスキルが取得しやすくなるスキルってトコか、(中)とはどの程度の効果なんだろう。

 つかコレだと、前の世界では何もスキルを持ってなかったという無能な人に……イヤ、たぶん元の世界とはスキルの在り方が違うのだ。きっとそうだ。たぶんそうに違いない……うん、考えるのは止めよう。

 この『造物主の加護』ってのは何だ?というか造物主って神様か何かかな?こっちの世界の。


「すまんが、こっちにも見せてくれるか」

「『ステータス開示』と念じてくれれば良いのぅ」


 爺さん……もとい師匠達のコトを忘れてた。

 そう、師匠だ。ステータスも『三賢者の弟子』になっているし。うむ。

 それでは早速『ステータス開示』っとな。


「おぉ!これは………………運が高いな」

 あぁ、それしかコメントできる目立った数値が無いんですね。なんとなく解ります。


「『異世界言語自動翻訳』か、ナミタローと最初から話ができたのはこのスキルのおかげじゃな」

 ですよねー、俺もそう思います。


「『スキル取得(中)があるのぅ、これなら魔法スキルもかなり早く覚えられるのぅ」

 そのかなり早くってのが、どのくらい早いのかを教えてくれると有難いんですが。


「この『造物主の加護』というのはなんじゃ?」

「加護は解るが、造物主というのは何だ?女神アルミトゥシュのことか?」

「それなら『アルミトゥシュの加護』になるはずだのぅ」

「そうじゃな、普通は神の名が付くはずじゃから……造物主という神は……」

「聞いたことが無いのぅ、わしらの知らない神様かのぅ」

「加護の内容を確認すれば何か解るのではないか?ナミタロー、加護の文字を触ってみろ」


 へ?そんなコトできるの?

 早速やってみると、何か説明が出た。



 造物主の加護:造物主が異世界人を召喚した際に付与された加護

  レベル20まで、死んでも召喚された場所で復活できる

  スキル及び消費アイテムの効果が上昇する



 スキルと消費アイテムの効果上昇か、これは便利かもしれない。

 てかレベル20まで復活できるって、何のゲームの初心者救済だよ!


 イヤ、それはまだ良い、問題は『造物主が異世界人を召喚した際に付与された加護』この一文だ。


 召喚されたって何? たまたまの事故じゃ無いのかよ! 爺さん達の魔法実験て関係無かったの?

 つーか造物主、てめーが元凶なのか!


「なかなかすごい加護じゃのう、死んでも復活とか凄いのぅ」

「じゃが結局、造物主とやらがどんな存在かは解らんじゃったな」

「それとナミタローがこちらの世界に来たのは、どうやらこの造物主の召喚が原因のようだな」

「わしらの実験のせいではなかったのだのぅ、ちょっとホッとしたのぅ」

「ナミタローよ安心せい、わしらが原因で無くとも魔法はちゃんと教えてやるぞ」

「そうじゃな、お主はもうわしらの弟子じゃからの」

「というか、みんな久々の弟子が楽しみなんだのぅ」


 なんというか前向きですな、みなさん。

 あれ? 今気がついたんだが、加護の説明書きのずっと下に何か……パカパカと点滅してるワードが……。


 自己主張が強いな、ハイハイ触りますよっと。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 召喚者様へのメッセージ


『おめでとうございます、あなたは異世界への召喚者に選ばれました。もうお解りかと思いますが、この世界は私が創ったものです。堅いな、ぶっちゃけたほうが良いか。


 えーと、実は自分でこの世界を創ってからひと通り遊んだは良いんだけど、なんか自分だけ楽しむのもどうかなーって思ってさ、ちょっと他の人にもこの世界で遊んでもらいたいなーと喚んでみました。


 ほら、ダンジョンとか街とか創れるゲームやってると、他の人を呼んだり遊んでもらったりしたいじゃん。まぁ、そんな感じ?

 ファンタジーRPGとか持ってたから、こういう世界好きでしょ? 中世っぽい剣と魔法の世界だよ。魔物とかも退治し放題だよ。エルフとかドワーフとか獣人なんかもいるよ。


 どうよ、遊んでかない? とりあえず遊んでってよ、なんか途中で無理だなーって感じになったら元の世界に返すからさー。遊んでいこうよ、ね?


 それでは、良い返事をお待ちしております。



 造物主より


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おい造物主、召喚した理由がテキトー過ぎだろう。てか、その勧誘の仕方はどうなのよ。


 ………………


 ハァ、どうしようかねー……気に入らなかったら元の世界に返してくれるらしいし、リアルファンタジー世界ってのも体験してみたい気持ちもある。

 そうだな、ここは自分の気持ちに素直になって遊んでみるか。決して流されたからではないぞ。うむ。


「じゃあ、この世界に世話になるとしますか」


 独り言をつぶやくと、メッセージ欄にテキストが増えた。

『ハイ、おひとり様ごあんなーい♪』


「どこの客引きだ、おまえは!」

 俺のツッコミに、すっかり存在を忘れていた爺さん達が反応した。


「どうした、何が書いてある?造物主について何か書いてあるのか?」

「そうよのぅ、わしらには読めないから教えてほしいのぅ」

「それはきっとお主の世界の言葉なのじゃな? こちらの世界では見たことが無いのじゃ」


 言われてみれば、このメッセージ全部日本語だ。普通に読めてたから、全然気がつかなかったよ。

 一応説明しとくか。


「え~とですね、造物主というのはこの世界を創った神様?というかそんな存在? らしいです。それで、その、要約するとこの世界に召喚したので、ここで生活してみてほしいと……そんな感じのコトが書いてあります」

 詳しい話はちょっとごまかしてみた。

 理由はなんというか……内容をそのままぶっちゃけるのは、この世界の人に悪い気がするので……。


「ここで生活してみてほしい……か、何かの実験か?」


「そうですね、何かの試みで召喚されたようです。ですがこちらの意思は尊重してくれるとのことで、元の世界に帰りたければ帰してくれるそうです。」

 ウソは言ってないよ、ウソは。


「ほう、それでお主はどうするのじゃ? 帰るのか?」


「いいえ、せっかくなのでこちらで暮らしてみたいと思います。イヤになったら元の世界に帰してくれるとまで書いてありますし、こっちの世界に興味もありますから」

 勧誘の言葉までは言うまい。


「ほぅ、良かったのぅ。弟子がいなくなると、つまらないからのぅ」


「そ、そうですか、改めてよろしくお願いします」

 この世界で遊ぶ為のチュートリアル代わりに弟子になる、とは言えない。


「よし、そうと決まれば予定通りレベル上げじゃ!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、これらの薬をまず飲めというので?」

 目の前には2種類の、なにやら怪しい液体の入ったビンが置いてある。

 色は怪しい紫色と怪しい濃緑……え~と、不気味なオーラが見えるのは幻覚ですか?……。


「そうだ、わしの自信作だぞ。レベルの上限を上げる薬と、経験値を増やしてレベルを上げやすくする薬だ。『女神の反省』と『魔王の心臓』という貴重な素材を使った逸品だぞ。理論的には限界値とされる500ですら超えられるはずなのだ。まぁ、おおよその計算での上昇値は50前後、500を超えるにはお前の上限値が最低でも450は必要だがな」

 青い師匠、オーキリさんがドヤ顔で説明してくれているが、『魔王の心臓』はともかく『女神の反省』ってなんぞ? なんか想像がつかんのだが……てか、自分の研究に関するコトだとおしゃべりですな、ここら辺は研究者の性なんだろうなー。


 ちなみにこの世界のレベルの上限は個人差があって、上限値は上がりきるまで判らないらしい。

 一般人で100前後、一流どころの騎士や魔道士や冒険者で200超、勇者ともなると上限値500でなぜか固定なのだそうだ。

 師匠達のレベルは青427・黄395・赤440で、若いころに上限に達したとか。さすが賢者。

 俺のレベル上限値も高いといいなー。


 ……さて、あらためて薬を飲もう。俺はあきらめが良いのだ、精神力7だし。


「うぐうぐごっくん……ごくごくごっくん」

 あれ? 味が……ほとんどしない。ほぼ無味無臭だコレ。見た目アレだったので何か得した気がする。


「さぁ! 次はわしじゃ!これらも自信作じゃぞ! いやぁ、秘蔵の品がようやくヴェールを脱ぐ時が来たのじゃ! まずこれらの装備品は知力を大幅に上げるものだ、もちろん数多く付けるほど効果が上がるのじゃ。こっちにある道具たちは魔力を大幅に増やす、これも数多く付けるほど良い。残ったこれらの道具は運を上げるものじゃ、お主の運は元々高いがレベルが低いからな、これらで底上げするわけじゃ。それに加えて防御関連の装備品達をこれだけ付ける、これでその辺りの魔物の攻撃など屁でも無くなるのじゃ! どうじゃ!」

 黄色い師匠、ゲンモーさんが負けじとドヤ顔を決めて来る。

 どうじゃ! と言われても、あんましピンと来ませんがな。凄いんだろうなーとしか……しかし自分の開発した魔道具の話だと、やっぱり良くお話になりますな。


 まだ話足りないようなのでついでに装備の目的を聞くと、レベル上げのために強い魔物を倒すのだそうだ。その為に知力と魔力を上げ魔法の威力と範囲を底上げし、なるべく強い魔物を出来るだけ多く一気に経験値にする、と。うん、知ってた。

 運を上げるのは、レベルを上げるのに都合のよい魔物に出会いやすくする為だとか。あー、ソレ、出来るんだ。


 そうと理解すれば、早速魔道具を装備しよう。


 がしゃん! ごしゃん! かちん! かちゃり!………………がっしゃん!

 全魔道具装着完了!……イヤ、さすがにこれだけ大量に付けると、まともに動けませんてば。

「師匠! これでは強い敵に出会ったら、逃げられません!」


「その為の防御の魔道具じゃ、安心せい」

 その言葉、信用しますよ黄色師匠。


「さて、仕上げにわしの魔道具じゃのぅ。じゃじゃ~ん、魔法のつえ~♪ これはのぅ、魔法があらかじめ仕込んであるから、まだ魔法の使えないナミタローでも使えるんだのぅ。何の魔法かというとぉー『炎の絨毯』の魔法が使えるんだのぅ。これは10m四方の範囲に炎が広がるから、一度にたくさん魔物を殺っちゃえるんだのぅ。派手にぶちますと、とっても楽しいのぅ♪」

 赤い師匠、チャリスさんがニコニコしながら杖を掲げる。

 どれだけの威力か等さっぱり判らんから、指示をもらいながら使ったほうが良さそうだな、コレ。

 てか、長さの単位ってメートルなんだね……ありがとう造物主さん、これは便利だよ。

 異世界っぽさは無いけど。


 赤い師匠から杖を受け取り準備万端!

 ゆけ! 俺!


「よし、それではあっち側の森へ行け。指示は追って出す」


 青師匠の指示により俺は森へと進んでいく……あのー、やっぱ装備が重いっす。


「その辺で良いじゃろ、そこで待機じゃ」


 黄師匠の待機命令にて停止。

 森の中をこの重さで動くのは、けっこう疲れたっす。


 ………………


 来た! 小型の人型……小学校低学年くらいの大きさで緑色、ツタのようなモノを体に着けてるように見える。これはひょっとして、ゴブリンってヤツか?

 うわ! なんかこっちに、すんごい勢いで走ってくるんですけど! 手に短剣みたいの持ってるんですけど!

 えっと杖! そうだ杖! 魔法の準備しないと!


「まだ待つんだのぅ、フォレストゴブリン一匹だと経験値が美味しくないんだのぅ」

「安心するのじゃ、そいつ程度の攻撃でかすり傷でもつくような魔道具は持たせておらんのじゃから」

「経験値上昇は一回の戦闘しか効果が無い。倒す魔物はこっちで指示してやるから慌てずに待っとれ」


 そ、そうなんですか。じゃあ、えっと、待機で。

 あと師匠達、そんな遠くから指示出さんでも。不安だからもう少し近くでお願いします。


 てか、そんな考え事をしてるうちにフォレストゴブリンが猛ダッシュで目の前に!

 ……あれ? 止まった。後ろ向いた。なんか遠くを見てる。

 あ、またこっち向いてダッシュで……通り過ぎた? 何で?

 まるで逃げるみたいに……逃げる?


 いや~な予感がしてヤツが来た方向を見てみたが、特に何も無い気がする。

 苔に一面覆われた森が広がっているだけだ。こっちは地面むき出しなのに、あっちは苔に覆われてるんだなぁ。

 ん? おや? なんか苔が近づいて来てないかい? 気のせい? では……無さそうだよね……。

 どんどん近づいて……イヤ、これ苔じゃないわ。何かの生き物……体長10cmくらいの……アリ?

 うわー、無いわー、大きさが中途半端だよ。

 だって、ほら、ファンタジーの魔物のアリってもっと大きいイメージじゃんさ。


「草原殲滅アリじゃ! なんでこんな場所に!……まずいぞ、こやつの酸は強力じゃ! 酸耐性の魔道具は装備させたが、こやつは想定外じゃ! おそらく微少だがダメージは食らうぞ、レベル1のナミタローにこの数はマズいのじゃ!」


 へ? マズいの?

 じゃあ逃げ……う、装備が重くて逃げられん……。


「とりあえず魔法を放て! わしらもすぐ行く! それまで持ちこたえろ!」


 よし、魔法だ! どうするんだっけ! テンパってるぞ俺! さすが精神力7! そして何故精神力を上げる魔道具を持たせなかったのだ黄色い師匠!

 うわ! もう足元に! てか昇ってきたよコイツら! 本格的にヤバい! てか周り一面緑色だし!

 咬まれた! しかも刺されてるよ! うわー! 痛……くない? あれ?


「何をしてるんだのぅ!『炎の絨毯』と言うだけで良いんだのぅ! 急ぐのだのぅ!」


 赤師匠! パニクってる頭に適切な指示をありがとう! 一生ついていきます! マッドとか思っててすいません!


 頼む! せめて一時凌ぎになってくれ!

「 炎 の 絨 毯 ! 」


 ゴゴオオオォォォォォォ!!!


 瞬間、杖の先からもの凄い勢いで炎が噴き出した。

 炎の勢いは留まるところを知らず、ようやく杖がおとなしくなった頃には辺り一面炎に包まれていた。

 体に纏わりついていた緑色のアリ達は炎に引火して落ちて行ったのでようやく一息つける。

 気が抜けた頭で『これじゃ炎の絨毯というより炎の海だなぁ』などと考えていたら、師匠達の声が聞こえた。


「おぉ~い!大丈夫かのぅ~」

「大丈夫じゃろうて、この程度の炎なら魔道具で防げるはずじゃ」

「だろうな、おぉーい!無事なら返事をせーい!」


 本気で心配してくれているのは赤師匠だけな気がするが、気にするのは止めよう。


「大丈夫でーす! くっつかれたアリも全部燃えましたー! 無事でーす!」

 よし、ちゃんと生きている。うむ、無事だ。無事なんだけど、さすがに疲れたのか頭が少しボーっとしてる気がする。

 無理もない、すんごいパニクってたもんなぁ、俺。


『チーン、レベルアップしました』

『チーン、レベルアップしました』

『チーン、レベルアップしました』

『チーン、レベルアップしました』

『チーン、新たなスキルを取得しました』

『チーン、レベルアップ………………』

 ………………


 レンジのチンのような音と共に、レベルアップの告知が頭の中に響く。次から次へと。

 時々スキル取得とかスキル上昇とかの告知も混ざっているみたいだ。

 ステータスは後で確認しよう。今はとにかく疲れて頭がどんどんボーっと……。

 そして辺り一面の炎を見ながら、俺は気がついた。


 あ、コレ酸欠だわ。


 レベルアップとスキルの告知を頭に響かせながら、俺の視界と意識は闇に沈んだのであった。

いまのところ『おっさん』と『爺さん』しか出てこないw

ヒロイン?なんですかそれ?

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