エピローグ
本日二話目の投稿です。お気をつけください。
「これを」
気軽に渡された袋を開いて、そこにあった瓶を覗き見てヤヨイ達三人は絶句した。
神薬。
どんな傷も感知してしまう、神の力を秘めた薬だ。
「また遊びに来てくださいね」
彼女はラークルの住人達を病から救った時に言っていた。
神薬など、本来存在するべきものではないのだと。神秘にばかり頼ってはならないと。
だが、これは彼女の願いなのだろう。
また無事な姿を見せに来いと、そう言っているのだ。
「ああ、また必ず」
「お世話になりました」
「…………」
ヤヨイ達一行は、快く送り出してくれたヒュギエイアにそれぞれの反応で返す。
ラークルの出入口までついてこないのは、別れが惜しいからか、彼女なりの理由があるからなのか。
どちらにしろ、来た時と違って、町から出る分には何の問題もないだろう。
背を向け歩き出すが、自分たちの姿が見えなくなるまで、ヤヨイは彼女の気配を感じていた。
門番に通され、山道に入ったところで、シグレはヤヨイに尋ねた。
「王都に向かうの前まではどこか渋ってたけど、何かあった?」
ヤヨイは今まで、王都に向かうのは危ないと言い続けていた。そんな彼が突然、王都へ行こう今すぐ行こうと二人を急かし始めたのだ。何かあるとしか考えられない。
「ちょっとエイアから情報をもらってな」
「父親のことか」
ああ、とヤヨイは肯定する。
エイアから教えてもらったと、なんの気兼ねもなく言うヤヨイの様子に、シグレは彼らが仲直りしたのだなと実感し、こっそり微笑む。
「お前には助けられた。俺も全力を尽くそう」
「借りを返す、なんて言うなよ。仲間なら当たり前なんだから」
この二人の仲も前と比べるとトゲトゲしさが消えたが、仲間だの力を貸すだの恥ずかしい台詞を言う回数も圧倒的に増えた。
(そろそろ羞恥心が戻るだろうな)
だから、今の内に噛み締めておこう。
そんなことを思っているうちに、どうやら距離が離れていたらしい。
「どうした、シグレ?」
「急ごう、日が暮れてしまう」
いつもと変わった様子に、疑問符を浮かべる家族と。
前よりも距離感が近く感じられる、たった一人の騎士。
「今行くよ」
そんな二人のもとへ走り出す彼女は、やっぱり微笑んでいた。
「はあ」
行っちゃったか。
そう心の中でだけ呟いて、彼女はそっと背を向けた。
彼らとの出会いが、永い時を生きる神にとって、丁度いい暇潰しというか、刺激になったのは事実だ。
彼らと過ごす時間は悪くなかった。むしろ良かったと思える。
数々の因縁など関係なく、本当にまた遊びに来てほしいものだ。そう思って、薬品の調合でもしようと歩き出した時だった。
『エイア』
頭に響いてきたその声に、バッと振り返る。
その声は、はるか昔から、突然聞くことのなくなった、懐かしいものだからだ。
しかし、彼女の姿は、どこにもない
「……サリア?」
彼女に会ったとして、どう接するべきか、まだ迷っている。
だが、会いたくないはずがなかった。
たとえ真実がどんなものであったとしても、彼女の口から伝えて欲しいと、そう願うだろう。
「気のせい──」
そして、また家の方へと向き直って。
その姿を見た。
「!?」
白と黒の特徴的な髪型をした親友の姿が、そこにはあった。昔から変わらない法衣に、宝石が輝く髪飾り。
ヒュギエイアが口をパクパクとさせ、何も言うことが出来ないままでいると。
『まだ』
彼女は、言葉を紡ぎ出す。
『戦争は、終わっていない』
その台詞を聞いて、どういうことか問い詰めようと手を伸ばして。
『信じて』
触れようとした時、その姿は、光の粒子となって掻き消える。
空を切った指先を胸に押し当て、健康を司る女神は、ただ祈る。
彼らが辿り着く未来に、自分が与えた力が役に立つことを。
そして、それが何なのかわからないが、親友の想いが報われることを。
シグレとゼノの誓いと、ヤヨイとヒュギエイアの約束をエピローグでまとめようとして気づきました。
一話でまとめられるかーい!w
というわけで2話投稿です。
しばらく休みをいただきますが、最低でも八月中、早ければ再来週には再開します。
そしてここで緊急発表。
スピンオフ制作決定!
まあ、私が書くんですけど。まだプロットの段階ですけど。
それもありの休暇(書き溜め)なので、どうかご理解ください!
どこかの女神の戦争とか。どこかの隣国魔法都市の黒髪少年とか。まあ、2作品ほど。
読んでいただけると嬉しいです!
長々となりましたが。
どんな事でもいいので感想等いただけると励みになります!ブックマークや評価いただけるとさらに嬉しい!(何度もすみません)
では、また次回、お楽しみに!




