小話集 その1
今回は主人公ちゃんが召喚されてすぐのことについて各国の反応を書かせていただきました。
短めです。
小話集
1.ノスタリカ帝国(優人視点)
その日は半日授業だったし部活もなかったから愛梨と遼と一緒に月を探していた。僕達4人は小さい頃からの幼なじみでいつも一緒にいたんだ。なのに何時からか月が僕達から離れていくようになった…。「なんで?」と月に聞いても誤魔化すだけでハッキリと答えてくれない。
月は昔から体が弱くて無口だったので周りの子から浮いていた。それでも月は気にしていないのか、平気そうだった。だからなのか、いつも月のことを目で追っていた。いつの間にか月のことを好きになっていたんだ。
ちゃんと月を探し出して昔のように一緒に帰っていると、僕達の足元が突然光出した。後ろを見ると月が逃げようとしていたが、何があっても僕達は何時も一緒だ。逃げようとした月の袖を掴んで「逃がさないよ」と言った。他の人も同じことをしていた。「やっぱり幼なじみなんだなぁ」なんて光が強くなる中思った。
気がつくと、知らない場所だった。右には愛梨、左には遼がいた。
「愛梨!遼!」
「んん?優人?ここはどこ!?」
「ん…?優人か?ここは…!?」
良かった2人は無事だ。
……あれ?月は? 月がいない!確か一緒に光に呑み込まれたはずなのに。
「おぉ!勇者様よくぞおいでくださいました。」
月を探しているとそんな声がかけられた。声の聞こえた方を見ると豪華な服を着た30代ぐらいに見える人がたっていた。周りには騎士服っぽいのを着た剣を持っている人と、黒いローブを着た怪しい人達がいた。
警戒して愛梨と遼と集まると、また、声がかけられた。
「勇者様!どうかこの国を救ってください!」
よく見ると話しているのは豪華な服を着た人の隣に立っている人だった。
「勇者様?どういうことですか?月は!?」
「ここはどこ!?家に返して!」
「あなた達は?これは誘拐ですよ?」
僕から始まり皆で抗議する。なんなんだ。
「黙れ!王の御前であるぞ!」
「いや、良い。説明してやれ。」
やっぱり豪華な服を着た人は王様らしい。
「…わかりました。まず、貴方達はこの世界に召喚されました。貴方達には神木を奪い返してもらいたい。奪い返してくれたのなら元の世界に返すことも可能だ。それと…月?とは何のことでしょうか?」
愕然とした。僕達の世界じゃないなんて…。それに月のことを知らないという事は外れたのか?愛梨達も驚きで声が出ない。ここは僕がなんとかしなくちゃ!
「月は僕達の幼なじみだ!黒髪黒目で髪の長い僕達と同じくらいの少女だ!」
月がいない。それだけできがおかしくなりそうだ。いつも僕達が困ったらこっそり助けてくれた月…。
「そのような者は見ていません。」
「そんな…!」
月がいないなんて!確かに袖を掴んでいたのに。どこに行ったんだ…。
「もしかしたら、神威の森にいるのかも知れませんな。あそこには凶暴な獣が住んでいますからな。」
「神威の森?」
「はい。神威の森とは神木のある森で、凶暴な獣が神木を我々から奪ったのです。」
そうか…もしかしたら神威の森に月がいるのか。そういえば神木を奪い返して欲しいと言っていた。
「神木を奪い返すって…?」
僕が考えていたことを愛梨が聞いてくれた。
「神木は我々のモノです。だからこそ奪い返さなければならないのです。貴方達にはそれを手伝ってもらいたいのです。大丈夫。召喚した勇者達は特別な力を持つと言われていますから。」
危険だが、神木を奪い返せれば元の世界に帰れるし月も見つかるかもしれない…。特別な力かぁ。
「愛梨、遼どうする?」
「私は…家に帰りたい!だから手伝う。」
「俺も愛梨と同じだ。危険だが、力をつければいい。」
よし、決まった!僕達は神木を奪い返す手伝いをして月を取り戻す!
「わかりました。手伝います。」
そうして僕達はこの世界で勇者として生きていくことを決めた。僕の目標は、月を見つけて皆で元の世界に帰ることだ。
2.ノスタリカ帝国(王様視点)
やっと!やっとこの時が来た!あの忌々しい聖獣から神木を奪えば我は不老不死になることが出来る!
馬鹿な勇者め。神木を奪っても元の世界に返すものか!その後もこき使ってやる。そして、エルフと獣人のヤツらを奴隷にしてやる。今まで散々邪魔して見下しおって!
頭を下げさせてやる!穢らわしい種族め、覚えておけよ。
3.エルフの国(???)
人族の王がとうとう禁忌に触れてしまった。あやつはもう止まらないだろう…。
しかし!神木があやつの手に渡ってしまえばこの世界は終わってしまう!何か手を打たなければ…。獣人の国にも協力を仰いでおくか。
なんと愚かなことか…人間とは。
この落とし前お主の命だけでは足りぬぞ!
4.獣人の国(???)
たった今、間者から人族の国が勇者とやらの召喚に成功したと報告が来た。馬鹿かあいつは!比較的魔物が少ない今、勇者は必要ないというのに。それ以前に召喚の儀は禁忌になっていたはずだ。……とうとう神威の森に攻め込む気か。神木には不老不死にするという言い伝えはあるが、あれは虚偽だと100年ほどまえに世界に広まったはずだ。愚か者め!神木を奪うなど聖獣の怒りを買うだけだ…。
きっとエルフの国から協力要請が来るだろう。我々も覚悟を決めねばならぬな。
次回は人物紹介をしたいと思います。
能力についても書いておくので聞きたいことがあったらコメ欄にてお願いします。