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1.さよなら私

旧1話の前半部分となります

濡れて色の濃くなったコンクリートにできた水溜りに写り込む青々しい空と白いもこもこのシルエットをした雲とのコントラストと、この時期特有の湿ぼった重く絡みつくような湿気ただよう空気の中



私はとても後悔をしている











遡ることたったの十数分前


今日は朝から雨が降っていて、まるでこのことを予想していたかのように湿った重い空気だった

私は家から自転車で10分の駅から5駅先の高校に通う今をときめくピッカピカの高校1年生の柏木(かしわぎ)(るな)

元々体が弱くて激しい運動は禁止されてきたくせに何故家から自転車で10分弱の近くの高校にしなかったのか。答えは遠くに行きたかったからだ


理由(わけ)を話そう


私には幼馴染がいる。3人も。この少子高齢化だと嘆いている日本でちょうど同じ年代で、驚くことに全員が徒歩1分圏内に住んでいるという裏で手引きでもしたのかというほどの幼馴染設定だ

いや別に、住宅地に住んでいるがthe都会というほど人口が多い訳では無いのだ。あえて言うなら十数年前ほどに開発された割と最近に出来た居住区域ということだけ。田舎ほど不便ではないく、交通機関は地下鉄はないけどしっかりしているし、どんなに隅っこでも少なくとも1時間に1本はバスも電車も来る。ただし都会ではないのでオタク的には限定もののイベントが一番近いところで電車で1時間の場所しかないということが残念で仕方ない…

話がズレた

その幼馴染たちはテンプレを素で行く美男美女。1人はお向かいさんの天月(あまつき)優人(ゆうと)。日本とイギリスのハーフで金髪碧眼のどイケメン、頭脳はそこそこだが運動神経抜群のスポーツ万能人間、性格も人当たりが良く学校の王子と呼ばれている。正義感も強く主人公体質で(まさ)に正義のヒーロー(笑)

2人目は1件挟んで右隣の花田(はなだ)愛梨(あいり)。ふわふわセミロングのチョコレートカラーの髪に丸くて大きいチョコレート色のタレ目、優人とは真逆の運動神経皆無だがとにかく可愛く、誰にでも優しい学校の女神と呼ばれている。外を歩けば10人中100人が振り返るほどの可愛いさで天然ときたら正にリアル乙女ゲー主人公だ。

3人目は4件右のお向かいさんの矢代(やしろ)(りょう)。サラッサラの黒髪に涼しげ切れ長の黒目、成績優秀、頭脳明晰、品行方正、眉目秀麗、博学多才を地で行くインテリ美形、呼び名は学校の偉丈夫。スパスパどころか、ざっくりグサッと理論を振りかざしものを言う様は好ましいとは思われないが、たまに褒めてくれるのが良いだとか微笑む様が美しいだとかでツンデレキャラとして教師にさえ人気がある

と、まぁ見事にテンプレを詰め込んだかのような隙のない3人組。因みに学生生活ではずっと同じクラスで一緒に行動。傍から見れば三角関係まっしぐらだ

そんな3人の唯一の汚点、私の悩みの種どころか人生を狂わす歯車……それは彼らと私が幼馴染で4人セットにされてきたということ


ここで私の説明をさせてもらうと、黒髪ロングストレートしか取り柄のないthe日本人で、目は普通に黒いし彫りが深いだとか顔が整っているという訳では無いし、普通顔で可愛い訳では無い。平たい顔族だ。かと言って学年トップをとるような頭脳もなければ激しい運動は禁止で、部活に入って活躍するスポーツマンでも無い


とまぁ、なんの取り柄もなく平凡以下を突っ走る私にはテンプレチートハイスペックな3人組と幼馴染というのはキツイもので。周囲も何故お前が一緒にいるんだとばかりに睨みつけてくるし、挙句には陰湿なイジめの発生に繋がってくる。幼馴染たちは悪意で一緒にいる訳ではなく善意だし…え、善意だよね?仲良くしてくれるのは嬉しいが周りを見てほしい。切実に。明らかに浮いている私にはその好意が重い。いや重いどころか私を破滅へと導く導線のようなものなので即刻無いことにして欲しい


ともかくハイスペックなテンプレ幼馴染たちから離れるべく、わざわざ身体に負担のかかる遠くの高校へ進学したのに何故いるお前ら。近くの私立高校行くって言ってたじゃん!!!なんていう私の心の嘆きは虚しくも言葉にされることは無かった



そんなこんなで前置きは終わりだ



高校生なんだからいい加減1人で学校にいくし、幼馴染と学校でも四六時中一緒にいるのはどうかと思う。いや他の皆さんを否定する訳ではなく。勘弁して欲しいのだ。一緒にいるだけで睨まれるわ会話をすれば殺気が突き刺さる。入学してから今までのたった数ヶ月の間に彼らを狙う見知らぬ生徒にイチャモンをつけられ呼び出されること十数回、教科書が隠される、殴られるの物理的なイジめが数回…両手を挙げて降伏ポーズしかできまい。私の平穏高校デビューは何処にいった




人生何度目になるのかも分からない回想を終え、前を見ると楽しそうに話し込む3人組。不本意ながら16年目になる幼馴染たちとの付き合いは年々薄くなるどころか濃くなる一方であり全くもって不本意である(大事なことなので2回言った)

同じ高校になってしまったのは仕方がない、ならば校内では極力関わらないようにしよう

そう宣言した入学式は確かほんの2ヶ月前だろうか。登校の電車は幼馴染が朝練に行った後、且つ朝練がなくても被らない時間帯のものに乗る。校内では1箇所にとどまらず弁当を食べる場所も不規則にして人目の少ないところを移動する。帰りは終礼が終わった瞬間に逃げるように帰る。幼馴染たちは部活に入っているし部活がなくても捕まらないように最短ルートで帰るという徹底ぶり。お陰様で私の青春高校ライフは、平穏という名のぼっちに向かって一直線である

まぁ…そんな過酷な通学高校生活により私の足腰は丈夫になり、かかりつけの医者の先生に褒められた。永遠の体育見学者から準備運動のスペシャリストまで上がった


理由が嬉しくはないが



3人組でわかると思うが私は捕獲された。幼馴染たちに。それはもう見事な連携プレーで

いつも通り購買ダッシュならぬ終礼ダッシュ(ただし早歩き)のスタートを華麗に決めた私の視界に入ったのは3人組。まだ気づいていない。この時の私は失念していたのだ。今日はなんだかよく分からない職員会議だとかで授業が早く終わり、全部活がないということを。見つからぬようにローファーに履き替えスクバをしょいなおす。急げ、駅まで数分、電車の発車まで10分ほどだ。間に合う

そう思っていたのだが…いや電車には乗れたガタンゴトンと揺られつつ駅に止まる度に減っていく乗客を横目でながめながらスマホをいじり、ふと自分の降りる駅のアナウンスが入ったところで顔を上げると目の前にいた。バチッと目が合った。それはそれは音がしたかと思うほどガッツリしっかりと


やべぇ


声には出なかったが空いた口は塞がらず、そのまま私は幼馴染たちに捕獲された。すっかり電車に乗り込み今日も勝ったぞと思っていたが家の方向が全く一緒なのを忘れていた。まさか同じ電車に乗っていたとは。いつもならファン(笑)たちに囲まれて軽く10分は身動きが取れないはずなのに。畜生ここまでか

そんなことを頭の中で考えながら幼馴染たちに連れられて電車を降りる。いや待て、幼馴染たちよわざわざ自転車を押してまで共に帰らなくても良いのだ。先に帰ってくれ、風のようにビュンビュンと。生憎朝は雨が降っていたので私はママンの車で送ってもらった。帰りはって?ママンはお仕事中だ。それに体力をつけるためにもウォーキングはいい事だと医者の先生が言っていたぞ。うん…




と、ここまでが回想



自転車を押しながら前を歩き、今日はどんな授業があって先生がチョークを折っただとか、球技大会は何に出るだとか、隣のクラスの喧騒がうるさいだとか…なんだの話している


「…昨日3年の先輩に告白されたんだ」


「え!もしかして弓道部のエースの!?」


「あぁ」


「あの先輩優くんのこと狙ってたもんね」


「また断ったのか?」


「うん。申し訳ないけど好きな人がいるからって断った」


チラッ



チラッ☆じゃねーよ。心の中で毒づく

ティーン特有の恋愛話。意外かもしれないが遼もこういった手の話はする。割とノリノリだ

しかしまぁ…生憎私は鈍感系天然主人公ではないためここまでされたら気づく。どうやら優人は私のことが好きらしい

どこをどうやって脳内処理がそんな方向へ突っ走ってしまったのかは不明だが、恐らく中3の秋頃からこの状態は続いている。そして初恋であろう優人のサポートをするのは当たり前のように幼馴染の2人。こういうのって愛梨を取り合って2人がライバル認定し競い合う的なのではないの?乙女ゲー的な

愛梨も愛梨で意外にも優人と付き合いたいとは思っておらずサポートにまわっている。いや、そこは止めろよ。全力で。乙女ゲー主人公失格だぞ


人に好かれるのはいい事だし嬉しいとは思う。人並みに。しかし優人お前は別だ

好意を持ってくれるのは感謝すべきなのかもしれないが、正直ファン(笑)が怖すぎる。ついでに言えば私のストライクゾーンからも外れている。私のタイプは優男系王道主人公ではなく、ガタイが良く健康的で雄感のあるサブキャラだ

決して主人公では無い。一緒に行動すると夜道で後ろから刺されるリスクがあるやつよりも、背景に溶け込むレベルのモブの方が魅力的なのだ。私にとっては…だが


そんなチラッ☆攻撃を受けながらボーッと歩いていると視界に違和感を覚えた


ん?んん?光ってるぞ?


目の前を歩く3人の足元が輝き始めたのだ。辺りは閑静な住宅街。まだ3人は気づいてないし辺りに人もいない


え?なに?ランウェイ歩きすぎて足元光っても気づかないタイプ?


ぼんやりとした光は次第に丸く模様をかたどり始めた。丸い円が3重になり間になにかミミズがのたくりひしめいているような模様が沢山……って魔法陣?アニメやマンガ出よく見る魔法陣の形へと変化をとげた。もしかして流行りの異世界召喚?設定美味しいよね。うわぁーこの3人なら有り得る。私をちゃっかり魔法陣から外しているあたり召喚している人は素晴らしい。凡人には用がないってか


だんだん光が強くなり3人も気付く


「え!?何この光?」


「もしかして危ないものじゃ…!」


「早く離れないと!」


そういった途端眩しいほどの光により視界が白くなった。つい離れようとした足が止まる

あ、勿論うかうかと一緒に召喚されるわけないでしょ。幼馴染3人組から開放されるんだから。私は新しく穏やかな人生を始めてやるわ!

そんなふうに考えていたのに

足が止まった途端腕を掴まれた。不意に目を開ける。優人の大きな手が細い私の腕を掴んでいた。ガッシリと跡がつくのではないかと思うほど


「離して!」


驚き叫ぶ

足元が不安定な感覚がしてきた。まだ走れば間に合う。早く、早く抜け出さなくては。テンプレ勇者召喚に凡人が巻き込まれるとかバッドエンドしか見えない


「どこへ行くつもり?月も一緒だよ」


まるで悪魔の宣告のように優人は言った


意訳:逃すものか


他の2人も止める気は無いらしい。足元が揺れて霞んでいる。どうやら動けないらしく逃げるのも諦めている様だ私の足はまだ動く!そう思った途端視界がスパークした。これしか言いようがないほどの光に包まれ体の感覚が絶たれた


消えゆく意識の中で思う





あ、私巻き込まれた

これ以降は書き溜めてないのでのんびり投稿になります

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