セカンド・リアル 9
一ヶ月前に攻略サイトで見つけた職業、マジシャンのスキルに興味深いものがあった。
幻想
使用方法がいくつかあり、その一つに敵の攻撃目標を強制変更させる方法があった。
セクロをタスクは強く睨む。
……恐らくこいつは俺をはめたんだ。
「やろぉ」
剣を強く握り、改めて死神を睨む。
ゆっくり、そして確実に近づいてくる死神を凝視しながら、視界上部にある体力ゲージを見る。
残り一割を残した体力ゲージは真っ赤に染まっている。一撃もらったら即座にゲームオーバーだろう。
死神が鎌を大きく振り被る。通常攻撃に予兆だ。
先程の攻撃で改めて感じたが、死神の攻撃は一撃一撃がかなり重い。つまり、死神の攻撃を同等か、それ以上で防がなければ、大きくノックバックをもらい、隙を突かれて死ぬ確率が高くなる。しかし、タスクにそんな攻撃力を持っているわけでは無い。で、あるならば…
……スキルを使うまで!
「パワーブレード!」
タスクの持つ剣が赤色に輝く。
パワーブレード
自身のステータスを三倍にあげるスキル。効果時間は十秒だ。
死神が鎌を振り下ろす。それに合わせてタスクも剣を振る。同等の剣と鎌が激突し、死神とタスクの武器は大きく後ろに弾かれる。
「はぁあああああ」
気合いの声と共に剣を振るい、降り下ろさせる鎌を弾き続ける。
スキル残り時間が二秒を切った。残り少ない時間をタスクは一つのスキルにかけた。
「フラッシュスタブ!」
光の速度で突きを繰り出し、脇腹に剣を突き刺す。
死神の体力ゲージが二割削れる。残り体力は七割。
剣を抜いて即座に死神から離れる。
ここで改めて気づいた。死神の体力ゲージの右側に、状態異常のマークが付いている。
ここで、記憶がフラッシュした。攻略サイトに載っていた死神の特徴。体力ゲージが半分を切ると、全ての状態異常が無効化、回復する。
あのマークが攻撃対象強制指定のマークであるのならば、あと二割体力ゲージを削る事によってこの状況を打開できるという訳だ。
「あと二割…」
セカンド・リアルのプレイヤーのスキルの持てる数は四つまでだ。タスクの持つスキルはフラッシュスタブ、パワーブレード、ソードフライともう一つ。
タスクはそのもう一つのスキルにかけるつもりだ。
「おぉおおおおおお」
タスクは壁に全力ダッシュし、壁際でジャンプする。そのまま壁面を垂直に走る。靴の装備アイテム、ライトシューズの特殊効果だ。
「パワーブレード」
静かにスキル名を呟き、剣を赤く染める。そのまま壁を蹴り、垂直落下を開始する。そのままもう一つのスキル名を叫ぶ。
「ストライクドライブ!」




