セカンド・リアル 8
巨大な扉が重苦しい音を立てて開き、滑り込むようにパーティメンバーはボス部屋に入った。
ボス部屋の中は大きな円柱型になっており、壁には松明が設置されている。
ガシャン!
扉が自動で閉まる。ここから出る方法はボスを倒すか死ぬかのどちらかになった。
ふいに、目の前に闇色の炎が燃え上がる。その炎は見る見るうちに姿を変えて、死神へと変化を遂げる。
濃い紫色をしたボロボロのローブを着て、大きな鎌を握っている。顔はドクロに似ている。もちろん宙に浮いている。死神の頭の上には体力ゲージのバーと、名前が表示された。
「みんな、武器を取れ」
セクロの声に反応し、パーティ全員が武器を構える。タスクも背中に背負った剣を引き抜き、構える。
死神が猛スピードで接近する。
「戦闘開始!」
セクロの掛け声と同時に、全員が一気に前に出る。もちろんタスクもだ。
死神が鎌を大きく振る。それをパーティメンバーのハンマー使いが防ぐ。死神が一瞬動きを止める。
その一瞬をパーティメンバーは見逃さなかった。
全員が攻撃を開始し、体力ゲージを一割削る。
──流石ハイランカー。
タスクはそんな事を思いながら、攻撃を開始する。
その直後、死神の真下に魔法陣が出現する。
「魔法?」
そう呟いたつかの間。死神が一回転して鎌をなぎ払った。
ギリギリのところでガードする。
すぐにバックステップをとって距離をとる。
その瞬間、死神の目とタスクの目が合った気がした。
ゾッ!
背筋が凍るような感覚に襲われる。その刹那、死神の大鎌がタスク目掛けて斜めに振り下ろされる。
危ういところで攻撃を剣で防ぐが、反動で体が後方へ吹き飛ぶ。そのまま勢い余って背中を壁に思いきりぶつける。
「がはっ!」
声が漏れる。背中に尋常じゃないほどの痛覚を感じる。視界上の体力ゲージが一割削れる。
よろよろと立ち上がり、剣を構える。しかし、その頃には死神が鎌を大きく振り下ろしていた。
ザシュッ!
タスクの腹部に斜めの直線が入る。
体力ゲージが八割削れ体力ゲージのバーが赤色に染まる。
強烈な痛みに耐え、ぼやけた視界を死神に移す。
鎌を振りかぶり、今にもタスクを殺そうとしている。
──クソッ、ヒーラーはいないのか。
脳裏に浮かんだ思考を、タスクは即座に否定した。なぜなら、パーティーの中に回復使いがいないからだ。唯一魔法が使えるセクロの職業はマジシャンで、使える魔法は幻惑などが多い…
──幻惑…まさか!
タスクは視線をセクロへ向ける。
明らかにおかしかった。他のプレイヤーと違い、セクロはシステム上の動きに無い動きをしていた。まるで、生きているみたいに。
──これは、恐らく。
頭上に大鎌が振り下ろされる。
「フラッシュスタブ!」
タスクが霞む速度で移動し、攻撃をギリギリ避ける。
スキルの発動条件は、スキル名を声に出す事によって発動できる。
死神がゆっくりとタスクのほうを向く。
タスクは剣を強く握り、決意を改めた。