セカンド・リアル 7
「ねむてー」
情報屋からアストラインに帰る途中、魔物をまた三十体近く倒したので、もう夜の8時だ。
タスクは仮想の睡魔を受けながら、ふらふらと宿屋に入った。
通常、宿屋は体力回復に使用されるものだが、タスクはここで、眠気を覚ますつもりだ。
カウンターで宿屋のNPCに金を払い、使用出来る部屋へと足を運んだ。
部屋の中は八畳程で、奥にベッド、隣に机が置いてあり、窓からは月明かりが差し込んでいた。
タスクはふらふらとベッドに倒れ込む。そこから睡魔に抗わなかった。
「ふわぁ」
大あくびと共にタスクは目を覚ます。
視界に映る時計には八時十二分と示してある。
ゆっくりと立ち上がって大きく伸びをする。
宿屋を出て広場に出たタスクは周りを確認する。ダグモ鉱山B6フロアのボス部屋攻略の臨時パーティを探しているのだ。
臨時パーティ
主にボス部屋攻略をしようとしているプレイヤーが集まるパーティだ。人数は最大十人。パーティ同士だと、プレイヤーの会話はチャットではなく、ゲーム機に搭載されたマイクで会話が可能である。
確か、ダグモ鉱山B6のボスの名前は死神だったはず。
タスクは周囲を確認し、死神討伐パーティを探す。
すると、目の前に数人のプレイヤーが集まっていた。プレイヤーの頭上には[死神討伐臨時パーティ]と書いてある。
「あったあった」
タスクはプレイヤーの集団に近づく。
パーティに参加しますか? YES NO
画面に映し出された文章を見て、迷わずYESを押す。
視界の文章が溶けて消え、代わりに[パーティに参加しました]という文字が、チャットログに刻まれる。
視界左下のチャットログにパーティの挨拶文が表示され、視界右上にパーティプレイヤーの体力ゲージが縦に並ぶ。
すると、魔法使いと思われるメガネをかけた男性が口を開く。
「それじゃ、これからダグモ鉱山に向かうから。僕はセクロ。よろしく」
パーティ全員が頷く。
──ゲームの中でも声が聞こえるのか。
パーティプレイヤーが歩き出すと共に、タスクも歩き出した。
「着いたぁ」
パーティの一人が声をあげる。
ここは、ダグモ鉱山のフロアB6のボス部屋の大きな扉の目の前だ。
アストラインからここまで来るのに一時間近くかかった。
「みんな、アイテムを使って体力を回復するんだ」
パーティプレイヤーは回復薬を一斉に飲み始めた。
タスクは人差し指でトントンと空気を叩く。
視界にメニュー画面が現れる。
メニュー画面から道具と書かれた文字に触れる。
道具欄が現れ、超回復薬に触れる。
メニュー画面の外側で光輝き、赤色の液体が入った容器が左手に落ちる。
メニュー画面を消し、回復薬を飲む。体力ゲージがゆっくりと回復し始める。どうやら飲む量によって回復する量が違うようだ。
回復薬を飲み干すと同時に、セクロが全体に向けて話す。
「飲み終えたか。よし、これからボスに挑戦する。扉を開けるぞ」
…ん?
なにか不思議な違和感を感じたタスクは首を大きく振り、ボス戦に意識を集中させる。
「いくぞ!」
セクロの声と共に、大きな扉を開けた。