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第二十二話 「戦闘」

「ライトニングさん!!」


 クレアは、辛うじて彼らの攻撃をかわしたライトニングに悲鳴にも似た声をあげた。

 彼女の目から見ても、目の前の黒マントの集団は明らかにレベルが違いすぎる。

 特務部隊の彼でさえ、かわすので精一杯なのだ。それが何人も目の前に立ちはだかっている。


「クレア、君だけでもなんとか逃げろ。そして隊長たちに魔族出現の報を伝えるんだ」


 レイピアを構えるライトニングの目は、いつもの優しげな彼の目ではなかった。死を意識した、決死の表情。そんな彼の姿に、クレアはガクガクと心の底から怯えを感じた。


 出会って間もない彼ではあったが、まるで古くからの付き合いのように感じていた。ワッツとの接点もあったからであろう。親兄弟のいないクレアにとっては、心の許せる相手であると思い始めていた矢先であった。


「ダメです、ライトニングさん!! 一緒に逃げましょう!!」


 ダガーを構えながら、一生懸命に打開策を講じる。

 しかし、ローランやシャナならいざ知らず、今の自分では足手まといにしかなりはしない。


 瞬間、クレアのもとに魔族の一人が襲い掛かった。


「ひっ」


 慌ててダガーを突き出して、迫りくる爪を防いだ。

 ギチッという硬い音とともに、激しい火花が飛び散る。


 その動きに、ピクリと魔族は表情をこわばらせた。

 クレアに攻撃を仕掛けた彼にとっては、これで仕留めたはずであった。

 しかし、その寸前で防がれている。


 信じられぬと思いながらも、魔族はもう片方の爪でクレアの頭を狙った。

 瞬時に彼女はこれにも反応し、ダガーを顔の前に上げて攻撃を防ぐ。

 激しい火花が、薄暗い洞窟内を明るく照らした。


「ぬう」


 魔族は、これでもかと言わんばかりに爪を振るった。

 その都度、クレアはダガーでその攻撃を懸命に反らしている。


 その光景に、その場にいた誰よりもライトニングが一番驚愕していた。


 自分ではかわすだけで精一杯だった魔族の攻撃を、クレアはダガー一本で防いでいる。

 いにしえより生きるこの異形の者を相手に何度も攻撃を防ぐことなど、偶然ではありえない。


(彼女には、やはり秘められた力がある)


 それは、この黒マントの集団に追い詰められていたライトニングに生じたわずかな希望であった。

 なんとしても、彼女だけは生かして帰さねば。

 瞬間、クレアのミスリル製のダガーが音を立てて砕け散った。

 激しい攻撃に、ついに耐えられなくなったのだ。


「うおおおッ!!」


 それを見た直後、ライトニングは叫ぶと同時にクレアに襲い掛かる魔族にレイピアを一閃させた。

 シュビッと緑色の液体が勢いよく飛び散る。

 彼の剣先は魔族の身体を大きく切り裂いていた。


「き、貴様……!!」


 突如斬りつけられた魔族は、怒りをあらわにしながら倒れ伏した。

 ピクピクと痙攣し、事切れる。

 おそらく人間で魔族を殺したのは彼が初めてであろう。

 そのことが、最初にライトニングに襲い掛かった3人にも火をつけた。


「こしゃくな真似をしおって!!」


 一斉にこのレイピアを構える華奢な剣士目がけて襲い掛かる。

 それは、かわす余裕もないほど、熾烈な一撃であった。


「ぐ……!!」


 慌てて避けようとするも、彼らの動きは先の攻撃よりも素早かった。

 彼らの鋭利な爪がライトニングの右腕を斬り落とし、脇腹をえぐり、肩を貫く。

 真っ赤な鮮血を上げながら、彼はどうっと倒れた。


「ライトニングさんッ!!!!」


 クレアの絶叫が、洞窟内にこだまする。

 斬り落とされた右腕に握られたレイピアが、からからとクレアの目の前に落ちた。


「死ね」


 倒れ伏すライトニングの頭上に立ち、腕を振り上げる魔族。

 クレアは瞬時に地面に落ちたレイピアを拾うと、跳ねた。

 それは跳ねたという表現が適するほど俊敏であった。

 彼女の身体は横一直線に飛んでいき、腕を振り上げている魔族に刃を振るった。


「………」


 つかの間の静寂。

 それは数秒ともなかったであろう。

 ポタポタと緑色の液体が滴り落ちる中、腕を振り上げていた魔族の首がその腕ごと転げ落ちていった。


「な、なに……?」


 何が起きたのか、といった表情を見せる残りの2人に、クレアはレイピアを横に一閃させた。

 あまりの速さに、彼らは声を上げる間もなく血しぶきをあげながら崩れ落ちていった。


「………!?」


 残りの黒マントの集団が、その光景に目を見開く。

 何が起きたのか。

 追い詰めていたはずの人間だったが、逆に4人もの仲間が返り討ちにあっている。



 気が付けばクレアとライトニングの姿はなく、おびただしい血痕を残しながらどこかへと消えていた。


「ギ、ギンガム様……」


 問いかけようとする部下の言葉を遮って、彼は不敵な笑みを浮かべながら言った。


「少しは骨のあるやつがいたようだな」


 それは面白い獲物を見つけたと言わんばかりの笑みだった。

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