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夢に胡蝶となる
ある晩秋の穏やかな日のことでございます。
荘周は肘掛け椅子に身を預け、うつらうつらとしておりました。
夢現に荘周は、庭先をひらりひらりと舞う深紅の胡蝶になっておりました。
気分はとても晴れやかで、荘周は胡蝶である自分をのびのびと楽しんでおりました。
胡蝶となった荘周は、自分が人間であった事は全く分からなく成っておりました。
やがて目が覚めて我にかえると、自分は胡蝶などではなく荘周という人間でありました。
自分は胡蝶になった夢を見たのでしょうか、それとも胡蝶である自分が荘周の夢を見ているのでしょうか。
胡蝶と荘周、どちらが夢でどちらが現か、区別が付くでしょうか。
もしかしましたら、今の自分も何者かの見ている "一夜の夢" に過ぎぬのかもしれません。