還り道
今日もまた一日が終わる。
長いと思えば短くて。
短いと思えば長い。
流れる時間は同じなのに。
一日の価値がこんなにも違う。
この道を歩いていけば、あとは夢から覚めるだけ。
今日の私は、一生を終える。
この道は還り道だ。
明日へ還るための。
死刑台に向かう死刑囚は、こんな気持ちなのだろうか。
それとも、故郷を離れる幼い少年少女の気持ちだろうか。
誰も私を慰めてはくれない。
家族は、決まりきったようにおはようで始まり、お休みで終わる。
その過程の中に私の死を悲しむ言葉も、哀れむ言葉も含まれてはいない。
友達は、笑顔でまた明日と口にする。
私には明日などこないのに。
誰もが私の死などは眼中にないのだ。
私の価値などは、その程度なのだ。
私が死んだ明日もつつがなく進む。
誰も涙を流さない。
私はいてもいなくても同じ。
どうせ明日の私が私をつなぐ。
そして明日の私も同じ気持ちで、この道を帰っていくのだ。
自分の存在の意味のなさを噛み締めて。
夕陽を眺めていると悲しくなる。
きっと、それは夕陽だけが私を慰めてくれるからだ。
いつからだろう。
こんなにも残酷な現実を知ってしまったのは。
誰も、何もかもが。
私の存在に無意味を突きつける。
心さえ、とっくに死に絶えて。
ただ一人で還るのみ。
夕陽が告げる。
さぁ、もうお還り。
ああ、わかってる。
やっと一日が終わり。
やっと私は救われる。
今日も私の一生が終わる。
ありがとうございました。