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異界渡りシリーズ

召喚誘拐事件簿

作者: 星宮雪那

異世界召喚誘拐事件に巻き込まれた件

「えーっと、魔法使いの方はこちらに並んでください。」

「ちょっと!アサシンは賢者列に割り込まないで。」

「剣士最後尾はこちらでーす。

武器と防具とアイテムは、順番にお渡ししてますから。

吠えないで、マジ怖い。」

「うはっ!勇者様すげえ普通の人ですね。

王子の隣に並ばないでね。

普通過ぎて哀愁漂うから。」

「聖女様はこちらにっ…て、なんでそんなビッチっぽいのが聖女なんだよ。

あっちのシーフちゃんのが聖女っぽいよ。」

「るせー!

神様が性女と間違えたんだろ。」

「あ、巫女様はこちらね。」


ここはとあるアマーイハナシ王国の王城。

先程からごった返している広間は、召喚したての異世界人で溢れかえっていた。

クラス旅行中のバスが、信号待ちしたタイミングで、クラスメイト毎纏めて召喚されたのだ。

正に召喚師大勝利。

魔王とか倒すのかと思わせて。

単なる戦闘の道具として国民では無く異世界人を利用しようと企んだのだ。

「他国にとんでもない精鋭が居て、悪逆非道を繰り返しています。

自国民の戦力だと勝てないし。このままでは滅んでしまいます。

伝説の異世界人様方の、お力をお借りしたいのです。」

口先で子供が腹黒に勝てるわけも無く。

あれよあれよと戦闘準備させられた。

基本的な戦闘訓練や、呪文の勉強。

豪華な食事に女子にはイケメン、男子には美少女の世話係をつけかなりチヤホヤした。

豚もおだてりゃなんとやら。

その気になった子供達は、メキメキ力量を上げた。

尚、反抗的な保護者である教師や、知恵の回る子供は、他の子供達には知らされず地下牢に幽閉されていた。

「日向先生…どうしよう。

あいつらこのままじゃ、本当に戦争の道具にされちまう。」

悔しそうに、少年は俯く。

「若林君、ともかく落ち着きましょう。

この奴隷の様な能力封じの首輪と、堅い牢屋がなんとなかれば…。」

まだ若く美しい新任女教師の日向先生は、中学生である生徒達の今後を憂いながらも。

目の前の若林伸と言う男子をながめた。

導く側だと言うのに、彼女が不安な気持ちを誤魔化せたのは。

彼が同じ牢屋に、二人閉じ込められたからだろう。

孤独な状態ならば、多分不安から彼らに折れるか、発狂していたかも知れない。

地下牢と言っても、犯罪者用の独房よりはマシな続き部屋で。

ベッドも風呂もトイレもあり。

食事は質素だが一日一食は出た。

「みぃ〜つけた。」

不意に声がした。

声の方を向くと、鉄格子の前に居た黒装束の男性は、まるで忍者のようだ。

見ればここの手前に居た見張りが寝ている。

「まーったく、召喚条約違反は困るよな。

しかもあんなに沢山の子供に、そうはおもわないかい?

日向美穂ちゃん?」

ビクッと声に反応する。

聞いた事のある声だったが、思い出せない。

「誰?」

男は質問に答えず。

二人の首輪を簡単に外した。

外すと爆発すると言われていたから、恐ろしくて触れなかったのに。

首輪が外れると、抜けて居た力が漲る気がした。

「さて、誰かな?ふふっ。

そんな事より、此方へ来て。

子供達と一緒に帰還したいだろ?

大好きな日本に。」

日向は気付かなかった。

しかし、隣の若林は覆面男が誰か気付いて声を上げかけたが。

声を封じられたように言葉が紡げなかった。

日向達が、子供達の集まる広間にたどり着くと事は終わって居た。

とても綺麗な巫女装束の女性が、この国の王様を何故か踏んづけている。

「はーい、異世界旅行は楽しかった?

そろそろ帰りましょうね。」

彼女が微笑むと、大きな魔法陣が多重に発生した。

それを眺めながら、みんなそのまま意識を失ってしまっていた。

気付けば高速道路のSA(サービスエリア)の駐車場のバスの中だった。

あれば夢?

子供達は、全く異世界の事は記憶に無く。

覚えているのは日向と若林だけだった。

暫くして、日向は転任した。

その先で出会うのは、必然のような偶然のような。

転任先に若林君も進学して来た。

多分、二人は呼び込まれたように感じる。

あの夢のような異世界召喚から、二人は精霊が見れる様になった。

「日向先生、プリント纏めておきました。」

笑顔の似合う美しい少女は、あの巫女装束の乙女に何処か似て居た。

「いつもご苦労様。

榛名さん、お礼よ。

他のみんなには内緒ね。」

小さなチョココーティングの珈琲豆の小袋を上げた。

嬉しそうに喜ぶと、榛名さんは教室に戻って行った。

「日向先生。

精霊は、可愛いですか?」

小さな声で、そう呟いて。

愕然しながら、けれど納得してしまう。

そんな何かが彼女に有った。

あれは真夏の白昼夢ではなかったのかも知れない。

さらに数年後、教師を辞めて別の仕事に着くのは別の話し。


利根市の異世界事案は複雑怪奇なのです。


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