関所を巡る戦い
関所の守備を任せられてから数日。ギーゼルヘアはフレギオンの命を忠実に守っていた。敵の守備隊長であるシュパイツァーは一応生かしておいたし、食事も一日に一度はやった。とにかく彼は言われた事を真面目にやったのだ。
それもというのも、フレギオンがギーゼルヘアを信用しているといって、神具防具と武器を置いていったというのがある。フレギオンの力の象徴の一つであると思っていた装備を彼はギーゼルヘアに預けていたのだ。それで気分を良くしない者などいないだろう。フレギオンからしてみれば巨大な鎧と剣を持ってエクスラードに向かうのは、逆に邪魔になると嫌ったからだが。
と言っても、それだけの装備だ。ギーゼルヘア自身が装備してみたいという欲求にかられなかったといえば嘘になる。しかし彼はそれをしなかった。正確にはできなかった。
「不気味な装備だ」
部屋の片隅に置かれた鎧と剣を見てギーゼルヘアは一言呟いた。
実はフレギオン達が行ってから一度だけだが、彼は防具を手にしようとした。しかしその時得体の知れない威圧感を感じてギーゼルヘアは思わず手を離したのだ。それが何かは彼には分からなかったが、とにかく神具防具に触れるのはギーゼルヘア自身にとって危険な行為だと気付いた。
以来彼は、【永遠なる混沌】と【永久なる死】は神に選ばれたフレギオンのみが着用可能な装備なのだろうと思って、触れることはしなくなった。
「神の力ってやつかなにかか。へっ、オレにはカンケーないことだ。もう触らん」
と言いつつも、口惜しい気分になる。
この装備を見つけることができればどれほど強くなれるか。闘神ガルデブルークの恩寵を受けた装備による加護だ。聞いただけでものどから手が出るほど興味がそそられる。
しかし、やはり触れようとするとあの威圧感を感じて思わず手を引っ込めてしまうのだ。それはまるで、所有者であるフレギオン以外に触らせぬとでも鎧が言っているように。
「触らぬ神に祟りなし、人間の言葉だがまさにそんな感じだぜ」
威圧感を無視して、無理矢理にでも着ようと思えばそれもできそうではある。ただし、そうした場合どのような結果が訪れるかギーゼルヘア自身が一番わかっていない。下手をすれば神の怒りをくらうかもしれない。
その場合はかの闘神の怒りだろうか。とにかくにもフレギオンが帰ってくるまではこのまま安置しておくことが最善だと彼は考え、その部屋から外に出た。
異変に気づいたのはそれから少ししてからのことだった。ギーゼルヘアがいるこの関所の地面が揺れているのだ。最初は地震かとも思ったが、実は違うことに気づく。これは馬の蹄が大地を踏み荒らしながら走っている音だ。
それを聞いて最初はフレギオンが戻ってきたのかと思ったが、音があまりにも大きすぎたし、見張り台にまで行って確認してみれば、数百を超える騎兵隊の人間の軍がまっしぐらにここに来ているのが見えた。
「人間っ!」
短く言い放って、ギーゼルヘアは見張り台から駆け下りていく。そしてすぐさま武器を手にとって、関所の門をとじると籠城の用意をしていく。
だが籠城と言ってもギーゼルヘアには十分な知識を持ち合わせているわけでも、ましてたったひとりで数百の敵と戦えるほどの力はない。いくらかの召喚獣を呼び寄せて、彼は押し寄せてきた人間と戦う準備をしていった。
ここを攻めたときは数十人の人間をこの手で殺したが、見張り台からみえた敵の数はあのときの十倍近い数がいる。いくらなんでも数の差がありすぎる。仮にここから迎え撃とうとすればむざむざ殺されるだけだ。
「なんであんな数の人間が……、まさかフレギオン様が負けたのか。い、いやさすがにそれは……」
人間の軍がここに来たと言うことは、この場所が彼ら魔族の手に落ちたということを知られたからであろう。だとすれば、彼が主と認めたフレギオンが敗北し、死んでしまったということなのか。残念なことにここでいくら考えても答えなど出せそうになかった。
「防具を置いていくからだ、そうすりゃ……!」
思わずギーゼルヘアは叫ぶが、そこはだれもいない場所だ。彼の愚痴に返ってくる言葉はない。かわりに、シュパイツァーの怯える声だけが響いた。
「いいや! そんなはずはねぇ、あの方は負けねぇ、そうだろギーゼルヘア。そう思ったからこうしてここまでやってきたんだ、くたばられてたまるかってんだ」
フレギオンの力をみてギーゼルヘアは彼に臣従を誓った。仲間を生き返らせる力に魔族の最盛期を呼び戻せる魔族は彼しかいないと思ったのだ。かつて聞いたエルフの国の再興、それができるかもしれないのだ。顔には出さずとも、胸が高鳴るのがエルフ族として当然の心境だ。それを行うはずのフレギオンがこんなところでしんでなるものか。それに落ち着いて考えてみれば、神器防具がギーゼルヘアを寄せ付けないのはフレギオンという主が生きているからであり、所有者が変わってないという事実からくるものではないだろうか。
だとすれば納得もいく。
そこからの彼の動きは速かった、短剣を手にして、もう一度二階まで一気にのぼり、迫ってくる人間の軍の姿を見て、ギーゼルヘアはにらみつけてやろうとしたのだ。
それで彼は気づいた。人間の軍の先頭にいる男がヘーゼル公であることを。かつてギーゼルヘアに接触し、彼に同種族であるネリスト族の壊滅をそそのかした男だ。そのときのギーゼルヘアはネリスト族への嫌悪によって、彼らと同盟を組んだが今となってはそれは昔の話だ。
「あのやろう……!」
ちょうど良い、何か一つでも文句を言ってやろうとギーゼルヘアは前のめりに軍を睨むと、ヘーゼル公もギーゼルヘアに気づいたようだ。
彼は親衛隊を前に並ばせ、百騎ばかりの騎兵に馬から下りて関所を奪還せよと命令を下した。そのあとはすぐに親衛隊の最後方に移動して自分は高みの見物と決め込んだ。
「ふん、やはりギーゼルヘアがいたか。ワシの読みが当たったわい」
ほぼ確実に関所にいるのはギーゼルヘアだということは知っていたが、やはりというかこの目で見なければ安心はできなかった。それもこれで確証をつかみ、あとは情報通り関所にギーゼルヘア一人なら、部下に力押しで攻めさせれば勝てる。
そしてこれでギーゼルヘアを殺せば、王子や国王に魔族と繋がったという情報もいかないし、教会からの信用も高くなる。逆に知られれば教会から異端と見なされ迫害される運命だ。なんとしてでもここでギーゼルヘアの息の根を止めねばならなかった。
そしてここの部下たちも魔族と繋がった者たちであり、同じ秘密を共有する同士でもある。彼ら親衛隊にしてもギーゼルヘアの死は明るい将来のために必要不可欠であった。
「やつを殺すのだ! あいつが死ねば我らの名声はあがり、望みのままのものが手に入るぞ」
公爵の号令とともに親衛隊の攻撃が開始される。魔法攻撃による城門への攻撃だ。
「ギーゼルヘア貴様さえ死ねば、ワシの発言力は今以上に高くなる。そうなれば……」
そもそもヘーゼル公がこのようにギーゼルヘアを利用しようとしたのは理由がある。
その最大の理由が、彼がエクスラード国の国政を牛耳りたいという野望だ。
彼は公爵という地位にあるにもかかわらず、また国王の后の兄である身分であるのに首都でなく、こんな北方の辺境地を治めている。世間体には北方の魔族を監視あるいは倒すために北方に来た公爵となっているが事実は異なる。
彼は国王によって北方に追いやられており、国の国政にまったく関わることができない。それというのも彼に政を行う力が欠如しているからだった。彼はただ威張るだけの男で、魔法は全く使わず、頭脳もよくない。剣術もまったくだ。さらに妹が王妃であることを自慢し、他の貴族から疎まれ、さらに気に入った女を屋敷に連れ込むという事件も起こした。
そんな男に国の重要な政は任せられないとして国王が、敵も少なくさらに田舎のオルドに彼を行かせたのが、オルヴァー王子が幼かった時のことだ。
この件で当のヘーゼル公は己のことを棚に上げて、ひどく恨んでおり、いつか首都にて国政を支配したいという野望を募らせた。
しかしすぐには何もできなかった。国王は若かったし、有能だった。ヘーゼル公がつけいる隙はなかったのだ。だがそれも数年前に状況は変わった。国王が病に倒れ、床に伏せりがちになり、ヘーゼル公の監視が緩んだのだ。
その隙にと公爵が目をつけたのがアルテルン教会とギーゼルヘアだった。教会にはまず多額の支援金を送り、教会から信用を得て交換に首都での情報を得た。そしてさらに大司教への個人的な支援金まで送って教会の影響力がオルドに及ばないようにした。要は金を送る代わりにオルドには手を出すなということだった。こうして、ヘーゼル公は私兵を使ってギーゼルヘアと接触。まずはネリスト族を滅ぼし、そのあとファッティエット族を滅ぼす計画を練った。
それが成功すれば両種族のダークエルフを滅ぼした功績を手にするだけでなく、教会に協力したとして大司教を後ろ盾にできる。そうなれば長年の夢が成就するはずなのだ。それらの名目のもと公爵は首都に帰還し、国王を教会の圧力でもって押さえ込み、自分が政を行う。そんな計画だった。
その計画もギーゼルヘアが王子や国の者に一言でも喋ってしまっては丸つぶれになってしまう。それは阻止せねばならないのだ、彼の夢のためにも。
「ええい、まだか。まだ門はあかんのか! ハルシュトーレムの若造とユーハンソンがあの金髪のダークエルフと戦っている間にやるのだ!」
公爵はこのときハルシュトーレム将軍が取った行動や、ユーハンソン将軍が戦死したという知らせを聞いていなかった。いや、聞く前に勝手に北上したために聞く機会を自らの手で逸していた。だから彼は知らなかった、ユーハンソン将軍がフレギオンとまだ戦っていると、そして王子の軍が勝つと内心思っていたのだ。
「いいか、王子の前にあいつの首を差し出してワシの功績にするのだ。関所を取り戻せば全て上手くいくのだ、死ぬ気でかかれ!」
死ぬ気でと吠えたてて命令する公爵が一番安全な後方にいるという矛盾が伴う中、関所を巡る戦いは激化する。
炎系の魔法で門は幾度にも攻撃され、頑強な門もついに悲鳴をあげるように壊れかけていく。だがギーゼルヘアも指をくわえてそれを見ているわけではない。彼は関所の二階から矢を射って、親衛隊の進行を食い止める。さらに召喚獣たちが二階から飛び降りて親衛隊に攻撃していった。
どう猛な召喚獣の鋭い牙に腕を食いちぎられた兵士や、頭をかみ砕かれた兵士。逆に剣で突き刺された召喚獣もいた。
「あの獣たちはただの化け物だ、慈悲などいらん。徹底的に痛めつけて殺してやれ!」
戦いをみているうちに興奮したヘーゼル公が馬上から勇ましい声を張り上げた。それはギーゼルヘアの耳にも入り、彼はギロリと公爵を睨むと思いっきり矢を引き絞って、公爵に向けて射った。
「わわっ、矢が」
まっすぐ飛んできた矢に驚いた公爵は今度は真逆の情けない声を張り上げた。そうしてるあいだにも矢はまっすぐ自分のほうに飛んでくる、剣術を全く扱えない公爵は思わず馬にしがみつくようにして身体を小さくした。
「えいやっ!」
そのとき、公爵の横から颯爽と男が現れた。公爵を守る騎士ヨアキム・フリュクレフである。
公爵の身辺を守る親衛隊の中の親衛隊であるフリュクレフの剣によってギーゼルヘアの矢は打ち落とされ、公爵は事なきを得た。
「おお、助かったぞ」
「ご無事ですか閣下。ここはやつの射程距離内にある様子、もっと後方に」
「う、うむ」
ギーゼルヘアと公爵との距離まではかなりあったのだが、信じられないことにここまで届いた。公爵はいかにも肝を冷やしたという顔つきでその場から後ずさる。
さすがに一本の矢では公爵を死に至らしめることはないだろうが、それでも無様にもほどがある。
「お、お前達なにをしているんだ! 早くやつを殺せ!」
気を取り直してヘーゼル公がまた喚くように命令をする。その直後、関所の門が度重なる魔法攻撃によってついに全壊し、親衛隊が雪崩のごとく関所の中に入っていった。
それを見て、よしとつぶやいたヘーゼル公はギーゼルヘアの姿を見ようと、二階部分をみやるとギーゼルヘアの姿はそこには既になくなっていた。
「いない、くそ。やつを逃がすな逃がすんじゃない、必ず殺せ」
関所の門が破れることはギーゼルヘアも予知していた。彼は公爵に矢を射ると同時に階段を駆け下りて、フレギオンの神器防具をおいている場所に向かった。
あの矢で公爵を殺すことなど不可能だと分かっていたのだ。そのため次の行動が速く、門が破られる前に防具と剣を手にして、彼はヴォリドール山のほうに続く出口に走った。
この防具を人間に奪われるわけにはいかない。フレギオンの防具であり、この力を人間が手にすれば魔族の敗北は決定的になるかもしれない。とにかくフレギオンは死んでいないはずだから、彼が戻ってくるまではこれを死守せねばならない。ギーゼルヘアの頭にあったのはそんなところだった。
「人間なんかに渡してたまるかってんだ」
フレギオンは生きている。それを胸に、ギーゼルヘアは鎧と剣をもって関所から脱出を行おうとした。あの門が突破されれば中には防御能力となるものは全くと言って良いほど無い。ならば、ここに留まって人間と戦い続けるのは得策ではない。
山に向かう門のほうまで走ったとき、シュパイツアーのことを思い出したが殺す時間も今となっては惜しいため、頭の中からあいつのことは忘れることにした。そうこうして、反対側の門に到着しようとしたときだ。門が親衛隊によって破壊され、奴らがなだれ込んできた。
「ちっ、この!」
近くの松明を投げ飛ばし、敵の進路を防ぐ。それと同時に召喚獣たちが門の外から親衛隊とともにもつれ合うように入ってきた。
召喚獣と兵士達が入り口でおびただしい血をあげながら戦う中、ギーゼルヘアは帰来の好戦的な性格が表に現れて、鎧をその場におくと彼らに攻撃をした。
「雑魚が群がったぐらいでいい気にのるんじゃねぇ!」
舌を巻いた威勢の良い言葉とともに、一番近くに迫ってきた兵士と刃を交える。さすがに相手は公爵の親衛隊の兵士だ、そうすぐに殺すことは出来ないが、それでも数合刃を交えた結果、兵士の剣の軌道を覚えたギーゼルヘアが一瞬の隙をついて兵士ののど元に短剣を突き刺した。
「俺を誰だと思ってやがる。なめるなっっ!!」
ギーゼルヘアの手によってさらにもう一人の兵士が絶命する。赤髪の修羅となったギーゼルヘアの雰囲気に飲まれて兵士の歩が遅くなる。そこに疲れを知らない召喚獣達が獲物を手に入れた猛獣のように襲いかかった。
「ハァハッ、いまのうちだ」
それを見てすかさずギーゼルヘアは撤退を開始する。鎧をもって入り口に全速力で走り、反対側の門をこじ開けた。
「えっ……」
門を開けてすぐに逃げようとしたギーゼルヘアだったがそこで思いがけず立ち止まってしまう。
そんな無防備な背中を見せたギーゼルヘアに今こそ好機と、兵士の一人が魔法を詠唱する。ギーゼルヘアもそれに気付いたが今から回避するのは不可能だと、歯を食いしばって耐えようとする。
そこにギーゼルヘアではない者の声が響いた。
「ギーゼルヘア、伏せろ!」
「なっ……」
一瞬、何故此処にお前がと思ったが、考えるより先に身体が床に向かって倒れ込んだ。その頭上を風魔法が凄まじい轟音と一緒に、兵士達にむかって放たれた。
炎魔法を行使しようとしていた男は風魔法をくらってしまう。そこになおかつ自分が放とうとした炎魔法が風にのって、味方の身体を自分もろとも炎の包まれた。
兵士達の悲鳴が響き、押し寄せてきていた者が後退する。さらに追加となる風魔法が兵士達を襲った。
「な、なんでてめぇなんで此処に、サフラン!」
そう、ギーゼルヘアを助けたのはここにいるはずにないネリスト族の祭司であるサフランであった。
「話はあとだ。さきにそいつらをなんとかするぞ。ウェルリーナ、手を貸せ!」
「はい!」
見ればそこにネリスト族やファッティエット族のダークエルフたちがかなりの数でやってきていた。
そこにはツァハリーアス、イェレミーアス兄弟の姿もあった。
「お頭、いま助けますぜ!」
「人間どもに思い知らせてやれ。ファッティエット族の力を見せつけてやれるんだ。我らを蛮族と罵る害虫共に死を与えてやれ」
数の都合、軍とはいえたものではないがネリスト族ファッティエット族の両部族の戦士の数は五十人近くはいるようだった。彼らはギーゼルヘアを助け出し、関所に押し寄せてきた人間の軍とぶつかり合った。
召喚魔法を呼び寄せたネリスト族の力もあって状況は一変。関所に突撃した兵士達が殺されていくのを見て、たまらず公爵は軍を退こうと考えた。今ならまだ間に合う。すぐに南のハルシュトーレムの軍にこのことを伝えて北上せよと言うつもりだった。だが、図らずもその計画は崩れてしまう。
ハルシュトーレムの軍はオルドに撤退しており、北上するために障害が無くなったフレギオンが巨馬に乗って、公爵の背後に現れたのだ。
「あれはあの金髪のダークエルフ、なぜここに!」
驚いた公爵は慌てふためくがそれで状況がかわる事はなく、逆に関所に群がるように攻撃をしていた人間の軍を見たフレギオンは仲間を助けるためにすぐに攻撃を開始。
フレギオンの右手から巨大な光がともされたと思った矢先、それは公爵の軍に向かって放たれて死を撒き散らした。
公爵の兵はなすすべなく壊滅に追いやられ、南からフレギオンの攻撃、北からはダークエルフの両部族の攻撃。軍の統制は崩れていく瓦礫のごとくすぐに瓦解した。
そんな中、フリュクレフだけは混乱せず、自らに課せられた役目を全うするために公爵を守っていたが、それも程なくして役目が終わるときがきた。
公爵を殺そうとするツァハリーアス、イェレミーアス兄弟の姿を確認したフリュクレフはすぐさま応戦し、暫くは火花が飛び散るような剣のぶつかり合いをみせて、互角に渡り合い、なんとかイェレミーアスに手傷を負わせることに成功したもの、兄であるツァハリーアスの手によって胸を貫かれ、イェレミーアスの剣によって首を落とされ凄惨な死を迎えた。
「ふ、フリュクレフ…………。あ、ああああああああ………。な、ななななぜだ!! ハルシュトーレムはっ! ユーハンソンはなにをしているのだっ! 誰か、誰かワシを助けよ、ワシは、ワシの妹はエクスラード王妃であるぞ!」
頼みの綱であるフリュクレフが戦死したことを知った公爵は、このような戦場の真っ只中にいるというのに場違いな発言を行った。しかし、それを聞く者はここには誰もいない。全員が生き残るために必死で戦っていた。
「くるなくるな。この悪魔が……」
フリュクレフを葬った兄弟は逃げまどう公爵を追いかけて、その首根っこをつかむとおもいっきり地面にたたきつけて、その背中に剣を突き刺した。それがヘーゼル・ヨッハンヘム公の最期であった。
公爵を失った親衛隊の兵士達はもはやここまでと諦めて、自ら命を絶つ者。魔族の誰かを道連れにしようと攻撃をしてくるもの様々であったが、数分のうちに全ての戦いが終わった。




