13. 即席家族
西棟中央にある小広間が朝食の場所だと聞いていた。天贖、容、太智の順にある各々の部屋の、容の部屋寄りにある場所だ。磨かれた縁側を歩くと、朝の澄んだ空気が胸に満ちた。庭の白玉砂利に反射して白い光が揺蕩う。
「おはようございます。開けますね」
朝の挨拶をしてから、障子を全開にする。そこから太智を引きずって、容の剛力で中へ放り投げた。それでも頭をぶつけないように気を付けたので太智には後で反省しつつ褒めて欲しい。仰向けに寝ている太智は夏掛けを握りしめたまま、まだ微動だにしない。
小広間には既に天贖が膳の前で待っていた。この前の大広間の時とは違い、3人の膳の位置は中央ではなく部屋の奥、上座の方だった。このような小さな気遣いを屋敷の女衆はしているのだと思うと尊敬する。
「容……! 太智が起きないのは知っているがそのまま連れて来たのか」
「はい。良い匂いがしたら起きないかなと思いまして。だって凄い大声出しても起きないんですよ」
夏掛けを離さない太智に耳打ちする。
「ご飯だよー」
「良い匂い……ん……。ん!?」
何をしても起きなかった太智が、上半身を起こした。ご飯の匂いで起きるとは、この野生児め、と思う。
「えっ、ここ、わっ、天贖様!?」
太智は目を回して驚愕しているようだった。起きたら目の前に天贖がいると確かに誰でもこのような反応をするだろう。整った顔が眩し過ぎるからだ。
「はは、太智。布団を放して席につけ」
天贖がおかしそうに笑い、自分の右斜めの席を指した。
「は、はい!」
太智は席につくと、その前に座った容を睨んだ。
「何で起きたら俺はここにいるんだよ!」
「だって、全然起きなかったんだよ。一応、努力はしたつもりだよ。さあ、食べよう」
「ちょっ」
太智が言いかけたところで天贖と容が声を合わせる。
「「いただきます」」
太智が遅れて「いただきます」と小さく言った。




