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トラウマ~乗り越える為の物語~  作者: アンディオス
今は辛いことなんて忘れて
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三つ子の魂百まで

 朝起きて、ご飯を食べて日課を言わらせる。

 次はいつもの組み手。

 一本でも取れれば次のトレーニングに行くらしいが、なんだかずっと行ける気がしないな……。

 それでも。

   「やられっぱなしは嫌いなんだ。今日こそは勝たせてもらうよ。」

   「ふふんっ、その言葉いったい何度目かな? 今日も私が勝つよ。」

 いつでも来なよ、と手招きしているソラにゆっくりと歩み寄る。

   「あれ、いつもみたいにガツガツ来ないんだね。今日はどんな策を持ってきたのかな? 楽しみだよ。」


 歩く速度を徐々に早くしソラに向かってこぶしを繰り出す。

 だがすぐに受け流され、背負い投げされる。

 でも今日はいつも以上にうまく受け身が取れた。

 即座に起き上って攻撃に転じる。

 時間が経つ毎に寝る間も惜しんで考えた策が一個、また一個とつぶされていく。


 時には猫だまし。

 時にはわざと転んでみたり。

 何の意味もなかったけど……。

 投げ飛ばされ、天を仰ぎながら次の策を考える。

 昨日考えた分は全部ダメだった。

 ……よし。

 勢いをつけて飛び起きる。

 肩を回し息を整える。

 馬鹿正直に行くのはもうやめだ……全部即興!! 目の前の困難に全力で挑んでやる。

 目の前に立つソラの目を見つめる。

 警戒は……うん、してないな。

 腕を組みこちらを見つめている。

 いつでも来いと言う意思表示なのだろう。

 焦って行くのはダメ。

 まずは自分のペースに持って行ってやる。

 避けられるのはわかっている。

 だから本気で行ける!!


 顔を狙った本気の前蹴りは空を切る。

 少し体を倒したソラが目で語りかけてくる。

 詰めが甘いよ、か……そんなことはわかっている。

 ただ、ソラとは一定の距離を保つことを意識の片隅に置いておく。

 基本的にソラから攻撃してくることはない。

 安心して攻撃後の隙をさらすことができる。

 蹴りはダメ。

 それが分かっただけで御の字。

 今度は……。

 一撃単発だったら掴まれて即アウト。

 フェイントも織り交ぜながら徐々にソラの体力を削りに行く。


 まぁこの時は頭になかったけど冷静に考えたら僕よりもずっと前から百キロ余裕で走りぬく体力を素人が削り切れるわけなかった。

 打っては逸らされ打っては弾かれ。

 それでもただ一生懸命に攻撃を続ける。

 そろそろ意識それて……きた、かな。

 一度少しだけ後ろに下がり大振りのこぶしを繰り出す。

 ソラが僕の攻撃を受け流すために一歩前に進む。

 来たっ!! 絶好のチャンス。

 僕は百パー受け流しが来ると割り切ってフェイントに切り替える。

 止められる寸前のところで重心を変え、受け流すために伸ばした手をつかむ。


 僕の重心が崩れ、体が倒れるところをつかんでいる手で耐える。

 どれだけ鍛えていても不意に人一人分の体重をかけられたろよろける。

 倒れそうな体制とよろけている相手の状況、自分の策に持っていける状態までもっていくことに成功した。

 僕はそのまま全体重を使い手を引っ張る。

 不安定な体制の中、手を引っ張られたソラは背を地につける。

 対する僕は引っ張った反動で体勢を立て直す。

   「今ッ!!」

 体勢的に反撃は絶対にない。

 このチャンスを逃すな。

 全体重を乗せたこぶしは勢いを増していく。

 あと少し振りぬけば……と言うところ手が、止まる……。

 なんでだ……どうして?

 ソラさんの目の前で静止した手は、震えている。

 ため息をつき立ち上がったソラさんの表情にはいらだちが見えた。

   「マサミチ君……。」

   「は、はい……。」

   「甘――――――――――――――――い!!!」

 バッチーーン   

 容赦のない平手打ちが思いっきり振りぬかれた。

 ノーガードかつ油断しているときに食らったから受け身をとれず盛大に地面に張り倒された。

   「君はね!! 優しすぎるの!!」

 予想外の言葉に面食らう。

   「君が今やってることは自殺行為なの!! 私は、君が自分のやさしさのせいで殺されてほしくない。君の過去、死んだ理由全部聞いてて分かったの。君は優しすぎる。もし私が君の立場だったら間違いなく自死は選ばない。死んでもいいから自分の母を、家族を殺したやつを殺しに行く。それだけのことをされても、君は自分だけを傷つけた。私が今マサミチ君と一緒に修行しているのは、君に死んでほしくないから、幸せになってほしいからなの! それは、それだけは理解してほしい。私だってずっと君のそばにいられるわけじゃないんだから。」

 ああ、格好悪い。

 自分を救ってくれた人に、幸せにしてあげたい人に、こんなこと言わせるなんて。

 最低だ……。

   「……ごめ──」

   「謝ってほしいわけじゃないの。」

 何も言えない、何を言ってもそれは言い訳にしかならない気がしたから。

   「ふう……ごめんね。今日はもうやめとこうか、先に帰っておいてくれない?」

   「……うん。わかった。」

 このままじゃだめだ、これじゃ今までと何も変わってない。

 つらいものから、過去から目をそらし続けてたままじゃダメなんだ。

 明日こそ、勝って見せる。

 でもなぁ……人を、ソラさんを殴れるかな?


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