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転生先で女の子を救ったら人生が変わった  作者: アンディオス
六章 一枚のページを捲るために
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第五十八幕 決着??

「ぐおおおお!!」


 十分な助走を経てぶつかったウルルの力は凄まじく、身体全体の骨が軋む

 負けじと全魔力を身体強化に回したマサミチは、多少なりともウルルの勢いを弱める


 ぶつかり合った二人の間に流れる空気は、もはや気体としてではなく、粘り気のある重圧として存在する

 正面からぶつかり合った身体が、ミシミシと軋む嫌な音を立てる

 マサミチの全霊を懸けた一撃は、ウルルとの間に、極限まで凝縮した一点の力のぶつかり合いとして成立する


 硬……重……強……死ぬ……


 踏み締めた足は悲鳴を上げ、今にも折れそうになる

 硬く頑丈に造られたであろう床が悲鳴を上げ、抉れ、足の裏に強固な抵抗を残す

 血反吐を吐きそうになりながらも歯を食いしばって耐える

 それは一種の核心だ


 一歩でも引けば、その瞬間にこの均衡は崩れる……一瞬でも押されればこの圧力に飲まれる!


「くぅぅうおぉぉ!!」


 全身の筋肉が断裂寸前まで膨れ上がるのを感じる

 決して負けぬように絶えず魔力を送り、肉体を鼓舞する

 視界は朱に染まり、耳元で聞こえるのは、自分の荒い呼吸だけだ


 押し合ってるだけじゃ駄目だ

 押し返せ──


「う、うご……け!」


 押せ、押せ、押せ!

 心の中で呪詛のように繰り返す


 能力がイメージ次第で強くなるのなら、その根幹にある魔力も同じはずだ

 勝つイメージを片時も切らすな!

 負ける事、押されることを片時も考えるな!


 指先の一節にいたるまで、全神経を前方へ、ただ一点へ叩き込む

 ソラの邪魔はさせてたまるものか



 

 命を賭けた攻防のそばで、ソラは全神経を集中させていた

 二人で生きてここを脱出するために


 巡れ、廻れ、回れ

 この建物の、建物周辺の情報を搔き集めろ

 ここには世界樹由来の緑が多い

 それは上層だからではない

 〝根〟が一番外に露出している場所だから!

 世界樹の魔力が通った全ての植物は、私の能力対象!


理解(わか)ったよ!」


 声を上げたのは均衡が崩れる前

 時間にしておよそ二十秒ほどたった頃


 その声が届いた時、マサミチは魔力を解除する

 上から順番に一つずつ丁寧に、でも早く

 そうすれば押し合っていた均衡は崩れ、力は真っすぐ進む

 

 ごめんなさい、お腹蹴ります!


「どりゃぁぁぁぁああ!!」


 なんちゃって巴投げ!

 僕だけの技術と力じゃ不十分だから、ソラの力も使って……


 投げ飛ばされそうになるのを力だけで耐えようとするウルルの身体にツタが絡みつく

 そのツタはマサミチの力を助長するように力を加える


「なっ──」


 ウルルの足が地から離れ宙に浮く

 その一瞬の隙を見逃さない


 二人同時にまた先ほどの方向へ踏み出す


「ッ!? マサミチ君!」


 足に力が入らない……


 大地を踏み締めたマサミチの足はガクガクと震え、今にも倒れそうになる

 急激な筋疲労に脳が危険信号を出しているのだ


「ソラ!!」


 マサミチがソラに手を伸ばす

 それに応えるように能力を発動し、マサミチを引っ張る

 おぶさるような形でソラの上に着地する


「助かったよ、ありがとう」


「どーいたしまして」


 そうしてソラは足早に駆けていく




 何をしているんだあの者達は

 異端者のあの男、たったの数十秒とは言え私と競り合った

 強者とまではいかないが実力は認めよう

 だが、あの場面で私と掴み合うメリットはなかったはず……それに理解(わか)ったとあの女は言っていたが……

 ……まさか!


 ウルルは全身に纏わせていた魔力を足に集中させ、思い切り踏み込む

 既に豆粒ほどの大きさにしか見えないほど遠くに行った二人を逃がさないために


 気づいたのだ

 それは地面を伝うあの女の魔力

 教会全土に張り巡らされた魔力の残柄

 あの者達が進んでいる先には緊急用の裏口がある

 逃がしてなる物か


 あの不忠な異端者共に神罰を──




「どう?だいぶ楽になったんじゃない?」


 走っている時の揺れを感じながら僕は魔力による治癒を全身に浴びている

 関節周りに合った異常な熱さは消えたがまだ動きがぎこちない

 全快時の三分の一くらいは動けるだろうか


「もう大丈夫だよ」


「……嘘ついてるでしょ」


 ばれたか……見得を張っても意味がないか

 正直、今ソラの背中と密着しているせいでドキドキしている

 この鼓動がソラにバレない内に離れたかったのだが……今更っぽいな


 耳の先が燃えるように赤くなっているソラを見れば直ぐにわかる事だ

 恥ずかしい


「ここを曲がって、ちょっとしたら出口があるはずだよ。……聞いてる?マサミチ君?」


 正直言ってソラの話は耳に入っていなかった

 僕の全細胞から髪の毛の一本に至るまでの全てが警鐘を鳴らしていた


 ……ん?なんの音だ

 それに、魔力──


「ごめんソラ」


 体勢を無茶に変え、ソラの背中を蹴飛ばす

 ソラを蹴る事を気に病むとか急に何の説明もなく蹴った事を謝るのは後でいい

 今、横から感じたこの圧は


「逃がすわけないでしょう!」


 壁から伸びた手が乱暴にマサミチの顔を掴む


 クソッ、建物を壊して一直線で来たのか……


 顔を掴まれた勢いのまま壁に叩きつけられる


 後頭部を打った感覚でわかる

 この壁、規格外に硬い

 それを豆腐を崩すかのように軽々と……


「今、ここで、死になさい。懺悔はあの世で我が神に」


「…………!!!!」


 これが人間の手なのかと疑いたくなるような力が籠められ、頭蓋が悲鳴を上げる

 ミシミシと言う音が頭の内側で木霊する


 このままじゃ死ぬ、死ぬ死ぬ


「四”季”・冬”式” 極”凍”(ぎょ”ぐどう”)


 僕の頭を鷲掴みにしているウルルの腕を掴み、全力で氷を出す

 少ししか……緩んで……ない


世界樹林硬(ユグ・ドラムラ)!」


 ソラの出した樹が少し緩んだウルルの腕を打ち抜き、手のひらの圧力から解放される

 解放された瞬間、大きくバックステップを踏みソラの横まで下がる


「今の……魔力は……」


 ……なにか考えてる、のか?

 少しだけでも時間を稼いで何か策を考える時間をソラに与えなくては


「うおおおお!」


 地面を蹴り、駆ける

 少しでも意表を突けるように壁を走る

 小さな氷の刃を携えて、足を狙う

 機動力を少しでも割くために、体勢を低く

 刃を振りき──


「うぐっ?」


 地を這っていたはずの身体は宙に投げ出され、浮遊感を得る

 鳩尾に痛みが走り、吐き気が遅れてやって来る

 それと同時に新しい衝撃が顎を掠め、意識を刈り取る

 そして意識が完全に消える刹那、ウルルの拳が左頬を打ち抜く感覚が──






 強すぎるでしょう


 ソラの見ていた光景は異様なものだった

 マサミチが危険を察知し、蹴り飛ばしてくれた後、マサミチを助けるべく世界樹の根の力を借りて技を放った

 正直、威力と言う部分では全く足りていなかった

 ウルルさんの拘束を外すに足る威力ではなかったのは自分が一番理解しているつもりだ

 なのに拘束が外れた

 その理由は〝世界樹(わたし)〟の魔力だったからだろう

 その違和感に気を取られて拘束が緩んだのだろう

 それをマサミチ君に伝える前に彼は行動をとってしまった


 低い位置、多分だけど機動力を少しでも削ぐために足を狙ったのだろう

 狙いは良かった、けどそれが駄目だった


 残像しか見えなかったけど、マサミチ君の身体がウルルさんの膝に蹴り上げられていた

 その後、瞬きの間に身を捻ったウルルの蹴りがマサミチ君の顎を掠めた……ように見えた

 一部分、マサミチ君の顎の一部分だけがブレたから多分そうなんだろう

 その情報を頭で処理し終わった頃、蹴りの勢いを殺さずにさらに身を捻ったウルルさんの拳が宙に浮いたマサミチ君の顔を打ち抜いて──


 ドゴォ!!


 音が遅れて聞こえた

 壁を打ち抜いて隣の部屋、壁の向こうにあった部屋のさらに向こう

 そこに微かに見えたマサミチ君の足


 死ん……ではない、けど


 その拳を血で染めた聖女を前に、身体の芯が恐怖で埋め尽くされる

 へたり込んだ体勢から立ち上がろうにも足に力が入らない

 オーニアスちゃんが言っていた通りだ

『彼女は武器を持ったら弱くなる。リーチが伸びる代わりに速度と威力が落ちる。もし、もしもの話ではあるのですが、彼女と戦闘になった際は全力で逃げる事と、武器を手放させないようにすることを意識してください』って

 私たちは体感してわかった

 それでもあのリーチは私たちにとっては致命的なほど相性が悪い

 私もマサミチ君も威力に関しては上がろうが下がろうが同じようなものだと思ってたし、実際そうだ

 速度なんてそこまで変わらないって高を括ってたんだ

 結果がこれか


「貴女……」


 ウルルが歩み寄って来る

 恐怖だ


 ソラはガシッと手を掴まれ、死を悟り目を瞑る


「貴女は……いえ、貴女様は何故、世界樹様の魔力を使えるのですか!?」


「──へ?」


「やはり、私は先の魔力の残柄より世界樹様と近しい物を感じ取ったのですがまさか世界樹様本人だったとは……! 不肖ウルル、感激です。常日頃、貴女様に信仰を捧げております! 何かご啓示はありますか!」


 既に頭が混乱で一杯だ

 というかなんでバレた……

 いや、この感じ私がって言うのは気づいてないって言うか興味ないっぽい

 そんな事よりもマサミチ君を助けなきゃ


「じゃ、じゃあ……さっきウルルさんが殴り飛ばした人をここまで連れてきて欲しいんだけど……いい?」


「任せてください! 直ちに! 遂行させていただきます!」


 風のような速度でマサミチ君の方へ向かっていった

 とりあえず……助かったのかな?

 私も、マサミチ君も──

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