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転生先で女の子を救ったら人生が変わった  作者: アンディオス
六章 一枚のページを捲るために
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第五十七幕 異次元の実力と喰らい付く二人

 扉を蹴破って外に出た

 荒っぽいことは避けたいだとか話し合いで解決したいだとかそういう次元じゃないのはすぐに分かった


 一直線、本当に一直線で無我夢中に正面玄関に向かって走った

 その途中、後ろから感じたのは心臓が直に握りつぶされているんじゃないかと錯覚してしまうような殺気と、圧倒的な強者の魔力

 記憶凍結の影響でぼんやりとしか覚えていないから直感だけど、オーニアスと戦っていたあの精霊よりも魔力が多くて、濃い


「危ないッ!」


 後ろから聞こえたとてつもない音に、二人で身を屈める

 その頭上を通るようにして鉄の十字架が飛んできた

 僕らの進路を妨害するかのように


「逃がすわけないでしょう……」


 いつの間にか目の前にいたウルルは地面にめり込んだ十字架を軽々と引き抜き、肩に担ぐ

 地面を抉った十字架と、もう一つの十字架、その二本を携えて今、殺戮が行われようとしていた




 やばいやばいやばいやばい!

 何が地雷に触ったとかそんなことは今は後回しでいい

 あの人は何だ!?_

 ヒバナ百人と戦う方がまだ勝機が見える

 まず……あれから逃げ切れるのか?


「うっ……」


 なんの予備動作もなく振られた鉄の十字架を後ろに跳ぶことで何とか躱す

 見立てだけでも数百キロはある物から風を切る音が聞こえた

 気を抜いたら死ぬ

 その事実だけがありありと伝わってくる


「ソラ、一旦逃げ──

 れるわけないでしょう!」


「がっ!?」


 鈍い音と共に内臓が潰されるような圧が腹部を襲う

 振り抜かれた勢いのまま壁にぶつかり、身体がひしゃげそうになる


 確実に命を刈り取るためにウルルの追撃が飛んでくる

 瞬きの間に間合いに入られた

 次の攻撃が来る


「……ッ!」


 何とか身を捻って逃げられた……でもそれも一時的なもの、次に致命的な隙を晒したら、待っているのは死だ

 まだ死ぬ訳にはいかない

 それに、戦って勝つ必要はない


 覚悟は出来た


 深く深く息を吐き、目の前にいる狂敵(ウルル)に向かって一歩、近づく


「待って! マサミチ君じゃ──」


 ソラが覚悟に気づいた時、静止のために声を上げる

 それが、開戦の合図だ



「おおおおおおぉぉぉ!!」


 あの武器を振り回されるのは厄介だ、使われるとリーチ的にも威力的にもまずい

 だからこそ使われても小回りの効かない近距離!


 二手三手繰り出された鉄の暴力を氷で滑らし無力化する

 ただオーニアスが危険だと言うのも頷ける

 あれほどの大きさと重さなら、それ相応の遠心力が掛かるはず、それなのに隙を一切晒さないどころか逸らされた瞬間にピタッと振り止めて別の攻撃に転じさせている

 それに、一番厄介なのは……


「くっ……」


 教会の内部の家具が乱暴に破壊され、宙を舞う

 そこから生まれた木屑、埃が視界に映る情報量を増やし、対処に一瞬のズレが生じる

 そこに氷の壁を創ろうとしても、不純物が少し入るだけでイメージと現実にギャップが出る

 それが強度という面に多大な影響を与える


 急ごしらえの近接技術は、いともたやすく瓦解した


「うぼぇ!?」


 しまった……意識が能力に集中しすぎた……


 宙を舞う感覚と痛みが身体を支配する

 それでも気を緩めてはいけない

 現状の把握と次手の組み立てを直ぐに……


「──できるかぁ!!」


 半ば無理やり創った氷の鎖で天井につるされているシャンデリアに絡まらせ、ターザンのようにして一時的に距離を取る

 その行動を咎めるように投げられた十字架は間一髪で脇に逸れ、天井を貫いて外に飛び出していく


 武器を一つ失った事を気にも留めていないのか、大きく踏み込み、宙で揺れているマサミチの元へ人間大砲が飛んでいく


「がぁっ!!」


 踏み込んだ地面は割れ、装飾としてひかれていた絨毯は糸くずになって姿を消した

 その踏み込みの強さは〝常盤の雫〟の教会全土を揺らし、そこに怒れる大司教(ウルル)がいる事を示した

 あまりの速さに空中を駆ける黒い線と化したウルルは怨敵の首に手を掛ける……はずだった


「──っぶなぁ」


 蚊の鳴くような声がウルルの下から聞こえる


 足に緑色に絡まっているツタに引っ張られ、ソラに受け止められる

 二人は会話もなしに走り出す


「!?」


 それは玄関に向かってではなく、むしろ中部に向かって

 その行動は怒りで我を失いかけているウルルにとって奇妙な選択だった




「馬鹿! ホントに馬鹿!!」


「ごめんって……でも、時間は稼げた……よね?」


「だけどさぁ、もっといい方法があったって!」


「これしか思いつかなくって……」


 とりあえず道なりに走り続けるソラとマサミチ

 二人の会話の内容は的を得ないものではあったが、二人の間で意味はは伝わっている


 こうならない事が一番良かったんだけど……なってしまっては仕方ない

 オーニアスからの情報をフルで使ってギリギリ逃げ出せるかどうか

 その前提条件に至るまでは僕達次第だ


「……来た!」


 廊下の横幅を削りながら大きな鉄が風を切って飛んでくる

 それはウルルが既に近くまで来て二人の位置を捕捉した事に他ならない


「四季・冬式 昇流氷(しょうりゅうひょう)!」


 床に面している足から魔力を流し、巨大な氷塊で十字架の側面を撃ち、弾き飛ばす

 走るために動かしていた足を止め、こちらに向かってくる敵を迎え撃つように魔力を高める


「それじゃあ……」


「手筈通りに……」


 一歩足が地面につく毎に速度を増していくウルル


「「勝とう!」」


「殺す!!」


 再度、マサミチとウルルが向かい合う

 だがそれは、最初のように向き合う形ではなく

 互いがぶつかり合う形で

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