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転生先で女の子を救ったら人生が変わった  作者: アンディオス
六章 一枚のページを捲るために
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第五十六幕 大司教との会合

 全てが霞むほど大きな大木

 名を世界樹(ユグドラシル)


 その傍ら、一際大きく地面が隆起している場所がある

 その場所には他の場所にはそこまで見られない緑が生い茂っており、生命の息吹を感じさせる

 その森とも言える規模の緑の中に、純白の建物がある


 綺麗に舗装された道を歩きながら辺りを見回す

 ソラの家の周辺を取り囲んでいる森と同じくらいの魔力を感じる

 脇に生えている樹木からは不自然に変化しつつも醜くない木の実が生っていたり、民家ほどの太さを持ちながら僕の上背にも満たない大木

 辺り一面が不可思議で、何かのテーマパークにでも来たような感覚だ


「あともう少しで着くんだったよね?」


 地図とにらめっこしながら前を進む少女、ソラに問う

 まっかせてと大見得を切った上でこのありさまなので不安を覚えるのも仕方のない事だろう


「うーん?いや、え~っと、あっ……え?」


 不安である


「ソラ、ちょっとそれ貸して」


 ソラの持っている地図を借り、よくよく見ると


「上下逆さだ……そりゃあ迷う訳だよ」


 さかさまになっている地図を元通りにして、今一度地図を見る

 そうすると、僕らの目的地が進んでいる方向と真反対にある事に気が付いた

 ……まぁ空が木で埋め尽くされてて目印になる建物が見えなかったから仕方ないか


「こっちみたいだよ、着いて来て」


「恥ずかしい……」


 それにしてもソラが方向音痴だったなんて、初めて知った

 まだまだ知らない一面もあるんだな



 教会前にて


「ここか……綺麗だね」


「そうだね……すごいや」


 目の前にある建物に、思わず声が出る

 雪の様に真っ白で綺麗

 そのうえで全く汚れが無く、心身ともに浄化されている様な感じもするほど神々しい

 世界樹の葉の隙間から漏れる太陽光が教会を照らし、より一層綺麗に見える


「あら、そこで何をしてらっしゃるのですか?」


 建物の凄さに圧倒されていると、教会の中から誰かが出て来た

 着ている服を見る感じシスターだろう


「すみません、邪魔ですか?」


 今更ながら自分の立っている所を見ると道のど真ん中

 そのうえで扉の真ん前にいるのだから迷惑千万極まりない


「いえいえ、もしかして何か用事が?」


「あ、はい。ウルル・ペルテネウスという人に会いに来ました」


 その名前に反応してシスターさんの眉がぴくっと動く


「失礼、あなたは何者ですか?」


「あっえっと……」


 あれ、何処にやったっけ


「はい、コレ」


 自分のポケットの中を探しているとソラがある物を差し出す


「これは……なるほど、歓迎させていただきます」


 うまくいったようだ

 僕が持ってると思ってたけどソラが持ってたんだった

 オーニアスに貰った小さな十字架

 これを見せるだけで会えると言っていたから貰ったのだが、ここまでうまくいくものなのか


 数分ほどたった頃、先ほどのシスターさんが小走りで戻って来た


「ウルル大司教様はこちらです、着いて来てください」


 という事でついて行ってるのだが、中まですごいとは……恐れ入った

 外装で感じたイメージを全く壊さない内装

 〝美〟が詰め込まれたような場所だ

 背筋が自然と伸びてしまう


 ソラの方も物珍しさに目を輝かせ辺りを見回している

 時々見える銅像やシャンデリア、観葉植物などの綺麗なものが視界に映るだけど満面の笑みを浮かべている

 表情筋が痛くなるんじゃないかってくらいには笑みが張り付き続けている

 楽しそうで何よりだ


「到着しました。どうぞお入りください」


 玄関部分から入って約十分ほど歩いたところにある一室

 途中に見えた他のどんな部屋よりも大きな扉だ

 一目で一番偉い人がいる場所だと分かる


「ありがとうございました」


「いえ、それよりも、どうか大司教様のご機嫌を損ねわぬようお気を付けください」


 シスターさんに言われた一言でオーニアスの忠告を思い出す


『彼女は世界樹を神として崇め、信仰している。それはもはや狂気に等しいものだ、〝狂信者〟と言っても差し支えない。彼女の前で世界樹に対する不敬を口にすれば最悪死にかねん。十分に注意してくれ』


 改めて思い出すと怖いな

 よし、気合を入れよう


 大きく息を吐き、重い扉を押し開く



 あっちの世界で社長とかが座ってそうな机と椅子の向こうに一人の女性が座っていた

 さっきまで一緒にいたシスターさんと同じ服装を身に着けており、大司教感はあまりない

 それでも優雅で凛とした佇まいに顔が強張るのを自覚する

 それと同時にちょっとした疑念が湧く


 目は瞑っているんじゃないかってくらい細く、もはや黒い線みたいだ

 クリームみたいな色の長い髪が、彼女の背後にある大きな窓から差す陽光に照らされ輝いている

 包容力と言えばいいのだろうか、とにかく、悪い人の様な印象はない


 オーニアスの言っていたような人物のようには見えない

 それでもオーニアスが嘘をつく人だとも思えない

 やはり緊張してしまう


「どうしたのですか?もっとこちらへいらしてください」


 部屋の中に入るなり立ち尽くしてしまった僕たちを見て、ウルルが声をかける

 魔性の声だ、耳辺りが良い声

 何もしていないのに心を開いてしまいそうになる声

 その声に反応するように歩き出す


 たった一つの部屋のはずなのにすごく広い

 こういった広く大きい部屋だと豪華で、きらびやかに飾り付けられているものだと勝手に思っていたが案外違うようだ

 緑が多く、地味な印象と言うよりは自然を感じられるいい雰囲気の部屋だ

 ただ、何故か部屋の壁の両方に僕の背丈くらいはある十字架が置かれている

 装飾も何も施されていない質素な置物みたいなもの、なのか?


「さて、私に何の御用でしょうか」


 僕らが歩き終わった後、ウルルが早くも本題を切り出してきた


「オーニアス卿からの紹介状まで貰って来たのです、きっと〝世界樹の知恵〟への立ち入り許可を求めに来たのでしょう?」


「……!」


 何も言ってないのに目的を当てられた

 いや、まぁ分かりやすいか


「そうです。ウルル大司教様、どうか許可をいただけないでしょうか」


 僕が少し狼狽えている所にソラが口を開いた


「ええ、勿論いいですよ。して、何をするためにあの場所へ?」


 意外や意外、すんなりと許可をもらえた

 許可をもらえるのであれば何も隠す必要はない


「僕たちは──」


 という事で全ての事情を話した


「なるほど……しかし、にわかには信じ難い話ですね。純人がこの世界から元の世界に帰ったという事例は多くない、それに元の世界には空間に魔力がない、だから血液中にある魔力は自然に分解され、使えなくなるはずです」


「そうなんですか?初耳です」


 そういうからくりであっちの世界に魔力が無かったんだ

 知らなかったんだけど


「ええ、国家機密というやつなので、私とオーニアス卿、その他数名の貴族しか知らないことですので知らないのも無理はありません」


「えぇ……」


 それって言っちゃいけないんじゃないのかな


「あなた方が口外しなければ問題はありませんよ。それに、とりあえずですが事情は把握しました。許可に関しては喜んでお手伝いしますので、ご安心ください」


「ありがとうございます!」


 よし、許可がもらえた

 やはりオーニアスの言っていたことは正しかったようだ

 『うまく行きさえすればウルル大司教から許可を得るのは一瞬です。面倒くさい手順を彼女は好みませんので、速戦即決で許可をもらえると思います』と聞いていた

 その前に聞いた話とセットだとどうにもおかしく感じるが、結果良ければ全て良しだ


 許可の印として手の甲に一滴の血を垂らしてもらった

 手の甲に落ちた瞬間に血が馴染んで沁み込んだ

 とりあえずはこれで一か所目クリアだ

 次の場所、〝バリオス財閥〟へ行こう


「……失礼、一つだけ聞きたいことがありました」


 部屋を出る直前、ウルルに声を掛けられた

 彼女は机の引き出しからとある袋を取り出した

 見覚えのある袋だ


「これについて、何か知っている事はありませんか?」


 袋の中から丁寧に取り出されたそれは何時ぞやの木彫りの刀だ


「知ってますけど……なんでそれを持ってるんですか?」


 そんな僕の発言に、ウルルの細い目がカッと開かれる

 紫色の光の差し込んでいない濁った怖い目


「その質問に答える前に……何を知っているのか教えていただいても?」


「それは僕がご飯を食べた時の会計で使っ──」


 言い終わる前に身体の重心がブラされ転倒する

 ソラが転ばせたのだ

 だがその事実よりも恐ろしいものがある

 先程まで僕の首があった位置にウルルの拳があるのだ

 さっきまで座っていたはずなのに


「お前か……」


「は、え?」


 怒気を孕んだ声が鼓膜を揺らす


「その不忠な命、私が枯らしてしまいましょうか」


 訳も分からないまま唖然としていると、ソラが叫ぶ


「立って! 逃げるよ!」


 手を引かれ、扉を蹴破り外に出る

 一秒もたたない内に、背後からとてつもない破壊音と魔力の圧を感じた

 逃走劇が始まる

逃げている最中に、アルベリから貰ったあの木彫りの刀が世界樹の枯れ枝を使って造られた国宝級の宝だと知らされます

完全にアルベリのせいですね

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