第五十五幕 これから始まる
僕とソラは〝世界樹の知恵〟に行くことにした
その為にいろんな人から許可を取る
まずはオーニアスから許可を得ることにしたのだが、二日の休養を挟んだ
理由としては僕のメンタルケアだそうだ
短いスパンで色々な事が起きすぎている
その渦中に三か月くらい前まで戦いを知らない人間が居たのだ
休みらしい休みはチョーと過ごした時の三日くらいだろう
一様もう一つの理由があるが、今は気にしても仕方がない物だ
まぁ以下の理由から休みを取っているのだが……
「だからって僕に付きっ切りになる必要はないんだよ、ソラ」
簡易病棟の食堂の一角にて一人の少年が呟く
少年の腕を絶対に離さないようにしがみついている少女
正直嬉しいが片腕が使えないのは不便だ
「私がくっついていたいからくっついてるの」
彼女がこうしてくっついているのには理由がある
もう一人、僕の腕を掴んでいる少女に僕を取られないようにしているせいだ
控え目に袖をつまんでいる少女にマサミチは声をかける
「アカツキさん、もう体調はいいの?」
「うん」
淡白な会話だ
昨日からこうなのだ
訳を聞いても何も言わず、ただついてくる
少しの受け答えはしてくれるがそれ以上も以下もない
アカツキも記憶凍結が溶けて自分と向き合っているのだろうか
だとしても何で僕にくっついてくるのだろうか
少々の妨害を受けながらもご飯を食べ終わる
休養とは言ってもやる事はある
アルベリに会いに行くのだ
そうして訪れたのは冥界と呼ばれる刑務所のような場所のとある部屋だ
地下にある冥界だが、世界樹の近くに存在している事で根の恩恵をフルで活用できているらしい
死以外の付いた傷は後遺症もなく治る
だから拷問やらで情報を引き出したりするのに向いている、らしい
ソラから聞いた話だとそういう所なんだが……
「異質な雰囲気だね、スカイ」
フードを被って顔を隠している少女、ソラに向かって話しかける
スカイと言うのは偽名のさらに偽名だ
ソラの本名は僕も知らないが〝ソラ〟という名前も出来る限り伏せておきたいとのこと
そんなソラと僕は、ぶ厚い真っ黒な扉の前である人を待っている
キィと言う音と共にぶ厚い鉄の扉が開かれ、全身を黒で統一されている制服に身を包んでいる女性が出て来る
彼女はここ、冥界の〝副獄長〟のセビル・ウォーマルだ
「今は比較的安全だ、刺激をするなよ」
セビルに促され部屋に入る
僅かな空気穴以外に光の差し込むことのない廊下を進む
一歩歩くごとに足音が反響し、ちょっとだけ不安を感じる
外から見た感じすぐに部屋があるものだと思っていたのだが、すごく長い廊下がある
厳重だなぁ
「あ、漸くだね」
十分ほど歩き続けた頃、ソラが声をあげる
彼女が指差している場所を見ると、更に扉があった
重厚感のある扉だ
取っ手に手を掛けると力を入れる前に扉が勝手に開く
「すごいね、本当にこれだけで開くんだ」
「この仕掛け、ミエナさんが開発したらしいよ」
「そうなんだ……すごいな」
僕がここまで関心を寄せているのは、とある仕掛けだ
先程、セビルさんから渡された紙に指紋と一滴の血を垂らした
たったそれだけで一時的にパスが通るそうだ
どういう仕組みなのか、まったくわからない
重々しい音を立てて開き切った扉から部屋の中に入る
そこには椅子に腰を掛けているアルベリだ
「おう、二日ぶり」
「うん、二日ぶり。調子はどう?」
「良くはねぇなぁ。ひっさびさにやってるから疲れるぜ」
ぐったりとしたした様子で椅子にもたれかかっているアルベリは青い顔でため息をついている
聞いた話だとオーニアスの暴走してしまった食欲を破壊しているらしい
食欲を破壊って何なんだ……?
「まぁ、十分くらいは話せると思うぜ?」
「ありがとう、アルベリ」
「おうよ、にしてもお前なんか変わったか?心なしかすっきりしたように見えるぜ」
「……そうかな、まぁ……ソラのおかげかな」
あ、ソラが凄い機嫌よさそうになってる
わかりやすいなぁ
「よし、じゃあ行ってくるよ」
「おう!」
既に仕切りの前に立っているソラの元へ向かう
見る限りじゃ真っ黒なカーテンにしか見えないのだが特殊な膜らしい
これもさっきの血の仕掛けで素通りできるらしい
もしここまで無許可で侵入出来たとしてもここは絶対に通れないらしい
もし中に入るのなら壁を掘るか許可を得るかの二つだ
一歩、膜に向かって足を踏み出す
膜に触れた瞬間、壁に貼られたラップみたいな抵抗が身体の前面を包むが、すぐに貫通し通り抜けれるようになった
ちょっと面白いな、今の感覚
「ん、ああ、ソラ様とマサミチ殿か」
幕を通り抜ける感覚に口角をあげていると、オーニアスが僕たちが来た事に気づいた
「……!?」
変な事を考えていたから気づかなかったが、部屋の至るところがボロボロになっている
オーニアスに至っては重々しくて太い黒の錠で壁に固定されている
錠の隙間から見える肌にも痛々しい傷が見える
「オーニアスちゃん、大丈夫?」
「問題ありませんよ、ソラ様。私の事よりも、何か用があるのでは?」
傷の事や今の状況を何も気にしていない様子のオーニアス
ソラの心配は僕も感じている事でもあるが、事前に聞いていた話があるからこそ無駄な時間はかけられない
オーニアスの為にも、アルベリの為にも、そして僕たちの為にも
「オーニアスさんに頼みごとがあってきました」
「はい、私にできる事なら何でも手伝わせていただきましょう」
説明後
「ふむ……私の方から許可をもらっておく事は出来ますね。ですがやはり〝常盤の雫〟と〝バリオス財閥〟から許可を得られるかどうかがネックですね」
全ての事情を説明し終えると、オーニアスが顔を伏せる
先程、説明をしている最中に聞いたことなのだが、あの雨の日にオーニアスとグレイは〝世界樹の知恵〟に行く予定だったそうだ
間が悪かったというやつだ
「そうなの、私はその二つの事を良く知らなくてさ、何か気を付けたほうが良い事ってあるかな?」
ソラが助力を乞う
それに対してオーニアスはあることを伝える
「……そうですね
私から言えることは──」
「──ですね。ですが、最短でも数か月、最悪一年はかかると思います」
「それでもいいよ、好きな人のためになる事なら何でもやってあげたいからね」
「なっ…………ソラ様、見ない間に成長成さって……!」
なんだか変な雰囲気になってしまったな
それに面と向かってではないけど好きと言われるとムズムズする
返事は今はいらないって言われているから返事を返してないだけで、僕の想いはまだ伝えられてない
僕がちゃんと僕と向き合えて、自信をもって生きて行くことと向き合えた時、ソラに好きだと伝えるのだ
僕がちゃんと考えて出した結論だ、これをちゃんと遂行できるように頑張るつもりだ
「おい、マサミチ、ソラ、時間だ」
「あ、もうか……それじゃあ、オーニアスさん、ありがとうございました」
「ありがとねー!」
にぱっと笑みを浮かべたソラにオーニアスは苦笑する
「ええ、今度会う時は必ず力になります。ご武運を、ソラ様、マサミチ殿」
「「はい!」」
気合を入れた返事をしてオーニアスと別れる
オーニアスに言われたことを忘れない内に早く行こう
僕とソラがこれから行くのは〝常盤の雫〟
そこにいる大司教 ウルル・ペルテネウスに許可を取りに行く
何が待ち受けていようと、覚悟はできている
ここからだ、ここから頑張って行こう
だいぶ更新に時間が掛かってしまった……申し訳ない




