第五十幕 スピード解決
「落ち着け猟犬、お前が暴れて苦労するのはこっちなんだ」
ギリギリ目で終える速度で四方八方から飛びかかって来る同期にため息は出る
さっきから傷が増える一方だ
……指が二本逝かれたか
まあ、コイツのおかげで仕事がさぼれるからいいか……とはならない
正直こっちの方が断然嫌だ
傷が出来るのも汗水たらして頑張るのも嫌いだ
だが、不幸中の幸いだな、仕事で使ってたからちょうど良く蓄ってる
「おい、メルク。どうせいるんだろう、十秒稼げ」
バックステップを取り、虚空に手を添える
そうすると景色が歪み、一人の男が姿を現す
「──っち。借し一だからな」
「黙って働け、俺はまだお前からあの件の借りを返してもらってない」
「……っち」
舌打ちを付きながら懐からナイフを取り出しているのを見て、レリエも準備に取り掛かる
その準備で何をするのか悟ったのだろう
ミエナがある物を渡してきた
「何だコレは」
「新作さ。君のはさ、ばらけて非効率だから一点に集めれるようにサポートしてくれる魔道具を造ったんだぁ。試作品だからテストも兼ねてって事で、よろしくねぇ」
「一様礼は言っておく」
手渡されたよくわからない魔道具を腕につけ、充電を始める
身体からあふれ出る電気が髪を逆立たせる
なるほど、案外良い物だなコレは
いつもは蓄めている間にニ十パーセントは漏電するのだが、漏れた電気が一定の距離までは成れると制御されたようにこちらに戻ってきて、蓄めなおされる
「っち。ちんたらしてんなよ、レリエ。この状態はほぼ俺の能力が意味をなさねぇのは知ってんだろうが」
「わかってる。二秒経ったら横に跳べ」
「っち」
空間に水を浮かべ、それを足場に立体的な攻撃をしているオーニアス
その攻撃の軌道を読むように避け続けるメルク
だが新たに生成された水の足場が片足を捕え、身動きが出来なくなる
その好機を逃さないようにオーニアスが飛びつき、右足を食いちぎる
足が片方なくなった事でバランスを崩したメルクは後ろ向きに倒れる
その倒れたメルクを食べる為に大口を開け、飛びつく
「ガァァァァァ!?」
オーニアスがメルクの首元に歯を突き立てる刹那、雷鳴がオーニアスを貫いた
横向きに墜ちた様な落雷が、暴走したオーニアスの意識を狩り取る
オーニアスは黒い煙を上げてメルクの上に倒れ込む
「っち。眩しかったし重い、零点だ。コイツをとっとと退かせ」
下敷きになったメルクは心底嫌そうな顔で助けを求める
そこにミエナがどこからか取り出した白い布をオーニアスがに被せ、包む
「おい、何で俺ごと包んでやがる。っち、とっとと出せ、おい」
「聞こえないねぇ、はっはっは」
「っち。クソが」
楽しげに笑いながら足も回収し袋の中に入れている
多分あれも新しい魔道具なのだろう
ふぅ、とりあえず問題は解決したか
なら俺は仕事に……
「まぁ待ちなよ、レリエ」
「テレイズか、何だ?」
肩に手を置き自分の動きを制止させた女に問いかける
その問いにやれやれと言うように首を振る
「オニャースの狂水で痛覚が逝ってるだけなんだから治してから行きなさい」
「いや、俺は──」
「治してから、行きなさい」
「早くしてくれ」
有無を言わさない圧に腰を下ろす他ない
昔からそうだ、命に関わる関わらないに関係なく誰でも治していってたからな
それでついた二つ名が〝聖女〟だって言うんだから面白い
他人の色恋沙汰を見るが好きな変人で、思ったことをすぐに言うから貴族に殺されそうになったこともある奴のどこが聖女なんだ
治療されてくっついていく自分の指を見ながらそんな事を考えているとテレイズが治療の手を止める
「……なんか失礼な事、考えてるよね?」
「……いや」
「考えてるよね?」
「……はい」
「金取るよ?」
「それは勘弁してくれ」
はぁ、この圧は何処で身に着けたんだかな
まぁテレイズが圧をかける時は全面的に俺が悪いんだが
「はい、治ったよ」
「助かった」
さっきほど失くしたばっかりの指がすぐに戻って来た
喰われたんじゃなくて吹き飛ばされただけだったからすぐに戻ったが、メルクはそうはいかないだろう
手を合わせてメルクを安否を祈る
その場での緊急治療以外だとテレイズは容赦なく金を取るからな
足なら何百万か飛ぶだろうな
……あの光、ライトは何処かに行っていたのか?
世界樹の方向からまばゆい光がこちらに向かって飛来する
埃一つ立てない優雅な着地を決め、一人の女の手を引いてテレイズの方まで連れていく
見たことがある、確か救護医院と開発局を掛け持ちしている……何て名前だったっけ?
「コッコ! ただいま到着しました!」
ああ、コッコか
緑髪の眼鏡の印象しかなかったから名前が出てこなかった
と言うか、なんで一般隊員なんて呼んだんだ?
「対象者五名の記憶凍結を開始します!」
記憶凍結……そういえば珍しい下層出身の概念系の新人って事で一瞬有名になっていた奴か
確か記憶処理や抽出で使えた奴だったはず
とりあえず、起きてるあの二人は気絶させといたほうが良かったよな?
自分の記憶にいまいち信頼がおけないがとりあえずと言う感じでマサミチとアカツキに微弱な電気を流し、気絶させる
ちゃんと倒れないように支えたから平気だろう
「流石にもういいよな、テレイズ」
「うん、後は全部任せといて」
頼もしい限りだ
騎士団にいてアイツの優秀さを知らない奴はいないからな
はぁ、ため息をつきたくなるが仕事に戻ろう
あの、地獄にしか思えれない最悪の場所、冥界に
五十話分達成!
まだまだこれからでっせ!




