表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先で女の子を救ったら人生が変わった  作者: アンディオス
五章 楽しいお泊り旅行?
50/63

第四十八幕 過去の遺恨

「さて、(わたくし)たちも行きましょうか」


 そう言い、裏口に手をかけて外に出る

 家の外の世界を押し流さん勢いで降る雨と雷

 ただ、さっき降られた時とは違い違和感を覚える


 その違和感の正体を確かめるようにオーニアスは能力を使う


狂犬強奪(ドッグ・フード)


 口を開け、外に流れる雨を入れる

 雨を取り込み、能力効果で分解する


 オーニアスの持つ能力の中で、ラーフィット家相伝の能力は四つの内二つを持っている

 四つの内、アルベリは〝破壊〟と〝蓄積〟の二つ

 オーニアスは〝強喰(きょうしょく)〟と〝狂水(きょうすい)


 今回使用しているのは強食

 効果は食べて吸収する事

 その効果が適応されるのは〝魔力〟だ


「この雨、能力ですね」

「……ならば先日お伝えした件でしょう」

「でしょうね」


 昨日、アルとじゃれあった後、グレイから伝えられた情報

 アカツキと言う純人からマサミチ殿に伝えられた事

 追っていた奴がオーニアスを狙っているかもしれないから気を付けて、と言う内容だ

 なぜ(わたくし)達が知っているのか、それは彼女が純人だからだろう

 ラーフィットにメイドが一人しかいない理由

 それはグレイの優秀さにある


「糸に反応は?」

「三です」

「了」


 彼女の能力〝糸〟変化系と概念系が合わさった極めて支配系に近い能力

 館の至るところに見えない糸が張られている

 その糸は体温、魔力、音を感知し館全ての情報を一人で捌く事が出来る

 例え能力で姿を消していても、音を消していてもナニカがいる事を感知出来る

 故にラーフィットは彼女だけで事足りると判断し、裏切られる可能性や情報を抜かれる可能性を捨てるために全てのメイドを解雇したのだ


「起こりを感じます、一度離れましょう。これは〝包む〟タイプです」


 その言葉を信じ、大きくバックステップを取る

 ラーフィット邸から少し離れた別の貴族の邸宅に着地する

 そこには雨が降っておらず、降水の範囲を見る限り意図的に創られた能力の雲による雨だ

 そんな事よりも、アレは何だ


 黒く、赤い大きな〝口〟が我が家を飲み込んでいる

 能力による召喚なのかと普段なら多少なりとも動揺していただろうが、グレイが包むタイプだと言っただ

 それがわかっているから問題ない


 グレイを一瞥し、その場に留まらせる

 もし何かあった場合の保険だ


 足場が別の貴族の家の屋根である事すら忘れ、力の限り踏み込む

 一息で家を飲み込んだ口に近づき、宝剣を抜き、斬り上げる


「ガァァァァ!!!」


 真っ二つに割れたどす黒い口から大量の液体が流れて来る

 血だろう

 (わたくし)の大好物だ


血潮の猟犬(ブラッドハウンド)


 開く限りの大口を開け、ごくごくと血を飲み込んでいく

 喉を潤した血が身体に力を与える


 いい濃さだ、質も良い

 これならあの一太刀で斬り壊せるだろう


「ふっ!」


 分厚い皮膚のような物を斬り抜き、内側に存在する結界の核を傷つける

 噴出した大量の血と一緒に、結界の魔力が流れ出て、結界が破壊される


 この間僅か二秒の事だ


 切り拓いた結界の入り口を強引に押し広げ足を踏み入れる

 片足を突っ込んだ瞬間、空間が歪むのを感じた


 なるほど、空間由来の概念系……いや、この感じ〝座標〟のズレ

 空間操作か


 どこにいるのかわからない敵を警戒しつつ全身を結界の内側に入れる

 途端に意識が持っていかれそうになる

 空間に漂う催眠効果のある魔力が身体の自由を奪おうと組織を満たしていく

 これが結界に付与された恩恵だろう

 だが、そのような小細工は(わたくし)には効かん


 何も関係のないと言わんばかりにズカズカと結界の中を進む

 すると何やら笑い声と音が聞こえた

 この醜気に当てられて誰かが狂っているのだろうか?

 そう思いつつ剣を構える


 進んだ先には見覚えのある人物が立っていた


「ジョルト……なんで貴様がここにいる」

「──なんだ、やはり居ったか。しくじりおって反抗者共め」


 ジョルト・プリズン

 かつて凍極の大賢人が世界の彼方へ封じ込めたとされる上位精霊だ

 一度だけだが(わたくし)も面識がある

 人の負の感情を糧にする〝魔王〟として世界から忌避されている奴

 その恐怖も憎悪も喰らい続け、封印が解けそうになったことがある

 その討伐に行った際のたった一度だけ会った


「貴様につけられた傷、今も残っておるぞ?哀れな最強よ」

「……(わたくし)も、(わたし)も同じだ、貴様につけられた癒えない一生の傷、忘れたとは言わせんぞ」


 魔王討伐、それは多くの被害を出した、歴史に残る最悪の悲劇だ

 その時私と同じく隊長だった者は軒並み死に、同期組の副隊長達も多くの傷を負った

 私が一番強かったのに、私が一番有効打を与える手段を持っていたのに

 私が一番、誰よりも傷ついて戦うべきだったのに


「貴様の顔、もう一度のこの眼に収めれるとは思わなかったぞ! ジョルトォォォ!!」


「それは我のセリフだ、外界で力がまともに出せなかったからこそあの程度で済んだのだ! 我が世界、獄界(プリズンエデン)に入り、生かして返してもらえると思うなよ! 小娘がァァ!!」


 閃光が走る剣を瞬きの間に六度振る

 その全ての剣撃が振り切ることなく止められる


 精霊に能力は存在しない

 全て加護に集約されている物だ


 ジョルトは〝制限〟だ


 速度の制限、威力の制限、込められる魔力の制限

 先ほどの連撃を止めるのに使ったのはこの三つだろう

 かつての私はメイショウさんの協力で突破したが今の私にそのような手段はない

 ならばどうするか


 制限を突破するだけの圧倒的な力でねじ伏せる!


 防御に回す魔力を捨て、攻撃の威力と速度に全振りする

 耐久は、私の素と鎧に賭ける事にした

 何かを気にしていてはコイツには勝てない


 何度も攻撃を振る

 その度にジョルトの傷が増える

 変わりにオーニアスの身体に打撲の跡が増えていく


 青あざが増え、血を流し続ける


 それでも止まらない

 攻撃の手は緩めない


 腹にめり込んだ拳が容赦なく身体の骨をへし折る

 だがやはり攻撃は最大の防御だ


 歯を食いしばり剣の腹で顎を打ち抜く


 振り抜いたままの体勢で、両手で思い切り剣を握り、魔力を込める

 持ち手が砕けんばかりの力と魔力を、金色の刃が全て吸収する


 それに相対するジョルトも只ならぬ雰囲気に身体の装飾を捨て、自らの心臓を抉り出す

 身体の上で握りつぶし、紫色の血くを浴びる


「今ここで貴様を打ち砕いてくれよう! 受け継がれし秩序の天命、その高貴なる魂を指し示せ! 真銘解放 善悪を量る天秤(ミカエル)!!!」

「墜ちよ、ここは地獄の園。誰を許すでもなく、誰を裁く事もない。祖は、地獄を束ね愉悦に浸るもの、我を誰と心得る。霊名開帳 悪を統べる物(ハデス)!!!」


 光と闇が満ち、獄界を形成している結界と、能力で移された座標が崩壊を始める

 一つの世界の崩壊の中、最強と最悪がぶつかり合う

 出し惜しみなどない一撃の真っ向勝負


 光に満ちた善悪を量る天秤(ミカエル)を天高く掲げ、全力で振り下ろす

 殺意を込めた全力の一撃を


「甘いわ!」


 眼前に迫る剣を前にハデスは右手を出して応戦する

 その右手に渦が生まれ、アルベリ、ソラ、チョーが姿を現す

 それを見て、オーニアスの剣が勢いを殺す


「がはっ……」


 剣を振り下ろす寸前のオーニアスの身体をハデスの左腕が抉り取る

 左半身を失い、オーニアスの身体から鮮血が噴き出す

 だが、この程度で負ける(死ぬ)のなら、彼女は最強には成っていない


「──ガァァァアアア!!」


 残った右手に確かに握られている善悪を量る天秤(ミカエル)を逆手に持ち替え、ハデスの右半身を切り落とす

 気を失って倒れている三人を狂水で包み、持ち上げる

 同様にマサミチ、アカツキを浮かせ、結界の外に放り出す

 

 わかっている

 (わたくし)の役割はここで命を散らす事ではない

 皆をソラ様を助け出すことだ

 私情を挟むな!


飢渇の淵(ハングウルフ)!」


 流れていった自分の血も、切り落とすハデスの腕から出ている血も、全てを喰らう

 喰らって力に変える

 そしてすべてを押し流す


死の鐘を鳴らす鎖(デッドエンド)!!」


 大量の血が混じった狂水を口から出す

 レーザービームの様なその水は、魔力で強制的に圧っされ凄まじい水圧をもって敵を貫く


 傷口という純度の高い魔力()の源泉からほぼ全ての魔力を吸われ、存在そのものが危うくなっているハデスを容赦のない水の槍がハデスの身体ごと、核を貫く

 身体を保つ機関が壊れたハデスは自壊していく


「二度と生まれる機会を与えてもらえると思うなよ。貴様のすべてを糧にしてやる」


 ハデスの命の灯を、吸い込んで嚙み砕いて飲み込む

 主のいなくなった結界は、依り代となる魔力を失い、座標は元に戻る



「さて、次は貴様らだ。腹の足しにはなってくれ」


 結界の外、グレイと交戦している三人に向け発した言葉

 オーニアスの眼からは理性の色が消え、飽くなき暴食の衝動が牙を剝く

 腹をすかせた獣はわずかに残った理性を押し流すように飲み込む

 

 飲み込んでしまった

 もう満たすものはない

 血肉を喰らう他この衝動を満たす事は出来ない


 力なく開かれた口からは滝のように涎が溢れ、しまう事を忘れた舌と同じように身体も地に近づていく

 失った腕を補完するように〝液体のまま固体になった〟狂水を含めた四点を付き、低い姿勢になる


 その場で意識のある者は恐怖を感じるしかなかった

 戦いにおける相手としてではなく、敵味方の区別もない

 全てを餌として認識している化け物が攻撃の体勢に入ったのだ


 荒い息遣いの中、言葉を発するように口が動く




 「イ タ ダ キ マ ス」




 そして、次の瞬間一人の首が飛んだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ