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転生先で女の子を救ったら人生が変わった  作者: アンディオス
五章 楽しいお泊り旅行?
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第四十五幕 お風呂場での語らいあい

「いい湯だな~」

「ね~」


 水の滴る音が心地よいリズムで響き、視界を埋め尽くす心地の良い湯気が身体の芯から温める

 肩まで浸かった温水は透き通っている


 ラーフィット姉弟の喧嘩が終わった後、アルベリと風呂に入ることになった

 浴場は大を二個くらいつけてもまだ足りない程の大きさをしており、なんかすごかった

 だって風呂が何種類もあって彫像みたいなのとか湧き出してるタイプの風呂もあったんだ

 語彙力が疲れと一緒に吹き飛ぶのも仕方のない事だろう


「嬉しいな」

「?」


 僕の横でとろけきったような火照った顔のアルベリがポツリと呟く

 その言葉の真意がわからない僕は首をかしげる


「俺ん家さ、人数が少ないんだよ。親父もお袋も仕事でめったに帰ってこねぇし、姉弟は姉貴以外いないからさ、ずっと俺だけで風呂入ってたんだよ」


 軽く笑ったような、そんな投げやりで寂しそうな声が広い浴場に響く


「だだっ広いだけのこの風呂が、この家がずっと虚しくてな。姉貴も騎士の仕事があるから帰ってこない日の方が多くてよ、基本的に俺とグレイだけなんだ。からっぽで、広いだけの家がよぉ、俺を現してるみたいでよぉ。」


 相槌を打つでもなく、静かに聞き続ける僕に、アルベリは「なぁ」とこちらに向き直る


「俺が何て言われてるか知ってっか?落ちこぼれの番犬、お荷物、最強の弟。俺も頑張ってんのに誰も俺を見ない、見ようとしない

 相伝の能力も継いだ、それに形だけは長男、つまりは正式な跡取りだ。そんな俺が、誰にも期待されてない俺が家なんか継げねぇよ」


 心底悔しそうに、恨めしそうに水面を叩く

 静かだった水面にどんどんと波紋が広がっていく

 壁に当たって、跳ね返って、打ち消しあって波紋は消える


「姉貴は、姉ぇちゃんはさ、最強になるべくして生まれたんじゃないかって思うくらい完璧なんだ。しょうもない俺みたいに悩んだりしなくてさ、憧れだったんだ。目標でもあった。でもよ、強くなればなるほど俺と姉ぇちゃんの()()が解るようになって、もうどうでもよくなって我武者羅に、俺で居続けたんだよ。なぁマサミチよぉ」


「お前から見た俺は何者だ?」


 心の膿が吐き出されたような問いに、僕は真っすぐ返す


「君は君だよ。アルベリだ。ラーフィット家のアルベリなんて僕は知らない。僕が知ってるのは優しい頼れるアルベリ君だけだよ」


 僕のこと(過去)を知って、怒ってくれた

 僕はそんな優しくて、人のことを慮れるアルベリ君しか知らないからね


「……そうか、ありがとな」

「なんで僕なんかに感謝なんかするんだ」

「……すまねぇな。せっかくの良い湯に水を注すような話をしちまってよ」


 何かから解放されたように背伸びをして優しく僕の背中を叩く


「俺、聞いたぜ、ソラの事助けたんだろ?やっぱお前はかっこよくて、すげぇな」

「ありがとう」


 そこからしばらくの沈黙が場を支配する

 相変わらず聞こえている水の滴る音が妙に心地よくて

 昔、おかしくなる前の父さんが言ってたな

 裸の付き合いはいい物だって

 僕はずっと、アルベリの事をすごい人だって神格化してたけど、彼にも悩みがあって、弱み所がある

 そう考えるとなんだか対等に感じる

 僕は知らないけど、これが友達ってやつなんだろうか


「なぁ、マサミチ」

「なに、アルベリ君」

「っは、もう君はいらねぇよ。ってかもともと要らなかったんだがな」

「……なんで?」

「友達だからな」

「──そっか」


「なぁ、マサミチ」

「なに、アルベリ」

「覗きにいかね?」

「……冗談?」

「マジだぜ」


 何言ってるんだいきなり

 いい感じの雰囲気だったのに思いっきりぶち壊すじゃん


「ここの真横に女湯があるし、そこの天井の方からギリ見えるんだよ」

「僕は嫌だよ?」

「釣れないこと言うなよ、一回だけ一回だけ」

「えぇ~」


 その一回だけで色々と失いそうな物があると感じるのは僕だけなのだろうか


「ソラは案外着やせするタイプだと思ってるからさ、何がとは言わんがデカいと思ってんだよ」


 む、確かにその説は……?って駄目だ、釣られるな


「グレイは邪魔だからって理由で潰してるって前聞いたから、以外と良い物持ってるかもだぜ?」


 ぐっ……なんで僕はちょっと惹かれてってるんだ

 ムッツリなのか、僕は

 さっきまでのしんみりした空気は何処へ……


「姉貴は鎧で隠れちゃいるが胸も腹筋もすげぇんだ。興味、湧かないか?」

「────これっきりだけだからね」

「流石、お前も男だな」


 少しコソコソと作戦会議をして、いざ実行


 氷の柱を足元から出して足場にする

 足裏が寒い事を除けば問題は無し

 いざ楽園(ユートピア)へ……!


「「へぶっ!?」」


 ひょっこり出した頭が一瞬で打ち抜かれ、下にあるお湯に音を立てて落下する

 男特有の変なノリにあてられておかしなテンションになっていたマサミチの頭が、砕かれた足場の氷で冷やされる


 男湯と女湯を隔てている壁をぶち破ってソラとオーニアスがやって来る

 タオルを身体に巻き、笑顔で指を鳴らしているソラに男二人の表情が強張る


「なにか、申し開きは?」


 何時かの時、アルベリがソラの家の玄関を叩き壊した時と同じような怒りの気配がひしひしと感じる

 いつの間にか正座の姿勢になっている僕の身体

 成る程、これが恐怖と言う感情か

 すっごい怖い


「まてよ、そんなに怒ることは無いだろ! それに見られて減るもんじゃ──」


 ドゴン

 確かにそう聞こえた

 僕の細い腕の二倍、いや三倍は逞しいオーニアスの腕が真横で風を切り、一気に冷や汗が出る

 ギギギと固まった首を動かし後ろを振り向くとアルベリが浮かんでいるのが見えた


 乗るんじゃなかった……

 何が「これっきりだから」だ

 数分前の僕を誰かぶん殴ってくれ


「で、マサミチ君は?」


 何を言っても後の祭り

 せめて誠実に、嘘偽りなく言って逝きたい


「……その、出来心と言うか……ごめんなさい」


 正座の体勢から流れるように土下座の体勢に移行する

 多分僕も罰から逃れるすべはないだろう

 南無三……!



 ……あれ、何も感じない

 気絶でもしたのだろうか


 ゆっくりと開けた目のすぐ近くに、少し不機嫌そうなソラの顔があった


「あのバカに釣られてやったんだよね?元気になってくれたのは嬉しいけど、二度目は無いからね! そこの馬鹿にも伝えといて!」


 ゴスッと鈍い音を立てて僕の頭に手刀が繰り出される

 あまりの痛さに涙を浮かべ、蹲る

 ペタペタと歩く音が耳の端から聞こえる

 少し後に音が止まり、壁が魔力で復元される音が聞こえる

 

 反省しました……



 女湯にて


「ホントにバカなんだから、もう」

「愚弟はともかくマサミチ殿まで協力しているとは」

「多分だけどあのバカが唆したんでしょ」


 文句を言いながら、湯船につかる


「ホントに──ふぁあ~」


 文句の続きを言おうとして、止まる

 やはり風呂と言うのは一種の能力だ

 入るだけでその日の嫌な出来事も汚れと疲れと一緒に洗い流してくれる

 私の家の風呂じゃここまで気持ち良くない

 ユグドラシルの源泉垂れ流しは伊達じゃない


「にしても、ソラ様はマサミチ殿のことを大層気に入ってますね」

「……そう見える?」

「はい、もしかしなくても好意を寄せているのではと思うくらいには」

「……そんなにわかりやすい?」

「いえ、好意に関してはさっきの一言を聞けば誰にでも理解できます」


 さっきの一言……?

 ッ!!


「もしかして、口に出てた??」

「ええ、それはもうはっきりと「言ってくれればいつだって見せてあげるのに……」と言ってましたよ」


「$&%#)’>‘@:-^・’3────」


 恥ずかしさに顔から火が出たのではと錯覚する

 言葉にならない悲鳴を出し、顔まで風呂に浸かる

 

 私は何を口走っているんだ

 ただの淫乱じゃないか


「まぁまぁ、落ち着いてください」

「ボボボボボボボ──」


 少し後


 だいぶ落ち着いた

 落ち着いた、うぅ


「まだまだ子供のまんまだと思っていたのに色気づいて……嬉しいですね」

「……もうやめてヨ」

「カタコトですよ?」


 オーニアスちゃんの目が獲物を狙ってる獣の様だ……

 前にこの目を見た時は二時間も拘束されたからなぁ

 将来はお父さんと結婚する―って無垢な頃の私が行ったことが発端だったんだけどね

 それにしても駄目だ、この話を続けてると熱が出る

 無理にでも話を切り替えよう

 恍惚とした、とまではいかないけどニヤニヤしてるオーニアスちゃんには強引にでも話をもっていかなければ……


「は、話は変わるんだけどさ……」

「……まぁ、良いでしょう。それで、何ですか?」


 よし、うまくいった


「マサミチ君の事なんだけど──」

「やはりっ!?」


 湯船の水を跳ね上げながら身を近付けて来る

 っく、何がとは言わないけどデカいから大量の水が……


「勘違いしないで……さっき喧嘩してた時にマサミチ君が言ってた事なんだけどさ」


 先ほどマサミチ君が言っていた言葉

 「僕は多分、この能力を持っていた人が使った、誰かの技を使わせてもらっているんだと思う」って言っていた

 ちゃんと全部を聞いた訳じゃないけど、なんとなく言わんとしていることが解る

 けど、どういう事なんだろうか

 遺伝するのは私たち亜人族の能力遺伝、以外は無いはずなんだけど

 きっとまだ誰も相伝術の事は教えてないはずなんだけど……


「──っていう事なんだけど、オーニアスちゃんはどう思う?」

「ふむ……」


 考えるようにして肩まで湯船に浸かり込む


 オーニアスちゃんは私なんかより頭もいいし経験もある

 だからちょっとはいい感じの考えが聞けるのかなと思うし


「少し、心当たりがない事もないです。明日、少し時間を見つけた時にでも確認しようかと」

「そう、ありがとう」


 オーニアスちゃんはきっと何かを思いついたのだろう

 なら何かしら答えを見つけてきてくれるはずだ

 信じて待とう


「あ、グレイ。貴女も入りなさい」


 いつの間にやら着替えを用意しに来ていたグレイを見つけ、オーニアスちゃんが手招きをしている

 多分断ることは無いだろうから三人で入ることになるだろう

 女子会のような物だ、少し楽しもう

 きっとマサミチ君もアルベリも男同士で楽しく遊んでいるだろう


 少し、長風呂と洒落込もう──

案外女性目線での話を書くのが難しいっ……!

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