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転生先で女の子を救ったら人生が変わった  作者: アンディオス
五章 楽しいお泊り旅行?
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第四十三幕 騎士団団長は愛されている

 さて、思いのほか早く終わりましたね


 会議を終え、今日明日の仕事を終え、帰り支度をしている騎士がいた

 騎士団の団長を任せられ、王直属の護衛の任を受けている彼女の仕事は多く、忙しい

 だというのに既に今日明日の仕事を終えている


 彼女は優秀だった

 そして優しかった


 現在の時刻はちょうど正午を回ったくらいの時間帯だ

 あまりにも早い

 それに護衛と言う職の都合上どうやっても明日の仕事は終えられない

 そこで彼女が取った行動は部下に仕事を投げる事だった


 誤解のないように説明をすると、丸投げをしている訳ではない

 むしろ今まで彼女は休みらしい休みを取っていなかったのだ

 それ故に彼女が「休暇を取る」と言い出したことで彼女の部下が張り切りだしたのだ


 他の部下が怪我や病気で休んだ時も、冠婚葬祭で仕事に出られないときも「ええ、まかせなさい」と二つ返事で仕事を請け負う彼女に、部下たちは小さくない感謝を持っていた

 今回の件で一番張り切ったのは彼女直属の部下であり、騎士団の副団長であるライト・クロクアローだ

 

 彼はずっと暇だったのだ

 実力が認められ、副団長の座に就き、これからの忙しくも充実した生活に期待をしていた

 だが現実は違った

 

 彼に回ってくるのは簡単な現場の視察や、団長の処理した事案の報告書の確認

 この二つだけだった

 彼はガッカリした

 騎士団の本部の仕事はこんなにも少なく、やりがいのない者だけなのかと


 彼がその認識を改めたのは団長室に初めて入った時だった

 仕事の少なさとやりがいのなさに憤りを感じていた彼は、世界最強と呼ばれている団長に直接指南を受けようと思っていたのだ


 戸を叩き中に入った瞬間に彼は絶句した

 広い部屋にぎっしり詰まった書類の山を黙々と一人で捌いていたのだ

 彼はついさっきまでの考えを改めた

 だがそれだけでは終わらなかった

 団長は彼の為に仕事を蹴って指南したのだ


 ライトはその一件から団長に対し崇拝とも呼べる信頼を寄せていた

 だからこそ今回、団長が休みを取ると聞きとても張り切ったのである


 その背景を知る由もない彼女、オーニアスは部下に恵まれたと嬉しい気分で帰路に就いた


 オーニアスはの家系には少し特殊な部分がある

 強い者が頭首になるという点だ


 貴族は血筋や家系を重んじる物だがラーフィットでは強さに重きを置いているのだ

 だから頭首に打ち勝ったものがよそ者であろうと頭首に据えられる

 勝ったという結果さえあれば頭首になれる

 そこに卑怯な過程などは問われない

 だからこそオーニアスはほとんど毎回、暗殺を仕掛けられるのだ


 今回はそのようなことは無かった

 運が良いな、などと思っていた


 彼女の部下が秘密裏に対処をしていたのは気づく由もなかった



 ラーフィット邸にて


 ラーフィット家には出迎えなどはない

 メイドが一人しかおらず、その一人もたった一人の主君に付きっ切りである

 貴族としては極めて異例であり、有力貴族の中でもこのような家はない

 だが、堅苦しい雰囲気はあまり好きではないオーニアスにとっては心地の良いものだ


 木剣の打つ音が響いている

 早めに帰ったつもりだったのだがもう着いていたのか

 

 門を開けると庭の方から芯の通った音が聞こえてきて、オーニアスの耳を優しく打つ

 荷物などはあまり持ち帰っていなかったので様子を見に庭に行く


 ソラ様がいるのだろうか?

 アルだとここまでいい音は出せないし、打ち合い手はグレイか


 久しぶりに()()に合うのが楽しみで、自然と早足になるのがわかる

 数日前少しの間だけ会ったが、あれだけでは足りない

 もう少し話がしたい

 前会った時からさらに成長したソラ様ともっとお話がしたい

 その一心で庭に向かう


 そこの光景は自分の思っていたものとは違うものだった

 氷の華のような髪留めを付けた少年がアルベリと打ち合っていたのだ

 案外様になっている

 相性がいいのだろう


 あれ、確かあの子は……

 

 記憶の中から当てはまる名を探しているとアルが私の存在に気づいた


「おーい! 姉貴! 何してんだー?」

「何でもない。少し考え事をしていてた」


 まずい、あの子の名前何だったかな

 あの時は久しぶりに会った喜びで記憶が薄い

 団長を任されている身として人の名前を忘れたなど(わたくし)の騎士としてのプライドが……


 記憶の渦の中を必死に探していると弟と一緒に少年も来た

 

「こんにちは。お仕事はもう終わったんですか?」

「ええ、部下が気を使ってくれまして」

「愛されているんですね」

「……ええ、私にはもったいないくらいですけどね」


 まずい、いい子過ぎる

 これほどまでに純粋な子がいたのか

 世の中もまだ捨てた者じゃないな、っとそんな事はいい


「それで、ソラ様はどちらに?」

「あ……えっと」

「む、何かありましたか?」


 言いにくそうに口ごもる少年に違和感を感じる

 ここにいるという事はアルも何か知っているだろう

 そう思い弟に目線を向ける


「ソラならあそこでへこんでるぜ。何でも教えようとした魔力技術をマサミチが一発で成功したのが相当ショックだったらしいぜ」

「ほう、ちなみに何を?」

「調と緩だ」


 ほお、見よう見まねですぐに使えるような物ではないのだがな、優秀なものだ

 それにアルのおかげで名前を聞き出す事が出来た

 確かユウガ・マサミチだったか?

 記憶にない以上純人なんだろう

 近頃、耳に挟んだ不穏な予言と関係がありそうな……


「あ~オーニアスちゃん聞いてよ~」


 む、ソラ様

 このことは後で考えればいいか

 部下たちが作ってくれた休みもあるしな

 今日は気兼ねなく休むとしよう


「ええ、何があったのですかソラ様」


 あれほどのテロがあった後だというのに静かなものだ

 胸騒ぎはするが、(わたくし)の部下は優秀だ

 信じておこう

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