第四十二幕 意外な才能と早すぎる帰宅
気持ちのいい快晴の中城下町を一直線に進んでいく馬車が眠りを誘うテンポで揺れる
普段なら気持ちよくお昼寝としゃれこむのだが……
僕を挟んで視線で火花を散らしているのが気になって寝ようにも眠れない
大体想像がつくのだが、多分焼きもちを焼いている……のかな?
そんなソラをアカツキがからかって現在に至る
アカツキに関しては昨日いろいろと話をしたから人となりはわかってる
八重道場と言う剣術道場の師範代をやっていたというすごい人だそうだ
それと、詳しくは語らなかったけど彼女は過去の事も教えてくれた
その時の一件がきっかけで人の視線が怖くなったのだとか
だから彼女は目隠しをして極力視線を感じないように過ごしているのだとか
辛い事があったのだ、それに寄り添う事が大切だと思ってアカツキのことを見ないように話していたらなぜか気に入られた
そんなこんなで目的地に着いたのだが……
「なんか涼しいな。ねぇ、二人とも」
「「ごめんなさい」」
謝る二人の手には左右両方の服の袖が握られていた
引きちぎられた僕の服の袖が
「怒ってないんだよ?別に、ただこの服最後の一着だったってだけで」
ヒートアップしすぎたアカツキとソラが綱引きみたいな感じで引っ張り合って、千切れてこうなった
この服はこっちの世界に来た時に着ていた服だ
まぁ幸い千切れただけだから縫えば直るからそこまで怒る必要はない
ちょっと寒くて恥ずかしい以外問題はないんだけど……
「だぁはははは! ひぃ~面白れぇ」
滅茶苦茶問題があった
偶然玄関から出てきたアルベリと鉢合わせしたのだ
すっごい恥ずかしかった
アルベリの大声で僕たちが来た事に気づいたグレイが来るまで中々に恥ずかしかった
すぐに縫ってもらうと面白くなさそうにアルベリが見てきたけどあんなに笑われるのはもうごめんだ
「長旅、というわけでは御座いませんが。ようこそお越しくださいました」
「ここは乱世から代々続いてきた一族。力こそ最大の美徳とされ、数多くの武人が生まれた地。ラーフィット家だ。自分の家みたいにくつろいでくれや」
ちょっとした問題がありつつも僕らは無事に、ラーフィット家へ到着した
「おぉ……」
敷地に入ってから何度目かの感嘆が漏れる白の大理石を主とした雄大な建物が僕を圧倒する
初めてユグレシア王国に入った時とはまた別の感動だ
それぞれのオブジェクトにもこだわっているのだろう
とっても綺麗だ
特にこの板、生き生きとした力強さに引き込まれる
「おっ、それを見るたぁ解ってるな」
「これは?」
「歴代頭首の拳型だ。歴戦の猛者達の力の象徴を世界一固いとされている世界樹の枝木に遺しているんだ。特にこの一番大きい奴は初代頭首、グリンド・ラーフィットの型だ。すげぇだろ?」
そう言われて見た型には、他のどの型よりも深く、明確に拳の跡がついている
手を伸ばしてその型に触れると、その硬さがありありと伝わって来た
それに、なんか揺れてる?
「気づいたか?その揺れはな、グリンド・ラーフィットの殴った時の振動の残りなんだぜ」
「本当に……?」
「マジだぜ、ロマンだろ?」
「うん!」
「これは?」
「おっ、コレはな……」
「じゃあこれは?」
「そいつは……」
目につく全ての物に惹かれる
歴史が具現化されたような遺物がそこら中にあるのだ
歴史好きなら興奮しないはずはない
ちなみに庭だけで二時間ちょいも時間を食ったのはまた別のお話
いつの間にか家の中に入ってたソラ達と合流したことでちょっとした交流が始まった
ちょっと思ったのだがチョーは人懐っこすぎないだろうか
初対面のアルベリにもグレイにも撫でられていた
グレイがチョーの事を気に入ったのか膝の上にチョーの特等席が生まれていた
肝心の招待してくれたオーニアスはどこに行ったのかという話にもなったのだが被害の報告書の作成や予算会議などでてんてこ舞いらしい
それでも日付が変わる前には帰ってくると言っていたらしい
所謂シゴデキというやつなんだろう
オーニアスもそろってから食事にしようという話になったので、久しぶりにソラに稽古をつけてもらうことにした
「マサミチ君はもう私の訓練とか要らないと思うんだけどね。だってあとは自己研鑽でどれだけ能力や魔力を極めるかの世界なんだもん」
「そういうものなの?」
「そうだよ。あ、でも魔力技術とかなら教えられるよ」
「魔力技術……?」
なんだか聞いたことがあるようなないような
なんとなく感じた違和感をよそに、ソラの説明が始まる
魔力技術とは
まず前提として魔力とは血である
魔力が少なくなれば貧血に似た症状になるため、血として考えられているらしい
厳密には違うようだが
なんとなく自分で解釈した感じ、カル〇スの原液と薄めた状態の液みたいなもの、なのかな?
血を原液のまま使うと、濃くて美味しい(強い威力を出せる)がすぐになくなる
逆に原液として使わなければ、長持ちするが味は薄くなる(弱くなるけどたくさん使える)
そういえば前に聞いた能力の話と似たところがある
適性の有無だ
魔力技術の全部の技術を習得できる者もいればそうでない者もいる
もし全部の技術に適性のない者がいるのならば、それは新しい技術に対する適性のあるものだと言われている。真実は知らないが……
話は逸れたが、この世界には魔力を応用し、疑似的な能力の様な物として扱う技術がある
獄 集 緩 命 調| 浄の六つ
〝獄〟 筋肉の繊維に直で大量の魔力を流すことで、通常の魔力強化よりも質の高い強化を施せる技術
デメリットとして筋肉に負荷がかかりすぎるから半端な肉体だとすぐにガタが出るらしい
〝集〟 空間に漂っている魔力(ユグドラシルから溢れ出している魔力)に自分の魔力を与えることで質量を持たせることができる技術
デメリットとして透明だから気を付けていないと事故るらしい。足場に使った後にまた同じ場所を通ったら頭をぶつけるんだとか
でもあんまりそのケースはないらしい
空間に存在する魔力はユグドラシルから漏れ出ている物だ
常に新しい魔力が出続けているから一度足場にしたくらいだとすぐに霧散する、だからすごいハイスピードの戦いで起きるか起きないかくらいの些細なデメリットだ
〝緩〟 衝撃を吸収することに特化した魔力の膜を作る技術
デメリットらしいデメリットはないが全身が膜につつまれているイメージをし続けなければいけないので能力戦での運用はあまり期待ができないらしい
聞いた感じ着地とかに使えそうな気がするのだが(トランポリンみたいな感じで)
〝命〟 自然治癒力や回復力を活性化させる技術
出来がどれほど悪くてもかすり傷程度はすぐに塞げるほど強力なんだとか
デメリットは使用された人は眠くなるらしい
血行が促進されて眠くなったりするのだとか
ソラは交感神経が云々かんぬん副交感神経がどうこうと言っていたが全く理解できる気がしなかった
才能がないのだろうと思っていたがないことは無いらしい
〝調〟 気配を空間に存在する魔力と同調させる技術
僕の治療の時に使われていた技術らしい
デメリットとしてちょっと気分が悪くなるのだとか
自分の魔力に合わせるって感じより空気中の魔力に合わせるって感じだから変な気分になるのだとか
全部使ったことがないから他人行儀に感じてしまう
〝浄〟 身体の中の毒素を魔力で押し流し、浄化するための技術
トイレの詰まりを取るラバーカップみたいだなと思ったらすぐに理解できた
毒、か
覚えておいて損はないかもな
それで、ソラはこの六つの技術の内〝調〟と〝緩〟を教えてくれるそうだ
この技を習得するのにはユグレシア王国三千年の歴史が──とか言っていたけど、説明を聞いた時に感じたイメージやちょっと見せてくれたお手本で基礎が出来てしまった
調は深呼吸をしている様な感覚と言えばわかりやすいのだろうか
自然の空気に身を預けている感覚でいるとできた
緩はそのまんま膜が身体を包んでいるイメージで出来た
これが才能か……と自惚れるつもりはないがやはり嬉しい
思いのほかすぐにできてしまいやることがなくなった
またアルベリにこの家の観光の付き添いでもと思ったのだが
なんと早い事にオーニアスが帰って来たらしい
……早すぎない?
マサミチは元の世界で来ていた服の事は案外気に入ってます




