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納得のいかない結果

 血で染まった身体を奮い、戦場を駆ける


 依然として状況は悪い

 だけど相手が油断してくれたおかげでいい一撃が入ったし、結構休めた

 一番ラッキーだったのはファラド―の耐久力なかったって事だな


「オイオイどーした!? ふらっふらじゃねぇか!! 優しく介抱してやろーか?」

「くっ五月蠅い!!」


 無数の衝撃波が体の表面で炸裂する

 幾度となく振動にさらされた身体は、内部から悲鳴を上げている


 まぁ痛てぇけど、我慢できねぇほどじゃねぇ

 かといって同じ過ちも繰り返す気もねぇ

 さっきの技を受けて完璧に理解した

 アイツの能力は音じゃない

 〝振動〟だ

 分かっているからと言って対処できるわけでもないが、一度だけなら勝機がある

 その為にも


「元気一杯で行かせてもらうぜ!!」


 大きくバックステップを踏むことで民家の近くに移動する


 繊細な攻撃やらなんやらはできなくはないが性に合わない

 それに俺の目指してる人達は優秀なんでな

 人の避難はとっくに終わってるんだ


 振動っつったって大きな物質をすぐに破壊できるほど強力な物じゃない

 もしそうだったらとうの昔に死んでいるからな


「プレゼントだ……ぜ!!」


 斧を民家にめり込ませ、家ごと持ち上げ、投げ飛ばす

 支えを失った家は空中分解しながら瓦礫の雨としてファラド―に向かっていく


「馬鹿力めッ……!」


 瓦礫の雨をすり抜けるように避けていく

 

 避けるのは織り込み済みってな

 なんども避けれるもんじゃねぇだろ


 辺りを巻き込むようにして何軒も投げ飛ばされていく

 あまりに早いペースで投げ続ける

 家の投擲は家の密集している住宅街が更地になるまで続いた


「ははっ、お色直しが済んだみたいだな?」


 肩で息をし、深い傷を数か所に受けている男を見ながら煽る


 見た感じ右足に木片が刺さってるから早い動きはそうできないだろう

 投げる(もの)ももう無いし、物理で攻めるか


 地面を力一杯踏み込み、蹴る

 一歩一歩が地面を抉り取るほどの力が込められている

 斧を片手に持ちながら風のように走り、距離を一瞬で詰める

 

疾駆の鉄槌(エル・トロイ)

 重厚な鉄の斧があり得ないほど機敏に振られる

 風を斬る音が絶え間なく続く

 威力ではなく速度に特化させ始めたアルベリにファラド―は防戦一方になる

 時折出す一撃も、苦し紛れのカウンターに過ぎない

 そんなモノでは、赤鬼(アルベリ)は止まらない


演奏の間隙(レスト)!」

「ッ!?」


 攻撃と攻撃のわずかな間に割り込むように振動が起きる

 その技はアルベリを止める為の技ではない

 

 地面に大きなひび割れが起き、足を踏み外す

 速度を出すための深く強い踏み込みが仇となった

 

 ファラド―はそのわずかなリズム(チャンス)を逃さない

 足に突き刺さった木片を引き抜き、意図的に血を噴き出させ、アルベリの視界を奪う

 引き抜かれた木片はアルベリに向かって加速するが、バガンと言う音を立ててへし折れた


連弾音響(スラ―レガート)!!」

「~ッ!!」


 絶え間ない振動が身体の内側にねじ込まれる

 あらゆる臓器が揺れ、骨が揺れる

 先ほどまでの無茶な踏み込みの代償が、アルベリの足の骨を折った

 苦し紛れで振った斧をファラド―が避けた事で、それ以上の被害は免れた


「おぇぇえぇ……」


 三半規管が揺れ、平衡感覚が崩れる

 気持ち悪さが喉を襲い、口に残っている血反吐と一緒に吐き捨てる


 クソ、まずった

 足が逝ったのは相当まずい

 また、アレが来る

 少し離れた位置にいるファラド―

 折れたこの足じゃ技を出させる前に止めれねぇ


 ファラド―の魔力がどんどん勢いを増して高まっていく

 先ほど、アルベリを倒した技を撃つために……

 

 このままじゃ負けるな

 もうプライドだなんだと言ってられねぇな


 意識的に斧を持つ力を強くする

 アルベリが出せる最大出力の魔力が斧へと注がれていく


 さぁドカドカ喰いやがれ、餌は俺の魔力と血だ、たーんと喰いやがれ


 一振りしていくごとに斧の刃が白く輝いていく

 本来ならこの斧は振るたびに炎を出すだけの斧だ


 炎を出すのに魔力を使う必要がない、ただそれだけのありふれた斧

 その程度の斧が神器だなんて誰も呼ばないさ


 代々ラーフィットの者だけ、その中でもこの斧を継いだ者にのみ教えられるこの斧の能力

 火力は高すぎるしデメリットに対するメリットが釣り合っていないらない技

 だけど今、この状況においては最適の技になる


 赤金色の波動がアルベリから立ち上る

 離れていてもその波動の力強さがありありと伝わってくる


「馬鹿が、同じ過ちを繰り返すがいい。狂瀾の円舞曲(ボレロ)


 そのタネはわかってんだよ

「ウオオオオォォ!!」

 喉に付与した破壊の力が空気を震わし、微弱ながらにファラド―の技の威力を抑える


 声を張り上げた勢いのまま斧を振り上げ、さらに魔力を込める


 ただ、その魔力は攻撃にための物じゃねぇがな!!

 満腹とはいかねぇが腹八分くらいはいっただろ!!


「真銘解放!! 天悪の炎(ベリアル)!!」


 アルベリの魔力を燃料に莫大な熱が辺りを照らす

 あまりの熱量と魔力量が複雑に絡み合うことで巨大な火柱が形成される

 天を貫く巨木に届く勢いで




 長い様で短い間、轟轟と燃え盛る火柱は与えられた全ての餌を使い果たし消滅する


 辺り一帯が更地となり、物の焼き焦げた匂いと微かな緑の匂いだけが辺りを支配していた


「くはっ。どうだぁ?実際に伝説を味わってみた感想はよぉ」

「う……く……」


 さぞ痛かろう

 かく言う俺も反動でタダで済んじゃいねぇがな

 至近距離で大規模の爆発が起こったようなもんだ

 形が残ってるだけでもすげぇ野郎だ

 案外防御力も悪いもんじゃなかったって事だな

 とりあえずトドメを──


「……それが噂に聞く神器ですか。すさまじいですね」


 アルベリの横を通り過ぎるように誰かが歩いた

 ボロボロのフードで全身を包んだ異様な気配の人物だ


「あぁ?誰だ、てめぇ」


 近くに来るまで気配に気づかなかった

 連戦か?

 余力は残ってるがちとキツイな

 

「名乗るほどの物でもないんでね。勿論戦う気はないよ、そんなもの魅せられたらね」


 白いハンカチの様な物をひらひらと揺らしている

 白旗のつもりか……?

 まぁ逃げるんだったら追うつもりはあんまりないが……あの野郎はそのつもりはないらしい


 地に付した状態で、フードの人物の白旗を取り下げるように掴む


「ふざけ……まだ、負けて……」


 虫の息で啖呵を切ってやがる

 どんだけ負けず嫌いなんだよアイツ

 

 戦闘に向けて武器を構えたアルベリを無視するかのように小声の会話が行われた


「……まぁ待て。────」

「……嘘、だろ?」

「本当だ。俺たちからしてもこれ以上の損失は見過ごせない。悪いがまた今度だ」


 ファラドーを担ぎ上げ歩き始める


「正直言うと置いてってくれた方がありがたいんだがな」


 油断した部分があったにしてもファラドーは強敵だ

 今のうちに仕留めとかねぇと後が面倒だ

 フードの奴がどんな能力かわからない以上突っ込むのは得策じゃないがな


「私としてはそれは勘弁してほしいですね。騎士団の隊長格達との戦いの後なんだ、休みたい」

「……ちっ行けよ」

「それはどうも」


 歩いて去っていく背中を俺は見守ることしかできなかった

 身近で感じてきて、目標にまでしてきた強者達

 それらを複数相手取ってあそこまで……

 嘘かどうかわからねぇがアイツの魔力を見て俺はできるかもしれないと思ってしまった

 強さを間近で見たわけじゃないが、多分俺が万全の時でも勝ち目があるかどうか


「あーくっそ。勝った気しねぇ~」


 結局のところ武器だよりで勝ったようなモノだ

 地面に倒れ込み深く息を吐く


「大丈夫ですか?アルベリ様」


 倒れた俺を覗き込むように声をかけてきたのは見知った顔だった


「おっグレイじゃねぇか。遅かったな、どこ行ってたんだ?」

「少々ゴミ掃除をば」

「なるほどな。まぁいいや、いつもの頼むわ」


 グレイの糸とその糸で作られた包帯で傷を治療してもらう


 中層の街中で行われた戦闘は人的被害はなかったものの建物などの被害は随一だった

 どこからでも見えるような高火力の炎の柱

 その実態を知っている地上最強の姉に怒られるのはまた別の話



 城下町・中層 街中の戦い 勝者 無し

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