笑う赤鬼
「賑やかだなぁ。お祭りかってくらいだな」
目の前にたたずむ男に話しかける
「お前の顔、見たことあるぜ。A級犯罪者の欄に乗ってたからな」
「僕は犯罪者扱いなんですね」
「?」
「いえ、今から死ぬあなたには関係のない話です」
「へぇ。誰が死ぬって?」
「アルベリ・ラーフィット、名家の長男に生まれながらも未だ王国騎士試験にすら合格できていない半端もののお前の事だ」
「はっ耳が痛いぜ。実際合格できてないもんなぁ。でも、それとこれとは話が別だぜ?」
斧を構え戦闘態勢をとる
「ファラドー・バイエー。世紀の反逆者?だっけな」
視線が鋭くなるのを感じる
ファラドーバイエ―、音関連の能力者ってこと以外わからん
こういう時にグレイがいてくれると助かるんだがな
まぁ無いものねだりは辞めとこうか
「会話は終わりだ。腐った世界を壊すための礎となれ」
ファラド―はいつの間にか取り出していた角笛に口を当てる。
大音量で耳を壊してくる系か?
中途半端な情報が逆に邪魔だ
それに考えてる時間はないぜ?俺よ、先ずは勝つために動け
「先手必勝ォ!! 破壊の鉄槌!!」
大きく振りかぶった斧は炎をまといながら加速していく
当たれば一撃で倒せる、超火力の技で相手の出方を探る!!
「音響和音」
角笛が吹かれたことによって発生した空気のクッション
そのクッションはアルベリの一撃を止めるのではなく、無力化する
「……なるほどな。器用じゃねぇか」
音響和音っつたか?アレに当たった斧を通じて身体に振動が伝わってきやがった
攻撃するんなら力を入れる、その力を無理やり解いたっていう事か
能力の都合上そういうのは効かないと思ってたんだがな
それに今ので分かったが大振りはダメだな、相手に猶予を与えちまう
能力を使わせる前にぶっ飛ばせれば楽なんだがそうもいかないよな
「案外素早いんですね。そんな大きな斧を持っていれば愚鈍な動きしかできないものかと思っていましたが」
「はっ、俺のは特別製なんでな」
「……その大斧、噂程度ですが聞いたことがあります。太古の時代、まだユグレシア王国が存在していないときにあった戦争〝百年戦争〟において一騎当千の活躍をしたとされる武将〝狂犬〟グリンド・ラーフィットの神器、でしたっけ?」
よく知ってんなクソが
だったらこの斧のデメリットも知ってんな
出し惜しみも意味なさそうだしな
「大正解だぜ。当たった褒美だ。じゃんじゃか攻撃ぶち込んでやっから覚悟しとけよ!!」
「それの特性を知ってて好きにさせるわけないでしょう」
ファラドーは角笛に魔力を込め、目一杯吹く
──バァァァァァァァァァァァ!!
あまりの音量に建物の窓ガラスが割れ壁にひびが入る
それほどの音量を間近で受けたのならただでは済まない
普通なら
「ぅうるっっせぇぇなぁ!!」
耳から血を流しながら斧を奮う
軽々と避けるファラドーに一撃、また一撃と攻撃を繰り出す
「馬鹿の一つ覚えですね」
「あぁん?なんだってぇ!? よく聞こえねぇなぁ!!」
頭がガンガンしてるしもう何も聞こえない
けど、ぶっ飛ばす相手さえ見えてたらそれでいい!!
「もういっちょぉぉ!!破壊の鉄槌!!」
「低音の連震」
一歩進むごとに微弱な振動が身体のいたるところにあたる
「利かねぇぜ!!」
そんなちゃちな技如きで怯むかよ
「……狂瀾の円舞曲」
口パクで何言ってるかわかんねぇけど、相手の攻撃はほぼほぼ痛くねぇし、攻めあるのみだ──
「ぐぶっ」
なんだ?視界が赤い、口からは血の味がする
訳が分かんねぇ、くっそ
「音信微動」
「っぁ??」
身体は脳の制御を失い地面に倒れる
「チェックメイトだ。アルベリ・ラーフィット」
んだコレ
手に力が入んねぇし焦点が合わねぇ
立ち上がろうにも体が言うことを聞かねぇ
「脳が揺れてるんだ。意識があるだけ怪物だな」
ファラドーはうつ伏せに倒れたアルベリに乗っかる
「愚者では勝てないんだよ。お前の様な力だけ、権力だけを持った馬鹿がいるからこの世の中が腐っていくんだ」
こぶしを握り締めアルベリを思いっきり殴りつける
「なにも理解しようともせず!」
右頬が拳に撃ち抜かれる
「勝手に理解した気になって!!」
さらに拳が降りぬかれる
「お前らがいなければ!! ベルノは!! 彼女は死ななかった!!」
容赦のない拳が、過去の憎悪が乗った拳がアルベリを痛めつける
何分も恨み言を吐き続け、その度にこぶしを奮った
殴り終わった頃、肩で息をしながら独り言をつぶやく
「やはり僕の考えは間違っていないようだ。やはり愚かな貴族は、全員僕が殺──ぶっ!?」
倒れていたアルベリに胸倉を掴まれ、先程まで殴っていた頭が顔面にめり込む
「っああ。ちんたらやっててくれて助かったぜ。お陰でいろいろ治ったぜ」
「な、なぜ貴様まだ生きている!?」
鼻を押さえながらファラドーが叫ぶ
「っは。簡単なことだよ。あの程度じゃ俺は殺せねぇ。それだけだ」
頭から血を垂れ流しながら立ち上がる
全身が血に濡れながらも不敵に笑う
その姿はまさに赤鬼の様だった




