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命の恩人

  「恩人様、気が付つきましたか?」


  「ん……?」

 聞き覚えのない大きな声で朦朧とした意識から覚醒した。

  「ああ、よかったぁ目が覚めたぁ!!」


 寝起きの耳に女性特有の高めの声が響く。

  「う……五月蠅いな……ボリュームをもう少し落としてくれないかな?」


 自然と口からこぼれた言葉にやらかしたと思ったが返答は思っていたものとはずいぶん違った。

  「なんのですか?」

  「声量のことだよ……」

 少しの違和感を覚えつつも気を失う前のことを思い出そうとする。

  「声量のことでしたか、失敬失敬。」

 寝起きの目をこすりながら、僕に対しての呼称と、僕の寝かされているベットの傍らにいる女性についての質問をした。

 「ていうか、恩人様って誰のことですか? それとあなたは誰ですか?」

 今までの会話? で感じた疑問を女性に投げかけた。

  「恩人様は恩人様ですあなた以外にいません。そして私はソラ・リーフィアです恩人様。」

 名前からして外国人なのに日本語が流暢すぎる。

 それに日本人では見かけない翠色の目に、髪は金髪であり、僕の偏見だと確実に外国の人の容姿をしている。

 でも、そんな事は今いいんだ。

  「それはそうと、僕は恩人なんて大層な呼ばれ方をするようなことしてないよ。僕は死ぬつもりだったんだ。そこで君を見つけた。いるとは思ってないけど、少しでも善行を積んでいれば神様にも融通が利くんじゃないかって打算的な考えのもと君を助けた。最低なことを言うかもしれないけど別にだれでもよかったんだ、本当に誰でも……。」

 ソラという女性は僕の話を真剣に聞いていた。

 人助けに理由なんていらない、それなのに僕は意識的に〝人〟を遠ざけた。

 拒絶したんだ。

 関わったっていい事なんてないんだから……。

 それなのにどうしてこの子は僕のことをそんなに真っすぐ見つめて来るのだろうか。

 数秒ほど考える仕草をした後、ソラは口を開く。

  「……恩人様は少し勘違いをしています。どんな理由があろうと、恩人様が私を助けてくれたことは事実です。そして私はあなたのおかげで今、あなたと会話し、感謝を伝えることができているのです。それに、うちにはどんな小さな恩にも報いる!! と言う家訓があるんです。あなたは自分のことを過小評価しすぎかも、です。」

 堂々としたような、それでいてどこか自信のないような、そんな声で言葉を紡ぐ。

  「そうか……なら恩に報いる一歩目として部屋から出てってくれないか? 少し一人になりたいんだ。」

 そういいながら僕は彼女を部屋の外に押していった。

 押し出すときに「恩人様ぁ!? ちょっとぉ!! まだ話したりませんって!! 聞いてますか!? 恩人様ぁ!?」とか言ってたけど全部無視して、申し訳ない気持ちで一杯になる。

 けど、今彼女と顔を合わせてしまったら泣き出してしまう気がした。

 僕とあんなに真剣に話をしてくれて肯定してくれた、そのどちらも僕には初めての体験だった。


 だが彼女に感じていた罪悪感は次の日には吹き飛んでいた。

 彼女に気まずいという感情はないのだろうか?

 来る日も来る日も朝一番に「恩人様ぁ!! あっさっでっすよ~!!」と起こしに来るし、話をしたいのか、彼女が暇になるとすぐに僕の部屋まで来て話をしに来る。

 そのあと僕に追い出されるまでが毎日の流れとして定着しつつある。

 僕はもともと不健康生活をしていたから朝に強制的に起こされるのはストレスでしかなかった。

 それに腕の怪我が治るまでの間、何もすることがなかった為ソラからいろんな話を聞いて暇をつぶしていた。

 今、僕のいる場所はユグレシアと言う場所らしい。

 世界樹ユグドラシルと言う御神木を中心に城や城下町があるらしい。

 ただ、今僕もいる家は城下町、というか国の外にある森の中にある。

 なんでも、ソラは自然に囲まれながら過ごすのが好きらしい。

 人目を気にせずにいられるのが好きなんだとか。

 それにソラ、彼女はとてもすごい。

 日課としてジョギングしているらしい。

 僕はそういった類のを続けられたためしがない。

 ただ……。

  「あの~……。」

  「はいっ!!恩人様なんでしょう。」

 僕はいつも通り、朝でも元気な彼女に少し劣等感を感じつつも会話を続ける。

  「毎日朝起こしに来るのやめてくれないか?」

  「いやです☆」

 どちらかと言えば僕は夜型なので、朝が眠くて眠くてたまらない。

 苦痛、と言うほどではないがなかなかきつい。

 ていうか拒否するの早くない?

 あと、あんまり怪我してる腕をペタペタ触るのをやめてくれない?

 まぁ

それはいいとして……。

  「……じゃあ恩人様って呼ぶのやめてくれないか?」

  「ん~なら恩人様の名前を教えてください!!」

 なんの代案にもなっていないんけど……まあ恩人様と呼ばれるよりはましかもな。

  「はぁ……僕の名前は唯我ユイガ 正道マサミチだよ。これでもう恩人様と呼ぶのやめてくれるかい? ソラさん。」

 彼女は僕がしゃべり終わると同時に顔を真っ赤にして飛び跳ねた。

  「やっと名前で呼んでくれましたね♪恩人様。」

  「……恩人様じゃないでしょ?」

 僕なんかに名前で呼んだだけで飛び跳ねるくらいうれしいのか……変わってるな、大半嫌な顔されるか無視なのに。

 本当に変わってるな……。

  「えーっと、ユイガ様と呼んだらいいんでしょうか? マサミチ様と呼んだらいいのでしょうか?」

  「どっちでも呼びやすい方でいいよ、それに様をつけて呼ばれるのに慣れないんだ。別の呼び方で呼んでくれると助かるな。」

  「わっかりました!!マサミチ君と呼ばせてもらいますね」

 堅苦しい敬語が抜けてきて自然と話せるようになり僕は、初めて本当の友人ができたような感覚だった。

 でも、まだ……ふとした時に思い出す、僕が自殺をした原因を。

 最悪の過去……人間という生き物の醜い心の、本質を。



ソラがマサミチの腕をペタペタ触っているのは怪我を治す為です。

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