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まさかの出会い

『き、決まったーー!! 今回もすごかった! 今回も強かった! 今ここに、また新たな歴史が刻まれたー!! 歴史史上初、七冠達成!! これが皇帝 アルドルフ・グラドーワだァァァァ!!!』


 


 凄かった、とても言葉で言い表せれない

 当たり前のようにすごいことをして、当たり前のようにそれを凌駕する


「どうっスか?見に来て正解でしたっスか?」


 特にすごかったのは何といっても近接戦

 足を砂にとられるている中で軸をブラさずにすべてを受け切る技術

 それに魔力の使い方も二人とも違った、けど何が違うのかまだ理解できそうにない


「……あのー聞いてるっスか?」


 使っていた能力は何だったんだろうか

 実況の人が言っていたのは確か鍛造、つまり武器を作る事か

 それにしても能力をうまく使える状況までもっていく

 そうすることで……


「てやっ!」

「ぐふっ!?」


 大会を見た感想を頭の中で反復していると横腹に衝撃が走る

 軽めの一撃ではあったもののちょっとびっくりした


「もう、余韻に浸るのはいいんスけど、チョーがいる事を忘れんで欲しいっス」

「ごめん……それにしても凄かったね」

「はあ、そうっスね。チョーもそこそこ強いっスけどあの人たちとは戦いたくないっス。相手にならないかも何で」


 そんなことを言いながら感想会の様な物を開く

 大会が終わり、たくさんの人がいる前で能力を使うと面倒ごとになるからだそうだ

 門番の人にも言われっけたな

 

 それにしても面白かったな

 元の世界じゃ娯楽なんてなかったから新鮮だ

 ここまで熱中して何かを見ていたのは本を読んでた時くらいだ

 また来たいな、今度はソラ達も一緒に



 少し後

「よっと」

 

 人通りがある程度マシになったのでコロシアムの上から降りた

 チョーに手伝ってもらっても良かったが、試合を見て生まれた想像力で能力を使ってみて降りてみた

 まぁ想像力って言っても足だけを凍らせてコロシアムの壁に張り付いて、歩く度に解除と凍結を繰り返すだけの物なんだけども

 まるで忍者の壁走りみたいなものかなと想像しながらやったら意外とできた

 着地は手伝ってもらったけどね


「マサミチさんセンスいいっスね」

「そう?」


 完全に除去しきれていない氷を春風で溶かす

 残しといても勝手に溶けるとは思うが一様


「やぁ、ちょっと失礼」

「えっと、何ですか?」


 氷を溶かし終えた頃に、フードを被った人が声をかけてきた

 なんだろうか

 能力を使っていたから注意されるのかな

 そう思っていたけどその人は違う事を話した


「その魔法具、もしかしてベンディル爺さんの所で買った物かい?」


 指をさしながらそう言ってくる

 指の示す先には確かにベンディルお爺さんの鍛冶屋で買ったプリズムがあった

 なんとなく気に入っているのでアルベリから見繕ってもらったツールポーチに入れていたのだが、なぜそれが気になるのだろうか


「そう、ですけどなんですか?」


 質問の答えを聞いたことで興奮したようにずいっと寄って来る


「どうだい! それはいい物だろう! 綺麗だろう!」

「えっあっはい。」

「気に入ってくれているかい?」

「そうですね、はい。」


 どんどん興奮していくフードの人物にたじたじになる


「いやぁ良かった! 私の芸術的感性が分かる人にようやく出会えたよ! 今日は運命の日だ!」


 がしっと手を取られ、ブンブンと振られる

 掴まれたことで感じた手の感触はゴツゴツしており、逞しい

 それに近づいたことで顔が見える

 あれ、この顔って……


「申し遅れた、私はアルドルフ。アルドルフ・グラドーワだ。是非君と話がしたい! お茶でもどうだろうか?」

「え、え?」


 まさかの出来事に開いた口が塞がらない

 先ほどまで激闘を繰り広げていた〝皇帝〟が目の前でお茶の誘いをしてきているのだ

 え?ホントに何で……

「まさか断らないだろう?さぁ行こう! 語りたいことがあるんだ! 奢らせてくれ!」

 わっはっはと上機嫌な様子で僕を連れていく

 あ、チョーは奢るという言葉に反応して涎を垂らしてる

 止めてくれたりは期待できないな



 無法区の喫茶店の個室にて

 すごく綺麗な喫茶だ

 無法区なんて呼ばれている場所とは思えないほど綺麗な老舗って感じだ

 冗談でもなんでもなくまた来たいとそう思える雰囲気のいい店だ

 それに個室というのもいい

 独特の雰囲気だがどこからともなく料理のいい香りがするのがまた良いな

 前で目をキラキラされている〝皇帝〟さえいなければ……


「さぁさぁなんでも頼みたまえ。この店を三万回買ったって私の貯金が尽きることは無いからな」

「はぁ……じゃ、じゃあこの人口魔獣の、何だコレ」

「ん?ああ、膾焙肉(かいばいにく)だね。この店のこれを選ぶとは、中々通じゃないか」

「そうなんですか?」

「ああ、薄切りの炙り肉の事さ、千年ほど前に確立された由緒正しき飼育法のもと造られた肉のね。それで?そのおチビちゃんは何を頼むんだい?ついでに奢ってあげようじゃないか」

「太っ腹っスね! もともとそのつもりでついて来たっスけど、ありがたいっス。じゃあ――」


 数分間ほど悩んだ末、チョーはほとんどの料理を頼んでいた

 運び込まれた料理はほとんど肉料理だった

 昨日も肉だったが肉というのはあまり飽きが来ないものだ

 菜食中心だったから肉が美味しくて美味しくて


「美味いっス美味いっス」

「そうだろうそうだろう?特にこっちの蒲焼きが美味しいのだがどうだろうか」

「これも美味いっス。コレ作った人は天才っスね」

「わかるかい?」


 チョーとアルドルフはもうすっかり打ち解けたみたいだ

 それはそうと美味しいなこれ

 機会があったらソラと一緒に来たいな

 

「君も気に入ってくれている様で何よりだ。それよりも本題なんだが、その魔道具のどこに惹かれたんだい?」


 正直言うとなんとなく気になって買っただけなんだけど、とても感想を待ち望んでいる様な人に「なんとなくです」だなんて言えない……


「あの~えーっと……」

「? ああ、感想は人それぞれだ、どんな感想でも私は嬉しい。だから君の忌憚なき批評を聞かせておくれ。」


 芯の真っすぐ通った声に思わず背が伸びる

 それに、こんなに真剣な人に嘘は付けないや


「なんとなくです。なんかビビっと来て、それで買いました」

「ふむ、では直感で買ったという事だね?」

「はい……」


 声色は変わっていないが圧を感じる

 圧迫面接ってこんな感じなんだろうか

 少しちじこまってアルドルフの様子をうかがっていると突然笑い出した


「あっはっは! いいじゃないか! 詰まる所、私の作品に運命的な何かを感じたのだろう?鍛冶師冥利に尽きるという物だよ!」

「運命的……はい、そうですね。これに日光が当たった時の虹がすごく綺麗で、惹かれました。」

「最っ高だねぇ君! それはずっと売れ残っていた私の処女作なんだよ。出来が良かったんだが中々人の目に留まらなくてね、私もずっと気がかりだったんだ。それに虹、それも人光ではなく自然光のが気に入ったのはお目が高い!」


 そこから熱の入った作品紹介が始まった

 なんでも試合で使っていた最高傑作であるパンドラと言う武具と同じくらい会心の出来だったらしい

 不定形を保たせるためにアレをこうしたとか、人光と自然光で光を違うものにするために何重にも加護を組み合わせて作ったのだとか

 ちなみに人光とはこのプリズム、正確には霊神玉(れいしんぎょく)というプリズムに魔力を通して光らせた時にでるのを人光と呼んでいるそうだ

 僕はこういった作者しか知りえない裏話などは好きなのでずっと話を聞いていられるのだが……


「……」


 何を言っているのか理解できずに自分の精霊のギルとガッシュと遊び始めてしまった(既に全部の料理を食べ切った)

 なので少し話の腰を折ってしまうが一度帰ろうか


「さらにこだわったのは人光に意味を持たせることさ、その人ぶ――」

「あのー話の腰を折ってしまって申し訳ないんですが、同伴者の子が暇そうにしているし、良い時間なので帰りたいのですが……」

「ん、ああすまない。つい熱が入ってしまったようだ。だが君はまだまだ聞きたいと、そういった顔をしているね?」

「まぁ、そうですね」

「明日、いや大体毎日はベンディル爺さんの所の公房にいる。是非また話を聞きに来てくれたまえ!」

「はい!」


 こうして僕とチョーは店を出た

 ご飯も食べてやることもなかったから宿にすぐ帰ったのだが……

 また宿に帰ったら置いてあったご飯を目についた瞬間に食べ始めたのだ


「まだ食べれるの?」

「ふぁひ。はへへふうひにはへへおははいと……ぐふっげっふ。食べれるうちに食べとかないと勿体ないんで」

「ああ、そう。それよりも喋る時は口の中空っぽにしてからにしなよ?」

「うっス」


 途中でむせてしまったチョーに少し注意をしてから寝室に行く

 チョーは食べ始めたらほとんどそこから動かないから放っておくことにした

 床で食べるのはどうかと思うけど彼女的には別にいいらしい

 

 それにしても今日は楽しかったな

 明日もあの鍛冶屋に行ってみよう

 また話がしたいしね


 そんなことを考えながらベットに身体を投げ出す

 ふかふかの枕が顔を包み、意識が薄くなる


 そうして今日が終わった

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