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予言?

 手が痛い。

 どうしてこうなったんだろうか。


 何が何だかわからなかったけれどもソラさん達が僕のことを助けに来てくれたみたいだ。

 それに気づく前に戦いになってしまった。

 能力をまともに使えない僕は足手まといで、ソラさん達の攻撃に全く反応できなかった。


 お荷物状態でずっとアキラさんに助けてもらってた。

 僕を庇うごとにどんどん傷ついていくのを見ると申し訳なさと無力感で潰れそうになる。


 アキラさんは僕に能力があると言った。

 アイゾメさんが言うには僕は恵まれた人間らしいと言った。

 支配系の能力者は珍しいのだと。

 正直に言うと嬉しかったがそれ以上に申し訳なかった。


 前の世界、僕は何もできなかった。

 何かできたはずなのに、何もできなかった。


 何も、しなかった。


 能力があったって僕には何にもできないと、そう思っていた。

 出しゃばらないように、迷惑をかけないように、静かに生きようって。


 でも違った。

 目の前でアキラさんが死にそうになった時まず一番に助ける事が浮かんだ。


 僕は戦う手段を持っている。

 僕は人を救う能力を持っている。

 恵まれている僕が何かを成さないでどうするんだ。

 

 そう思った時にはもう、アキラを助けようと飛び出していた。

 使えてるってソラに言われた魔力、僕はまだ意識して使えてない。

 使えるとしても調整もくそもない蛇口全開放式の使い方。

 そのせいだろうか、今は痛みの他に全身が虚脱感に包まれ目眩がする。

 咄嗟の事だったからイメージも実際に作れた氷の形もぐちゃぐちゃ。

 ぐちゃぐちゃの氷で滑らせた方にあった指がアルベリに切られた所辺りから記憶がない。

 痛くて痛くて、手を押さえてうずくまっていたら急に大部分の痛みが取れて、それから……。




「マサミチ様。大丈夫ですか?」


「えっ。ああ、うん大丈夫です。えっと、その。みんなで助けに来てくれたんですか?グレイさん」


「はい。マサミチ様はソラ様の大切な友人ですので。」


 そっか、それならよかった。

 とりあえず、ソラさんと話したいことが……

 そういえばどこに?


 探しに行こうと手をついて立ち上がろうとすると痛みと違和感でバランスを崩してしまう


「マサミチ様、貴方はまだ安静にしておいてください。軽いけがではないんです。」


 そう言われ痛みのある方の手を見てみると、左手の親指を残してほかの指がバッサリと切られていた。

 傷口を見ただけで痛みがぶり返してくるような、そんな生々しい傷跡が見える。

 指がないから違和感もすごい。

 そうやって違和感に顔をしかめているとグレイが切れた指を持ってきた。


「傷、こっちに向けてください。完全ではないですが縫います。」


「お願いします。」


 手を縫ってもらっているとき、グレイの手元に違和感を覚える。


「針、使わないんですか?」


「ええ、針を使うとマサミチ様の肌を傷つけてしまいますので。」


「その糸は能力なんですか?」


「はい。今は通常の糸より肌になじみやすい糸を使っているので、神経をつなげることはできませんが違和感をなくすことはできます。」

 そんなことまでできるのか……。

 ん?でも確か……。

「確か能力って想像力で広がるんじゃなかったですっけ?」


「はい。ですが想像力だけではどうにもならないことも世の中にはあるんです。私が神経まで紡ぐ為にはその人の神経を寸分狂いなく理解していないといけません。」


 それは確かに無理だな。

 医学のイの字にも触れてこなかったにしてもグレイさんの言っていることが無茶で無理難題なことはわかる。


「ですが、それが可能な人を一人、知っています。」


「ええ!?」

 もしそれができるのなら超人なんてものじゃ括れない領域にいる人だ。


「それはそうとソラさんは何してるんですか?姿が全く見えないですけど。」


「ソラ様はアイゾメと言う人物と話しています。」


「アイゾメさんと?何の話をしてるんですか?」


「そりゃあどうしてお前の事攫ったのか聞くためだよ。」

 後ろの方からアルベリがのそっと来た。


「いやー。マジですまねぇ。言い訳にしかならねぇがお前がいると思ってなかった。」

 この通りだと、頭を下げてくる。


「ううん。僕のせいだよ。魔力も能力も全然使えないのにでしゃばっちゃったから。」


「……やっぱ損な性格してるぜお前。」


「そう、なのかな。」

 アキラにも言われた。

 それに痛感したからわかる。

 死ぬときは一瞬だ。

 能力を持っているということはいつでも人を殺すことができることに他ならない。

 何も満足に扱えてない僕なんか一瞬で死ぬんだ。

 それを今日、身をもって知った。


「俺が言うのもなんだがあんま考えすぎんなよ。」


 マサミチが暗い顔をしているのを見て、励ますようにポンと肩を叩く。


「そんなことより、ここの連中はどうだった?なんか変な事されてねぇか?」


「大丈夫だよ。みんな優しくしてくれたから。それに僕に能力があることも教えてくれたんだ。」


「そうか、それは悪い事をしたな。」

 ボコしちまった、と不安そうな表情をしている

 けど今はそんな事より

「そういえばソラさんは?今どこにいるの?」


 あたりを見回しても見当たらない。

 

「ソラは今、あっちの部屋にいるぜ」


「アイゾメさんと?」


「ああ、お前をさらった理由やらなんやらを諸々話してるらしいぜって、おっ丁度良く来たな。話は終わったのか?」

 アルベリと話していると扉の開く音がした

 なんとも複雑そうな表情をしたソラが近くまでやって来る

「うん。大雑把だけどね。それよりもマサミチ君の手の事だよ。」

 ソラはほぼほぼ動かせない手を握る。


「伝手があるからこの手は治せる。けど、町、いや都市の中心部まで行かなきゃいけないの。多少無理をすれば私の家まで連れてくることもできるんだけど……あんまり現実的じゃない。」


 つまり、手を治すなら人がたくさんいるところに行かなきゃいけないのか。

 嫌、だけどソラに無理させるくらいなら僕のことはどうでもいい。

 関わりさえ避ければある程度は大丈夫だと思うから。

 ただでさえ僕のためにやってくれるんだから僕の都合なんてどうだっていいんだ。

 だから

「僕は大丈夫だよ。ソラさん。」


 アキラのような人もいるってそう思えば少しは楽になる。

 昨日ソラが言ってくれた言葉が噓ではないと、証明されたようなものだ

 

「そう……無理、しないでね。」


 心配そうな顔だ

 そりゃあそうか


「うん、無理はしてないし、しないよ。それはそうとアイゾメさんとどんな話してたの?」

「やっぱ気になるよね。えっとね――」


 ソラが言うには僕のことに関しては勘違いのせいで起こった事らしい。

 ソラとの訓練の風景から純人をいたぶってるように映ったらしく、そこから救出&勧誘って感じだったらしい。

 アイゾメ達からしたら計画のために少しでも多くの仲間が欲しいという状況にもマッチしたため、自分達で調査することなく僕を連れて行った

 善意百パーセントという訳でもないが咎めるほどの事でもない

 単なる行き違いとして処理することになったらしい


 それに〝予言〟と言う物も関わっているらしい。

 アイゾメ達が聞いた予言というのは


 『近々国を滅ぼす〝破滅の英雄〟と国を救う〝救済の悪魔〟がこの世界に現れる』とのことだ

 おとぎ話のような話だが信憑性はあるらしい。

 最近になってからこっちの世界に来る純人がめっきり減ったらしい。

 それは大きな力をもった二人の純人がこの世界に来るからだとされている。

 納得できる理由もあるため嘘ではないと判断したんだろう

 だから純人が現われなくなった後の最初に現れた純人だった僕が大きな戦力になるんじゃないかと思い、勧誘したっていう事らしい


「ふーん。予言に英雄に悪魔ねぇ。なーんか噓くせぇと言うか何というか。」


「だよね。私も思った。けど、本当らしいよ。私もこの目で見たからね。」


「そりゃ能力でか?」


「アイゾメのね」



 そうだ、二人が考えている間にアイゾメに話を聞いておこう。

 そういえばアイゾメはどこに行ったんだろうか?

 アキラも無事か気になるし


 きょろきょろと辺りを見回すと

 あ、噂をすれば何とやらだ。

 先ほどソラが出てきた扉からアイゾメ含め四人ほど出てきた。

 アキラ、ミレイ、シンジエイトと……あの人は誰だろう

 見たことない人だ。


「ん?ああ、ユイガか。すまなかったね。勘違いだったとはいえ急に攫ったりして。」

 アイゾメは僕を見つけると足早に寄ってきて謝罪を口にする

「いえ、問題ないです。おかげさまで能力の事もわかったので。むしろ感謝しています。」


 これは本音だ。

 嘘偽りのない本音。


「そう言ってくれると若干だけど心が休まるというもんだね。」

「そういうもんなんですか?」

「そういうもんだよ。それにユイガにはアキラさんも助けてもらったしね。」

「助けたなんて、そんな。僕がやったのは恩返しです。いろんなことを教えてくれたことの。」


 実際、アキラに能力の事を教えて貰えなかったら助ける事は出来なかっただろうから

 恩返し、一番しっくりくる結論だ


「まぁ貴方がそういうのならそうなんでしょうね。何はともあれメンバーを救ってもらったことに変わりはないわ。こっちの世界で生きていくんだもの、また会う時が来る。その時は遠慮なく頼りなさい。私達〝特別な人のために(スぺシャリア)〟が力を貸すからね。」

「ありがとうございます。それと、ちょっとだけ聞きたいことが――」


 何にも無駄なことはない。

 生きていくうえで人と関わらないなんてことはあり得ない。

 ちょっとずつでいいから慣れていこう。

 機会は沢山あるのだから。


 そして僕達は世界最古にして最大の王国、ユグレシア王国へと足を踏み入れる。


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