実践は突然に
そっから、時間の許す限り色々話した
そこで言われた言葉があってな。「私たち騎士は王を守ることが最優先。ですので下の方に常駐するわけにはいきません。ですのでこれ彼もあなたのような被害が増えるでしょう。もし貴女がその気なのであれば、貴女が救ってあげてください。私たちにはできないので。」って。
今思えば超他力本願だなって思うけど、その言葉があったからボスやミレイはオレと同じ目に合わずに済んだってのが腕と目を失った経緯だ。
「やっぱりあんま聞いてて気のいい話じゃ――。えっ。なんで泣いてんだ?どっか痛いのかよ。」
「いえ、何処も痛くないです。ただ、ただ悲しくて。アキラさんもマモルさんもヒビキさんも何も悪くないのに。」
……帰ってきた言葉はきっとこの世界に来てからずっと、言われたかった言葉だった。
何も悪くない、誰も悪くない。
もっと早くその言葉を聞けていたら、また別の生き方もあったかもしれない。
戦いに身を置くんじゃなくて、誰かと幸せを共有しながら静かに生きる、そんな生き方もあったのかな。
「お前はいいやつだな。自分もつらい目に合ってるはずなのにな。」
目の前で涙を流す少年を幼子をあやすように撫でる。
目に大粒の涙を貯めて赤くなってる
それに、泣くのを必死に我慢しようとしてズボンを思いっきり掴んでるその仕草
シンゴも怒られそうになった時こんなだったな、懐かしいなぁ
「ほら、泣くな。まだ本題に入ってないんだ。」
懐かしい思い出に浸るのと同時に少し心配になる。
こっちの世界では甘さや優しさは弱点でしかない。
この世界にいたら人を殺さなければいけない時がきっとくる。
その時こいつは決断できるのだろうか。
……それはオレが決める事じゃないな。
「話はそれたが、オレはお前の能力についてハナから教えてもらってる。何でも一から教えてやるよ。」
ハナの能力で貰ったコイツの能力の情報
ある意味では三つ能力を持っているともいえるし解釈次第では一つともとれる
けど、あたりの部類の能力だ
「確かボスには四季が能力だってのは聞いたんだよな?」
「はい。四季を支配する能力だって聞きました。」
聞いたのはいいけど支配って部分にまだ理解が追い付てないって感じかもな。
ボスは能力だよりになってせいで説明が下手になったかな
また今度教えてやるか、っと今そんなことはいい
「支配もあながち間違ってはないんだがな。その本質は〝四季に関係する事象の支配〟だ」
「四季に起きる事、雪とか氷、あとは紅葉とか?を出せるって事ですか?」
「その解釈でもいいっちゃあいいが、可能性をつぶすことになるぜ?」
少年は眉にしわを寄せる。
そうせくな、ちゃんと教えてやっからさ
「この世界は自由だ。やろうと思えば燃える水も作れるし、柔らかい鉄だって作れちまう。この世界での強さ=想像力だ。固定観念なんて持ってたら雑魚になっちまう。能力の範囲であればできると思う事は何だってできるんだ。」
「なんだってできる……か。」
はっ、もう何か感づいたって顔してるな
若いってのはいいなぁ
教えたことをすぐに吸収しようとする貪欲さや純粋さ
シンゴはいい子だったからな、コイツみたいに純粋な子に育ってくれたのかな
なんて感傷に浸っているとユイガが口を開いた
「それで、適正?って言うのはまだ聞いてなくて。それも教えてください」
「ん?ああ、まだ言ってなかったな。適正ってのはそいつに合ってるかが顕著にでるもんだ。今夏だしな、死んだ時期だから本能的に嫌ってんじゃないか?」
トラウマってのは厄介だ
能力が使えない原因になったり、PTSDになったりして日常生活に支障が出ちまう奴もいる
コイツの場合、四季が能力でラッキーでもあるしアンラッキーだな
四季は日本に住んでいる人間にはなじみがある
死の直前に感じていた環境は、気持ち悪いからな
俺も未だに暑すぎる環境は嫌いだしな
「僕の能力についてはわかりました。でも使い方が分からないです。」
「だろうな。まあ一朝一夕でどうにかなるもんでもないしな。」
「そうなんですか?」
「ああ。ズルしない限り、なれるのに時間が掛かるからな。」
「ズル、ですか?」
「ああ、ボスの能力は情報だ。想像力の部分は自前だけど、オレみたいに物に変化させる系の奴らはその物質への理解度がいるからな。情報をぶち込んで強制的に理解させる方法だ。」
けどアレなぁ、手っ取り早いんだけど脳に負荷掛かるから嫌いなんだよな
脳みそに直接ドカンと来るから耳鳴りがすごい
だからあんまりオススメは出来ねぇな
「ま、話を続けるが能力を使う分にはいいんだが実用的な範囲までもっていくのがムズイんだ。魔力を自覚するところから始めなきゃいけねぇしな。」
あれはホントにキツかったな
コイツは見るからにヒョロッヒョロだし、相当きついんじゃねぇかな
「いえ、魔力に関しては大丈夫です。もう、見えてますし、ちょっとなら使えます」
……マジか
「お前、こっちに来たのどんくらい前だ?」
「大体三か月くらい前です。訓練を始めたのは二ヶ月くらい前だったかな……」
首をかしげてる
首をかしげてぇのはこっちだよ
意味が解らねぇ
軍人やってたオレですら、魔力を自覚すんのに半年かかったっていうのに、コイツは約二ヶ月だって?
うっそだぁ
あーいやまあ、そこは今はいい
「魔力が知覚できてんなら話は早い。要はイメージだ。でも曖昧じゃ駄目だ。正確に、明確に、そしてわかりやすくだ。必要とあらば技名を付けるのも有効だ。この技を使うって時にイメージしやすいからな。」
声に出すと気合が入るんだよな、アレ
「技名、ですか。アキラさんは何かあるんですか?技名」
……言いたくねぇな
純粋な目を向けてる所悪いが、マジで嫌だ
強いイメージを持つために厨二っぽい技名してるからな
大の大人が堂々と技名はちょっと抵抗がある
ただ、コイツは純粋に疑問に思ってるだけだ
でも恥ずかしいんだよ……
……っくそ
「――とかだ。」
「え?」
「水晶弾とかだ!! 恥ずかしいから何度も言わせんな!!」
「あっ。なんかすいません。」
予想以上に大きな声が出た
それに子供に謝らせてしまった
でも、もうそろそろ三十路に入る大人が「必殺☆水晶弾!!」とか言ってんの想像したら恥ずかしすぎんだろ
「というかクリスタルっていうのはアキラさんの能力ですか?」
恥ずかしさに顔を覆いつつ質問に答える。
「ああ。〝大抵のものを水晶に変える〟ってのがオレの能力だ。変化系だが、あんま使い勝手のいいもんじゃない。」
本当にその通りだ
わかりにくいし使いにくいし、使いこなすのに二年もかかっちまった
ボスのこと助けれてなかったらもう二年かかってたかもしんねぇ
「あーそうだな。あとはコツでも――」
教えてやろうと言いかけたところで部屋の隅にある鈴が鳴った。
「今の何ですか?」
「ちょうどいいな。今のは侵入者が来たっていうのを知らせる合図みたいなもんだ。ここの周りには森があってな、そこにワイヤーを仕掛けて引っかかったらっていう古典的なもんだ。」
「引っかかるんですか?」
「おう。案外な。古典的って言ったってオレらの世界での話だ。こっちの奴らはよくかかる。それにその鈴は特殊な鈴だからな。あっちからは気づかれずに位置が分かる代物だ。」
話をしながらアキラはあるものを組み立てる
「それ、何ですか?」
「ん?あーこれか。これはボスに作ってもらった組み立て式のスナイパーみたいなもんだ。」
そう言いながらどんどん組み立てる
片手で組み立てるのもなれたもんだ
「今から能力を使う。よく見とけよ」
「も、もしかして殺すんですか?」
震えた声で少年は言う
「いや?威嚇射撃だけだ。まぁそれでも進んできたら足辺りに一発ぶち込むさ。うっし、完成」
安心しろよ、オレだって人なんか殺したくないしな
組み立て終わった銃を窓に掛ける
さ~て今回の獲物はどんな奴かな?
スコープをのぞき込み、音のなった方に目を向ける
覗き込んだ先には大柄の男と二人の女が見えた
しっかり武装しているし、誰かに依頼でもされた奴かな?
「しっかり見とけよって言ってもあんま派手じゃないんだがな」
銃の薬室が淡く光る
パキパキと音を立てながら透き通るような透明の弾が込められる
さぁ
「打ち抜け。水晶弾」
パァンと乾いた破裂音が耳を刺激する
発射された弾は真っすぐに飛んで行った




