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生きる覚悟

「は……?ここ、何処だ。」


 最低最悪の気分だ

 体を吹き抜ける風すらも、今は気持ち悪い

 夢であっても二度と経験したくないような、そんな出来事がついさっき起きたのだ

 虚ろな目で自分の手を見る

 なんで私だけ生き残っているんだ

 二人は死んだというのになぜ……


 言いようもない怒りに全身が包まれ奥歯をかみしめる

 今すぐにでも死んでしまいたい

 でも死ねない


 昔ヒビキと約束したから

 他愛のない会話だったが大切な思い出だ

「もしさ、俺が死んだとしてもさ。後を追ってきちゃだめだよ?アキラが俺を想ってくれているように俺もアキラのことを想ってる。好きな人には長生きしてほしい物だろ?だからさ、本当の限界が来るその時まで頑張って生きてみてよ。」だなんて……。

 死んでしまいたいという思いと死んではいけないという矛盾

 頭の中で生と死の葛藤が頭を埋め尽くす



 そのせいで、だ

 オレのこの世界に来た時にいた場所は〝純人族〟と呼ばれるオレらみたいな奴らが大量に転移してくる場所だった。

 幸か不幸かオレらは絶対に一つ能力をもってこの世界に来る

 例外はあれど、ここだけは変わらねぇ

 こっちの世界の奴らからしたら能力持ってることすら珍しい

 だからこそオレら純人族はこっちの連中からしたら貴重な〝資源〟みたいなもんだ

 純人族はここの世界では二通りのパターンに分かれる

 一つは今のオレやボスのように自らで能力を解明して独立する

 二つ目は、現地の奴らに捕まり能力をを利用され奴隷のように使われるか……

 オレみたいに能力の扱いが難しい奴や能力が弱いやつは、貧民層の奴らのストレス発散に使われる

 この二つだ

 あの時ほど頭がおかしくなってた時はなかったからなぁ

 後ろから来てる奴らに気がついてなかった

 捕まった後はアレコレされて能力調べられた後、貧民層のゴミ溜めで貼り付けにされて貧民層のうっぷんの掃きだめにされたんだよなぁ

 そん時かな、目はじっくりナイフで抉られた後に食わされたんだったっけな


 腕に関してはちょい話も込みでな

 確か本格的に死にかけてた時──

「おいおいこの的ほぼほぼ動かなくなっちまったよ。」

「別にいいじゃねぇか。また連れてくれば。」

 今日はもう終わりか……

 ……耐えれてあと二日、かな

 痛い、それすらも感じなくなってしまった

「にしてもコイツよく死なねぇよな。臓物ちょっと出てんのによ。」

 何を言ってるんだこいつら

 あーダメだ、耳もおしゃかになったか

 目も翳んでる

 死が目の前まで迫ってきている実感がある……

 ここで終わりか?


 死の足音が身近に迫ってきている

 それでもだ

 オレは、死なねぇ

 こんなところで終われねぇ

 絶対死なねぇ死んでたまるか

 どれだけ細い希望の糸すら掴んで見せる


 何日、何十日貼り付けにされてたかわからない

 ただ、時間は腐るほどあった

 皮膚が焼ける痛みも、傷口をさらに抉られた痛みすらも、この思いを消すことはできなかった

 大量の時間の中で幾度となく自問自答し、自分の中で踏ん切りをつけた

 助けられなかった二人の分も、オレは生きる

 生きて、生き抜いてみせる

 その根性で繋いだ命の灯も消えそうになった時


 顔に何かがかかった

 もはや温かいか冷たいかもわからない

 液体であることだけが微かに分かった

 久しく感じていなかった喉の渇きを感じた

 無意識のうちに口を開けていた

 その時、オレの口に何かが流れ込んできた


 水だ

 今まで飲んだどの飲み物よりもおいしく感じた

 すべてを飲み干した後、異変が起きた

 息が苦しくない

 それどころか身体中から痛みと言う痛みが消えていた

 腫れのせいで全く見えなくなっていた右目も平常時と何ら変わりない働きをした

 そこで目に入ったのは数十日間オレをいたぶっていた奴らの生首だ

「あなたが助けてくれたのか?」

 目の前に立つ〝騎士〟のような恰好をした女性に問いかける

「ええそうです。」

 立ち振る舞いを少し見ただけで育ちの良さがすぐにわかる

 とてもきれいな薄緑と紫のオッドアイを持つ長身の女性

 オーニアスって言う人だ


「助けていただいて感謝しかありません。どうお返ししたものか。」

「いえいえ。顔を上げてください。それに私は感謝されるような女ではありません。」

 謙遜が過ぎる、と思った

 人の命を救ったというのにこの人は……

「実は私、あなたの事昨日のうちに知っていたのです。ですが私は地位が邪魔をしてすぐに助けに向かうことができませんでした。すみません。」

 あの苦痛が終わるのが一日減ろうが増えようが誤差だ

 それに命を助けてもらったというのに謝られる、なんてことはおかしい


「それにあなたに謝らねばならない事があります。処置が遅れたせいで貴方の左腕、切断するほかなくなってしまいました。」

「待ってください。なぜあなたが謝るんですか?オレは助けてもらった側なのに。」

 逆に言えば死ぬはずだったところを左腕一本失うだけで助かるんだ

 儲けもんどころの話じゃない

「少し前に聞いたことがあります。あなた方は婚姻の証として左手に指輪をするものだと。手を見ればわかります。既婚者でしょう?」

 そういう事か、まぁオレだって左手がなくなることに抵抗がないわけじゃない

 でもオレは感情よりも優先すべき事がある


「そうだけど。そこはさほど重要じゃない。左手がなくたって今までの思い出がオレにはある。それだけでオレは前を向ける。」

「なるほど……。無粋でしたね。」

 軽く頭を下げ、謝罪する

 改めてこの人、凄くできた人だな

 それにしてもどうしようか……

 麻酔なしでも腕を斬るくらいなら耐えれるけど、出血はどうしようもないからな

「もし宜しければ腕、私に任せてくれませんか?痛み無く、あまり血も出さずに切断することができるので。」

 え?スゴ……

「願ったりかなったりですが。いいんですか?」

 もちろんと言わんばかりに頷く

「少し、目を閉じてください。そして今から口にする水は飲まないでくださいね。」

 言われた通りにしたけど、思いのほかタプタプに水が入れられ普通に苦しかった

 

 ザンッ――

 痛みがない、ただ左腕の感覚を失った

「はい。終わりましたわ。ささ、ペッと吐き出してください。」

 口に含んでいた水を吐き出すと同時にピリッとした痛さが左腕に走った

 そこにあったはずの左手はもうなく、何とも言えない喪失感に包まれる

「指輪だけは残しておきました。大事な物でしょう?」

 手渡しで受け取った指輪

 オレとヒビキの形に残っている最後の思い出

 無くさないように強く強く握りしめた


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