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隻腕の大人

「そうそう、一個やらなきゃいけないことがあるんだけど……大丈夫そ?」

「……はい大丈夫です。」

 そういえば僕、なんで攫われたんだろう。

 ソラさんとアルベリさん、グレイさんも。

 みんな心配してないかな。

 迷惑かけたかな。

「それじゃあ、ほい。手、出して。」

 差し出された手に自分の手を重ねる。

「ありがと。すべてを覗き見ろ 情報収集インプット

 その声に呼応するようにアイゾメの手が少し光る。

 何もわからない僕はふむふむと頷くアイゾメを黙ってみているしかなかった。

「ありがと。終わったよ。」

 手を放しアイゾメの目を見る。

「何やってたんですか?」

「私の能力で君の能力について把握してたの。こういうのって何にも補助がないと持ってるかどうかすらわからないし、それに自分の能力の事勘違いしていたら大切な場面で失敗しちゃうからね。」

「なるほどです。」

 というか僕にも能力あるんだ……ないと思ってた。

「それでそれで~?肝心な能力は~?」

「ミレイも驚くよ?きっと。」

 ニヤニヤとした笑みを浮かべる。

「ユイガ。君の能力は支配系で使い勝手のいい、所謂当たりの能力さ。」

「当たり、ですか。」

 ちらっと横目で見たミレイは結構驚いている様子だった。

 そんなにすごい事なのかな。

「私たちはね、もと居た世界からこっちに来るときに必ず一つは能力を得る。種類は概念系、変化系、支配系、操作系があるんだよ。」

 


 アイゾメがいうには、枠にはまらないのを概念系、魔力自体を変化させて物を作ったり何かの現象を引き起こすのが変化系、支配系は大きな一括りの現象を文字通り支配しているがごとく扱う事が出来る優れもの、操作系は母数が少ないからあんまりわかっていないが魔力を何かに流して動かすらしい。

 変化系の説明だけふわっとしすぎて弱く思えてしまうな。


 それにしても支配系か、僕なんかが持っていいのかな。

 もっとふさわしい人とかいそうな気がするんだけどなぁ。

「それで、肝心の能力なんだけど。ほいっ。」

 今さっきまでそこにはなかった白い塊を僕の方に向かって放り投げてくる。

 慌ててキャッチした僕は違和感を覚える。

「冷たい……。これもしかして雪?」

「うん。そうだよ。」

 掌の上にある溶けた雪をみる。

「……これが僕の能力?」

 正解と言わんばかりに指を鳴らすアイゾメ。

「四季を支配する能力。これが君の能力だよ。」

「四季を支配……」

 いまいちピンとこない。

 アレかな、手のひらから氷柱を出すみたいなことできるのかな。

「他の四季も、と言いたいところだけど君のはちょっと特殊でね。」

「もしかして適正がないのでもあったの~?」

「そうだね。君は冬、秋、春、夏の順番に適性が高い。夏に関してはたぶん扱えないんじゃないかなってくらいに才能がないね。」

 才能がない……か。

「気になるって顔してるね。まぁ、後でいろいろ教えたげるからさ。」

「えぇ、四季を支配?って言うのはよくわからないんですけど、本当に僕も能力を使う事ができるんですか?あんまり実感がわかなくて。」

「無理もないよ。能力なんて全く無縁の世界にいたんだから。」

 縁があったらそれはそれで怖いんだけど。

「でも今からちょっと縁を持ってもらうから。私たちの仲間になるってわけじゃなくてもこれくらいは覚えてないとこの先生きていけないしね。」

 生きていけない、か。

 確かにと僕も思う。

 なんだかんだ言っても来て早々に腕嚙まれてるし、ソラさんみたいに強い人も殺されかけてたしな。

 あのオオカミモドキが強かったのか知らないけど……。

「それじゃ、こっちに来て。アキラって言う人に合ってもらうよ。」

「なんでですか、会う必要があるんですか?」

 靄がなくたって人と一緒にいるだけで少なからずストレスを感じる。

 気にしないように務めているとは言え、いきなり連れ去られた状態なんだ。

 まだちゃんと理由も聞いてないのに……。

「んー。ま、ちゃんと理由があるからね。」

「理由?」

「そ。君の能力はっていうか、うちで一番能力関係に詳しいのはアキラさんしかいないからさ。コツってのを知っといてもらいたくてね。」

 コツか……せっかく能力なんてものを持ってるんだ。

 有効活用できるならしたいに決まってる。

 ここまでしてくれているし断る理由なんてないか。

 言われるがままアイゾメについていく。

「そういえばアイゾメさんはどんな能力なんですか?」

「私?私は概念系に属する〝情報〟が能力だよ。」

「情報ですか。」

「ひとえに情報と言っても応用力はすごいんだよ。なんてったって他の人の能力を疑似的だけど扱えるしね。」

「すごいですね。」

 なんて雑談をしているうちにある部屋の前に来た。

 ここがアキラと呼ばれている人の部屋なんだろう。



 コンコン

「アキラさーん。入っていい?」

「勝手に入れ。鍵はかけてねぇ。」

「それじゃあ失礼するね。」

 アイゾメが扉を開くとそこには一人の女性が木の椅子に腰を掛けていた。

 包帯を巻いた右手でペンを持ち、何かを書いている。

 ひと段落の区切りをつけ、ペンを置く。

「それで?オレに何の用だ?」

 アキラは椅子から立ち上がりこちらを見る。

 ……あれ?

「腕が……無い?」

 部屋にいた女性には左手がなく眼帯をしている。

 先ほど聞いた話であれば五体満足のはずだ。

 ただ、目の前にいる女性は左目と左腕を失っている。

「はんっ。デリカシーのない野郎だな。」

「あーもしかしてさっきの話のせいかも。アキラさん、悪気はないから許したげて。」

 さっきの話、なら僕の思っていることはあっていたみたいだ。

 でも、じゃあなんでなんだ。

 アイゾメがアキラの手に触れて何かした後、こちらを向く。

「何となく理解したわ。とりあえずな。オレはオオトリ アキラだ。短い間だと思うがよろしくな。」

「唯我 正道です。あの、よろしくお願いします。」

 軽く握手を交わした後、アキラはアイゾメを部屋から立ち退かせる。

 またもや知らない人と同室二人っきり。

 アキラにも靄がない。

 それでもやはり少し落ち着かない。

 そわそわと部屋を見回していると椅子を差し出された。

 まあ座れ、そういっているように感じたので出された椅子に腰かける。

「さて、オレに何が聞きたい?って言ってもその様子じゃ無理だろ?緊張してるのが目に見える。……いや緊張だけじゃないな。」

 そういうとまじまじと僕の顔を見る。

 ソラとは違う整った感じの顔付きで、凄い美人さんだ。

 何か見透かされているような、心の中をのぞかれているような瞳と目が合い、より一層緊張する。

 目線を逸らしまくる僕にアキラはハッとしたように離れた

「……初対面の知らない奴と二人にされたらそら警戒するわな。」

 うーんと少し考えこんだ後、何かを考えついたように顔を上げた。


「よし、あーユイガだったかな?オレのことでなんか聞きたいことあるか?何でもいいぞ。相手を知ることでちょっとはリラックスできるだろって事で、聞きたいこととかないか。何でもいいぜ。」


 えぇ……急に言われても困る。

 それに初対面、つまり何も知らない人なんだから聞きたいことなんて出てくる方が珍しい。

 けど、相手を知ることが、か……。

 知ることを避け、傷つくことを恐れ逃げ続けてきた僕にはその言葉が妙に頭に残った。

 今、アキラに聞くことがあるとするのならば。

「じゃ、じゃあ。アキラさんはなんでそうなったんですか?失礼なのはわかってるんですが……。その、会ってすぐなので聞くようなことがなくて。」


 少し間を置いてやれやれと肩をすくめる。

「……そりゃそうか。オレが悪かった。言い出したのはオレだからな。でも聞いててあんまり気持ちのいいもんじゃねぇぞ?それでもいいんならいいが。」

 肯定の意を込め少し頷く。

 少し考えた後頭をぼりぼりとかく。

「あーちょっと考えたら腕と目を無くしたときの話はな日本にいた時の話とセットじゃなきゃよくわかんないと思うからさ。長くなるぜ?」

「大丈夫です。」

 何も問題はない。

 母さんの昔話とか旅行行った時の話とか、そういう長い話は昔からたくさん聞いてる。

 だから人の話を聞くのは結構得意な方だ。

「できる限り暗くならないように話すわ。これは……何歳だったかな。二十?四か五くらいの時からの話だな。あれはな───」


概念系、変化系、支配系、操作系では人口の割合的にも順番通りで多いです

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