10階層踏破Ⅲ
星の開拓者として僕達は今10階層の踏破に向かいながら今回の目的を思い返していた。今回の踏破は新米の中でも素質がある冒険者で結成したチームでありその目的は簡単に言えばメディアの人気取りでもあった。
「はぁ~かったるいぜ。入る前のあの行列は何とかならなかったのかね」
「仕方ないさ。今回は僕達のお披露目も含まれているんだから」
ぶっちゃけて言えば今回の踏破はメディアの為の茶番に近い。僕達の実力ならばほぼ余裕で倒せるような相手をお披露目という名目で今後注目させる冒険者を選んでパーティーを組んだからだ。
「ガイ!私達は星の開拓者の代表みたいな立場なんだからもっとシャキッとしてよ~」
「へいへいー。わかってるよチビ」
「チビいうな!」
ハーフリングのカロンが適当に返事を返すガロンに怒る。星の開拓者のクランは完全な実力主義であり結果を出しただけ上の階層に向かう事を許される方式になっている。入団したらすぐに適正にあったパーティーを組まされて攻略を開始する。クラン内では常に競い合うようにダンジョンに挑みもっとも実績を上げたパーティーが階層踏破の権利を手に入れるようになっている。僕達はその競争に勝ち権利を勝ち取った。今回の踏破が失敗した場合は1か月間の攻略禁止を言い渡される。
「階段あった」
ココが魔力の感知で階段がある場所を発見してくれた。彼女は口数は少ないけど要点を伝えてくれるのだが結果的に無口で何考えているか分からないという印象を周りに植えつけてしまう。
「そうか、案内頼めるか」
「うん」
「二人とも!じゃれてないで先に進むよ」
「じゃれてない!」 「じゃれてねえ!」
はもってしまったことでまたも言い合いになってしまったがココはそれを無視して先に進んでしまう。僕達は単体で強いのだがパーティーとしては噛み合っているのか別の話だ。このままで大丈夫なのだろうかと思いながらも階段まで辿り着いた。
10階層の門は閉じており開けることが出来ないのを確認する。どうやら僕達よりも最初に入って行った彼らが今ボスに挑んでいるらしい。
「さっさと出てこねえかな。あの雑魚どもの実力じゃあ全員死んじまうだろう」
「ガイ!そんなこと言っちゃあだめだよ」
「何言ってんだ!あんな寄せ集めの連中が踏破できるわけないだろう。所詮は行き遅れた負け犬どもなんだからよ!」
「ガイ、それ以上は言うな。不敬だぞ」
「なんだ、やるかアーク」
「・・・はぁ」
ガイはいつも挑発的で傲慢な部分があるがどうも身の丈に合っていない奴を見ると暴言を吐くらしい。それを見て慌てるカロンとため息を吐くココ。そんな時だった。
ドーーーン!!!!
目の前の門を何かが思いっ切り叩く音が聞こえて来た。何事かと身構えていると門を叩く音がどんどん大きくなっていき門にひびが入った。何が起きているか全く分からないでいたがひびは亀裂になりついに門が壊された。
破壊音と共に門の向こうにいる存在を視認する。赤い皮膚に大きな角が生えており手には戦斧を携えた魔物がそこにはいた。
「え・・・なんで門が・・・それにあれってホブゴブリンじゃない」
怯えるカロンに内心では自身も動揺していた。ダンジョンが作られてから今日までに階層ボスの門が壊されたことは一度もなく出てくるモンスターが変わる事もなかったからだ。
「あれは・・・大鬼・・・」
本来は21~29までの階層にいるはずの魔物が目の前にいる。そんな訳の分からない状況のまま生きるために僕達は戦闘を開始することになった。
少し前
冒険者達は薬の影響で強くなりホブゴブリンを翻弄させていた。
「はははは!どうしたどうした!この程度なのか!!」
自分達の力に酔っていた冒険者達はボスをすぐに倒せばいいのにいたぶってから倒すことにした。今までの鬱憤を一体の魔物に叩き付けているのだ。ホブゴブリンも防御を固めてながら攻撃をするが全く当たらないそんな一方的な状況だったのだが
「ガァアアア!!!」
「・・・あ」
冒険者の一人が足がもつれたのか倒れてしまいその隙を見逃さなかったホブゴブリンはその冒険者の頭を食いちぎった。調子に乗って回避しそこなった馬鹿に舌打ちして攻撃を仕掛けようとした時だった。
「ガァアアアーーーーーーーーー!!!!」
咆哮を上げたホブゴブリンは体からいきなり蒸気が立ち込め魔力が一気に膨れ上がったのだ。何が起こったか分からないが攻撃をしようと動こうとした時だった。急に体に力が入らず魔力だけが膨れ上がりその場に動けなくなった。
「な・・・にが?」
そう思って周りを観ても自分と同じように動けなくなった冒険者達がその場で倒れてしまった。そんな自分達にホブゴブリンは近づいて行き
「や、やめろーーーー!!!」
近くにいた冒険者がまた食われるとホブゴブリンはまた一段階魔力が上がった。俺達を美味しい餌と認識したホブゴブリンは次々と冒険者を食べていく。叫び声を上げながら助けを求めるも誰も動けない。
「こ、こっちにくんじゃあねえ・・・くんじゃあねえ!!!」
ついに自分以外の全ての冒険者を食べた魔物は自分に迫ってくる。その姿はもうホブゴブリンではなくなっていた。目の前でどんどん強くなっていきながら絶望が歩いて来る。無駄とわかっていてもはってでも逃げようとする自分の足を掴んだそいつは大きな口を開ける。
「いやだ・・・・死にたくない・・・死にたくな」
グチャリと噛み千切られる音と共に喰われる。喰われる瞬間までどうして自分達がこんな目に合うんだと思いながら死んでいく彼らはそれでも理解しなかった。自分達が身に余る力を欲し欲望のままに進んだ結果が死であったことを彼らは理解することはなかった。




