堕ちた剣聖
アロンさんが言った堕ちた剣聖という言葉に自分は全く聞き覚えがない。アロンさんも自分の反応に本当に何も知らない事を悟り自身の失言に頭を抱えた。
「そうか・・・お主は何も知らなかったのか」
「はい。ただ、彼女ほどの人格者が奴隷になるってなると相当な理由があるのではとは思っていましたが傷をえぐるような真似はしたくなかったので何も聞いていません」
エリカと一ヶ月過ごしたが誠実な人物であることは勿論のこと武人としても優れていることは一緒に過ごしてよくわかった。だからこそ何故?という疑問はいつも懐いていた。
「・・・もし良かったらなのじゃが聞くかあの子がどうして奴隷になったのか」
そんな自分にすべてを知っているであろうアロンさんが重い口を開き聞いてくる。もしここで効かなかったらもしかしたら一生そのことを知るはなく今のままでいられるかもしれない。でもいつか事象を知りもしない輩が罵詈雑言を言ってくる可能性の方が多くそんな時に自分が何もできない事の方が自分は嫌だ。
「お願いします。聞かせてください」
それを聞いてアロンさんは口を開き話始めた。
アロンさんとエリカの故郷プローレンという王国でありアロンさんはそこで長年騎士として過ごし半年前まではそこの指導官として働いていたベテランであったらしく。騎士の指導をしていてそこでエリカの父である
カールさんの指導をしていてその才能を引き出しカールさんが死ぬ直前に娘の事を頼まれて指導していたとの事だ。
「エリカちゃんは本当の天才じゃった。才能に胡坐をかかず常に上を目指して研鑽していた」
そんな彼女は18に剣聖の称号を授与されたらしく最年少での剣聖誕生に国も歓喜したとの事だ。
「剣聖って凄い称号なんですよね。どんなことをしたら貰える物なんですか?」
「色々あるがエリカちゃんが剣聖になった時はドラゴンを単騎で撃破した事が高く評価された故に剣聖の称号を賜ったな」
この世界のドラゴンとはどれだけ強いか分からないが絶対に一人で倒していい相手ではないのだろうことは分かった。話を戻して18で剣聖になった彼女はそれでも研鑽を積み上げて色んな事を成しえて来たとの事だ。そして20の時ある任務を受ける事になった。
「その任務は聖王国との協同で行われる物であった。任務の内容は危険な魔道具を聖王国に運ぶものだった」
「危険な魔道具?」
アロンさんの話では当時発見した人に害を及ぼす危険な魔道具が発見され聖王国は母国でその魔道具の解体をする為にプローレン王国に協力を要請したとの事だ。どうもプローレン王国と聖王国の丁度国境が重なるところにあったために共同で事に当たる事にしたらしい。
「聖王国は王国に護衛に剣聖を要求してきたので100名の精鋭騎士と剣聖であったエリカちゃんが向かう事になったのだ」
「なるほど」
今の所、何も問題ないように思う。聖王国はもその魔道具の為に精鋭を揃えているらしいことも言っていたしとなると魔道具が相当ヤバい物だったのだろうか?そんなことを考えているとアロンさんの手が震え始めた。
「そう・・・何もなく終わるはずだったその任務だったはずだった。あの阿呆が出て車では」
怒気を混じった声に殺意も乗っているように思える。どうもその任務にどこからそのことを聞いて来たのか王国側から王太子が出てきてしまったらしい。王国側の時期王である王太子は何を思ったのか自分の功績を増やすためにわざわざついてきてしまったとの事だ。
「・・・それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫なわけがない。なんせあの阿呆は王に何も言わずに勝手について来たのだからな」
何とか帰ってもらうように言ったのだが従わないなら全員首にすると言い放ち駄々をこね始めたらしく仕方なく伝令を出して進むことになった。
「・・・待つことは出来なかったんですか?」
「聖王国は多くの危険な魔道具や呪いと言った金術を解体と解除してきた国でなその魔道具の為に用意されている工房も他の仕事がまだまだ多くある状態であり長くは待てなかったのだ」
そんなわがまま王太子を連れて何とか聖王国まであと少しという時に事件が起きた。街で休息を取っていた所でその王太子が危険な魔道具の封を破って手にしたあげく使った。
「・・・本当に馬鹿なんですかそいつは」
「・・・」
本人は危険な魔道具を使いこなす自分が更に強く偉大な存在であることを証明しようとしたとの事だがそのせいで魔道具が発動た。魔道具の効果は精神を蝕んで一時期的に殺意を上昇させ殺戮マシンにすると言う物でありエリカは王太子からそれを取り上げ街を出て人気のない場所に向かった。ただ、エリカでもその魔道具に抗えず暴走してしまった。
「どうなったんですか」
「すぐに異変に築いた他の騎士と聖王国の精鋭はすぐにエリカちゃんを助ける準備をして向かった・・・のだが」
「だが?」
「王国の精鋭騎士は全滅し聖王国の精鋭にも多大な被害を出してしまった」
何とかエリカごと魔道具を抑えることが出来た聖王国の精鋭はそのまま本国に救援を要請しすぐに専門チームが到着し彼女から魔道具を回収することが出来たとの事だが彼女はそのまま聖王国の裁判にかけられた。
「裁判って・・・確かに大勢を殺してしまったがそれは王太子がむやみに魔道具の封を破ったからでしょ。なんで」
「その王太子がエリカちゃんに全ての罪を着せようとしたからだ」
「・・・・・・」
話に聞く王太子が余りのくずっぷりにもはや何も言えない。それから行われた裁判は魔道具を勝手に持ち出した王太子と魔道具が発動した結果、多くの人員を殺めてしまったエリカに重点が置かれ王太子には王位継承権の剥奪並び永久国内監禁が言い渡され。エリカは騎士としての地位並びに剣聖の称号の剥奪。そして王国並びに聖王国からの永久入国禁止と奴隷落ちが決定したらしい。
「いやちょっと待ってください。なんで聖王国がそんなこと全部決めているんですか。王国側には非がありますけどもっとエリカの方は減刑あってもいいじゃないですか」
「それが聖王国という国なのだ。あの国において全ては法の下に存在する。その地で他の王族が何かしらの法を犯すようなことがあったとしても聖王国の法で全て片付けられる。勿論、極刑も死刑もな」
どこまでも法の下で公平。それが聖王国でありエリカの刑は何も変わらなかったらしい。アロンさんがそのことを知った時にはすべてが終わっておりエリカの行方も分からない状態だったという。それから彼は騎士の身分を捨てエリカを探し回りここでようやく見つけたと言う事だ。
「これがすべてだ。王国側はこの醜態を隠したくエリカちゃん達が死んだことにしてこの事実を今も隠している」
「そうだったんですね」
重い話であり何も言うことが出来ない。
「アロンさんが彼女を探していた乗ってエリカの父親の約束の為ですか」
「・・・あいにく儂には子供がいなくてな。後を任されたにもかかわらず愛娘の様にかわいがっていた子が奴隷に落ちたなどあやつの墓の前でそんなことは言えなかったのだ。だからこそもしも卑劣な輩があの子を非道に扱っているならばなんとかせねばならんと思っていたのだがその思いは杞憂に終わった」
そう言って立ち上がるアロンさんはそのまま踵を返し歩いて行こうとする。
「せっかくだし会って行かないんですか!?」
「老いぼれのやり残しを片付けれたのだ。思い残すことは何もない・・・いや、一つあったな」
そう言ってこちらに来たアロンさんは自分の手を握って来た。ごつごつした武人の手には確かな温かさを感じる。
「エリカちゃんのよき理解者であってくれ。それだけが儂の最後の願いじゃ」
それだけ言った後にアロンさんは去って行った。残された自分はただたださっきまでの話を思い返しながらこれからの事を考えながら時間だけが過ぎて行った。




