俺の奥の手
埒が明かない。息が切れてきた。もう体力もあまり残ってない。
身体強化をかけ直しながら俺は考えた。そういう時こそ、まずは、冷静に状況確認からだ。
結菜と永遠にも疲れが見えてきた。真面目に言うとちょっとやばい。
正直いって1階層をなめていた。こんなに強いモンスターがいるなんて。
普通こういう転移とか転生系ってさ、最強で敵なし!みたいな感じなのに。現実は甘くないか。
フェニックスのひっかき攻撃をクラウで受け流しながらさらに考えた。
自分の最大限を出さないとこいつには勝てない。それはわかった。
…もうあれを使うしかないのか。ちょっと気疲れするけどやるしかない。
「永遠、結菜!あれ使う!」
「やっぱ使うのか。」
「まぁ、そうしないと勝てないよね。」
よし。ふぅー、『吸収』スキル発動!
〚相手のHPを自分のHPへ〛を選択。
今たいしてHPは削られてないけどこれを使った理由はもちろんフェニックスのHPを削ること。
「ギュェェェェ!!!」
よし、効いてる。そして、
「グッ!!」
俺にも効いてる。そう、まだこのスキルは俺の体に負担がかかりすぎる。
------2時間前。
「お前らに話したいことがあって。俺の吸収スキルの事なんだけど---」
「あぁ…。」
「またすごいの見つかった感じ…?」
永遠も結菜もため息をつきながら聞いてくる?なんで?
「えっと、今使える吸収スキルの中でまだ使ってないやつがあるんだよね。だから次あったモンスターに使ってみるわ。」
「おう。」
「りょ!」
そして出会ったモンスター。オーク。
『吸収』スキル発動!
〚相手のHPを自分のHPへ〛を選択。
するとオークはみるみるうちに弱っていってなんとHPはゼロに。しかも俺の減らしておいたHPは全快。
これには俺達3人は驚愕。
しかしすぐに、
「くっ、ぐっっっ。」
俺の体に重力がのしかかってくるような痛みが襲いかかる。
-----というようなことがあったのだ。
このスキルは強い。ただ、今の俺には扱いきれない部分が大きい。
今はフェニックスから少し離れて様子を見ながら動いている。
このスキルを使うと味方にも負担がかかってしまうからタイミングがとても重要だ。
フェニックスは今だ空に羽ばたいている。ただ、明らかにきつそうな感じだ。
フェニックスの羽はもうボロボロ、さらに何十回、何百回の攻撃によってヒヅメも損傷していた。
ここが勝機!そう思った時、ふっと結菜がよろめいた。きっと気が緩んだんだろう。
まずい!フェニックスもそれを見逃さず大きく息を吸ってファイヤーブレスを吐こうとしている。
---気がついたら体が動いていた。考えるよりも先に行動していた。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
急いで結菜の前に回りこんだ。
「蓮、ブレスが!!!!」
この時もちろん秘策とかもない。もしかして俺の人生ここで終わるのか。まぁ、欲を言うと異世界を楽しみたかったけど悪くない人生だったな。
もう、十分頑張った。後は天国でゆっくり過ごすか…。
---って、諦めるなよ!最後まで戦えよ!もっと頑張れよ!
俺は絶対生きる!あっそうだ。あれを---
ファイヤーブレスが俺を激しく燃やした。さすがにやばい。
「「蓮!!」」
ふたりの叫ぶ声が聞こえた。俺の中の何かがぶわっと溢れてきた。
「……。」
永遠と結菜は呆然と立ち尽くした。
「わ、私のせいで蓮が……。」
しだいに、悲しみや後悔が浮かび上がってきて抑えられられなくなりかけた時、
「おいおい、人を勝手に死なせんなよ!」
今もなお燃え続けている炎の中から蓮の声が聞こえた。
「蓮!?無事だったのか!?」
「あぁ、こんくらい余裕だ。……あつっ!」
「……私のせいで死、死んだかと思ったぁ。」
俺は生き残ったがまだ戦いは終わってない。そう、フェニックスは倒してないのだ。
「お前ら戦いはまだ終わってねぇぞ!」
そういうと2人ともはっ、とした顔で武器を構え直した。
フェニックスのいる方は煙でよく見えない。奇襲を仕掛けてくるかもしれないし気を引き締めないと。
やっと煙幕が晴れて見えた光景は…。
「「「えっ?」」」
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