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第5話 イカレチンポ野郎Ⅱ

 舞踏会か何かの帰りだろうか。

 漆黒の燕尾服に身を包み、ステッキを携えている。

 恐らく社交界生活が長いのだろう。

 ただ立っているだけなのに余裕や優雅さを感じさせた。

 どこか哀愁を感じさせる深い紫色の瞳からは、鋭い眼差しがコスモスに向けられている。


 コイツどこのゴミだ?

 コスモスの兄貴か?


 俺がそんな風に勘繰っていると、


「お父様!?」


 コスモスが慌てた様子で燕尾服のイケメンの方を向いて叫んだ。


 コイツ、コスモスの親父か。

 名前は確か『ローゼン男爵』とか言ったな。

 昔どこかの舞踏会で会った記憶がある。


「って!?

 オヤジ!?

 コイツ幾つだよ!?

 どう見ても20代だぞ!?」


 コスモスの親父はめちゃくちゃ若かった。

 ワンチャン学生にすら見える。


 だが俺が思わずそんなツッコミを入れている間にも、ローゼン男爵がカツカツと革靴の音を高くして俺たちの前までやってきた。

 そして、


「コスモス!!!

 こんな時間に何をしている!?

 まさか学校をサボったのかッ!!!!?」


 突然ステッキを振り上げたかと思うと、それをコスモスの手前の床に叩きつけて叫んだ。

 余りの威力に床の木材が凹んでいる。

 凄まじい腕力だった。


「じ、実は学園で暴漢に襲われまして……!

 この方に助けて頂いたんです。

 それでお礼をさせて頂いたんですが……!」


 コスモスが事情を話す。

 まああの状態で登校したら、まず間違いなく校舎に潜んでいるイケメンどもにレイプされるからな。

 授業どころじゃない。


「暴漢!?

 そんなどうでもいい事で授業を欠席したのか!?」


 だが男爵は更に声を荒げて聞き返す。


「い、いえ今日は授業はなく……!

 というか学園全体がいつもと違う雰囲気で……!!

 それで一旦帰宅しようとしたんですが、突然白馬に乗った暴漢たちに襲われまして……!」


 そう言えば俺たち、普段は学園の校舎で授業受けてるんだったな。

 もちろん学園に居る男は全員クズ男やヤリチンばっかなんだが、放課後にナンパみたいな感じで襲われる事はあっても、さっきみたいな集団での強姦みたいな出来事は少なくともオナシスの記憶には無かった。


 となるとゲーム的になにかのイベントがあって、それでさっきみたいな状況になったのだろうか。

 俺自身がこの乙女ゲームをプレイした事がないから現時点では探りようがないが、例えばこの物語が既にバッドエンド的な展開に進んでいるのだとすれば、主人公であるコスモスがレイプされそうになっていたのも理解できる。


 とりあえず情報を集める必要があるな。

 俺がなんでつええのかもよく分からねえし。


 なんて俺がアレコレ考えている内、


「なんという事だ……ッッ!?

 落第するようなメスに今日を生きる資格などないというのに……ッッ!?」


 突然ローゼンが叫んだ。

 片手で彫りの深い顔をワシッと掴み、その場に膝を突く。


「お前が……ッ!

 よちよち歩きの時から今日まで、どんな想いでお前を大切に守り育てて来たか……ッ!!!

 一度だって考えてくれた事はあるのか……ッ!!!?」


「お、お父様……!?

 私いつも感謝しておりますわ!

 でも先ほど襲ってきた暴漢たちは話を聞いてくれなくて……!!」


 コスモスは申し訳なさそうに謝っている。


「感謝などどうでもいいッ!!!

 貴様を一匹育てるのにどれだけの時間と金が掛かったと思っているッ!?」


「え……!?」


 突然ローゼンがその場に立ち上がって言った。

 そしてそのクソデカい両手でコスモスの両肩を掴んで叫び散らす。


「お前を私好みのメスにするために、わざわざ家庭教師や高い学費まで払って育てたのだ!!

 お陰でお前は私好みの実にパーフェクトなドスケベメスとなった!!

 後は無遅刻無欠席で完全卒業という箔をつけるだけだったのにッ!!」


 何言ってやがんだコイツ。


「という事は……ッ!!

 私の部屋に時々近親同士のエッチな本がこれ見よがしに置かれていたのも……ッ!?」


「そおおおおおおだッ!!!!!

 お前を一流のドスケベメスに調教するために私が置いたのだああああああああッツ!!!!!

 だがお前は読まなかった!!!

 何故だ!?

 なぜ私とセックスしたくならない!!!?!?!

 普通はヤりまくるだろうがッ!!!?!?!?」


「えええ!?」


 珍しくコスモスがドン引きしている。


 まあ自分の親がこんな気持ち悪いゴミだとは思いたくないもんな。

 半分はコイツの血が流れてる訳だし。

 生まれてきたこと後悔しそう。


「こうなれば最早レイプしか……ッ!!!!

 親としての責任を取りッッ!!!

 お前を私の二人目の妻にしてくれようッッ!!!

 それが唯一の解決策でありお前の幸せでもあるッッ!!!!!」


 父親が泣きながら断言しだす。

 奴の股間は既に、高級そうなスラックスを破らんばかりに勃起している。


「そんな!?

 イヤです!?

 お父様落ちついて……ッ!?」


「うるさいわッ!!!

 貴様の処女をヨコセええええええええ!!!!」


 父親はそう叫ぶと、コスモスに掴みかかろうとした。

 だが間に俺が割って入る。


「ん゛む゛ぅ~~~~~~んッ!!?

 なんだキサマ!?

 けしからん顔と体つきをしおって!?

 どこの家のドスケベメスだァン!!!?」


 ローゼンは俺に向かって怒鳴り散らしながら、怒張した股間を俺に向かって突き出してきた。

 俺は股間の代わりに中指をおっ立てる。

 そして、


「てめえ。

 さっきからゴチャゴチャ抜かしてるが、

『いい加減娘を犯したくなった』。

 それだけだろ?」


 ローゼンの高い鼻先に突きつけて言った。

 すると奴は、


「フゥン……ッ!」


 と俺を鼻で嘲笑い、


「よくぞ見破ったわドスケベメスゥゥゥンヌ゛ッッ!!!!」


 そう叫ぶや否や、俺の立てた中指を片手で掴んできた。

 そのまま振りかぶるようにして俺を近場の柱に叩きつける。

 背中から柱にぶつかった俺の体は柱を真っ二つに圧し折り、直後。


 ズドドドドドッドドドドドドドドドドッドッッ!!!!


 二階の天井が崩れてきた。

 俺は大量の瓦礫の下敷きとなり、自慢の金髪縦ロールまで埃塗れにされてしまう。


「オナシス様!?」


 コスモスの悲鳴が聞こえた。

 どうやら無事のようだ。


 なんて判断している間にも、俺を押しつぶした瓦礫の向こうから丸太みてえな腕がズゴッと伸びてきて俺の腕を掴んだ。

 そして、


「フゥゥッゥゥゥゥゥッゥゥンヌ゛ッッ!!!!」


 俺の体が空高くブンと放り投げられた。

 そのまま放物線を描くようにして二階から中庭に向かって飛んでいく。


「バアッ!!!!!!」


 直後、ローゼンが俺を追いかけて跳んだ。

 あっと言う間に追いつかれた俺は空中で踵落としを食らい、真っ逆さまに中庭へと落とされた。

 地面に叩きつけられた俺の元に、更にローゼンが迫る。


「死ねいッッ!!!!」


 そう叫んで、奴がステッキを振り下ろしてきた。

 受け止めるか。


 一瞬思って躊躇う。

 なんとなくだが嫌な予感がしたのだ。

 俺は咄嗟に右に旋回してステッキを躱すと距離を取った。

 だが。


 バサリ。


 気付けば俺の制服の胸元がザックリ斬られていた。

 ふとローゼンを見やれば、奴の持っていたステッキがギラリと光っている。

 ステッキの中に30センチくらいの刃が仕込まれていたのだ。

 いわゆる仕込み杖とか言う奴。


「どうしたッ!?

 その程度のスピードでは素っ裸になってしまうぞ!!!」


 叫んでローゼンが俺目がけて突っ込んでくる。

 俺は奴の斬撃を後ろや横に跳んで躱そうとするが、それよりもローゼンの斬撃の方が速い。

 スパスパと俺の制服が斬り刻まれていく。


 コイツ、わざとエロくなるように斬ってやがるな。

 元々ロングだったスカートが超ミニスカートみたいにされている。


「ゥ~~~~ハハァ~~~~~ッ!!!

 どうだ手も足も出まい!!!?

 そぉ~~~~だッ!!!

 お前も私の娘にしてやろうッ!!!

 私の娘と同様に調教しッ!!!

 肉嫁にしてくれるわああああああああッ!!!」


 そう叫んで、ローゼンが俺のスカートの腰ベルト部分を斬ろうとしたその時、


「っせえ!!!」


 俺は奴の振り下ろしてくる刃に向かって直接拳を叩き込んだ。

 奴の仕込み杖は刀身に二重の魔力フィールドを直接編み込む事によって切れ味と耐久性、衝撃吸収性を向上させていたが、お構いなしにブチ折る。

 そして無防備となった奴の右ほおに強烈な左フックをブチかました。


「ゲプルゥンンンババァッッ!?!?」


 ローゼンは情けない声を上げて、コマのように高速回転しながら十数メートル先の中庭の生垣に頭から突っ込んでいった。

 余りの回転速度に芝刈り機みたいに草を刈りながら吹っ飛ぶ。


「なんだ今のパンチッ!?

 全く見えなかった……ッ!?」


 吹っ飛ばされたローゼンが起き上がりながら言った。

 その時には既に俺は奴の後ろに立っている。


「イカレチンポ野郎。

 てめえの手の内は分かった。

 もう殺す」


 俺は呟いた。

 背中越しにも奴が驚いているのが分かった。

 振り向く事すらできていない。

読んでいただき、本当にありがとうございます!








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