第十五章74 【覇王杯/オーバーロード・カップ/ヴィナフェリア・エクセリア・トゥルーヴェリティチーム】22/ショータイム17
ショータイムでは、【一芳】と【アデラ】以外にもなかなかの作品を提出した者も居た。
その数は二十数組と、【ヴィナフェリア】の元に来た数千名という数を考えると非常に少ないが、それでも確かに優れた作品を提出した者は少しだが居たのだ。
それでは中継時間もあまりないので、その中で、もう一名だけ紹介させてもらう。
【一芳】と【アデラ】が音声による表現だったので逆に【無音】、音の無い表現で【ヴィナフェリア】の目を楽しませた者について触れて見よう。
その者の名前は、【次元和尚】。
時の狭間に住んでいる【異界の奇人】である。
彼は、【幻】を作る【能力】を持っている。
【幻】なので、その1つ1つの表現は一瞬である。
【幻】の作り方は、【次元和尚】が【色の付いた光】を発し、それを組み合わせて何かに見える様な現象を作り出すと言うものである。
例えば、先ほどの【ダークネス・ドレス・コード】は音だけの物語なので【画像】が存在しない。
それについての【幻】を作る事によって、【ダークネス・ドレス・コード】の物語を追体験する事も出来るのだ。
【一芳】と【アデラ】の作品とコラボすれば、1つのアニメ映像の様な物が出来ると言う事になる。
【音】だけが良いと言う意見もあるし、【音】と【画像】が合ってないと言う意見もあるだろう。
それはそれぞれの存在の感じ方によって賛否があるのは当然である。
だが、【ヴィナフェリア】には好評だった様だ。
自殺願望があった【アデラ】も【次元和尚】が【絵】を付けてくれた事に感動して生きる希望を持った様なので、良かったと言える事になった。
もちろん、【ダークネス・ドレス・コード】だけを映像化した訳ではない。
ちゃんと【次元和尚】独自の作品も発表している。
これらの作品は【一期一会】であり、【次元和尚】自身にも二度と同じ物は作りだせない。
似たものは作れても録画したものを再生する様に、完全に同じにはならないのだ。
だからこそ良い。
一瞬だから良いのだ。
その儚さが芸術となる。
1つ1つのシーンが一瞬で終わってしまうからこそ価値がある。
それを【次元和尚】は表現して見せた。
【次元和尚】は言葉を発する事が出来ない。
彼は【言葉】を交わす生活をしていないため、【言葉】を発すると言う事が稀だった。
そのため、彼はほとんどしゃべれない。
だが、しゃべれなかったとしてもこれだけ素晴らしい作品を作る能力がある。
それは人間を凌駕すると言う様なものではない。
だが、芸術性は高く、素晴らしいと評価出来るものだった。
【ヴィナフェリア】は十分に楽しんだのだった。




