第九章 くのいち四姉妹 あかりの涙
次の日、11時発のおがさわら丸のタラップを上がって行くと妹3人が手を振っていた。下を見たら見覚えのある顔があった塩谷勝さんだ。星璃はこれで退屈にならないで済むと考えた。「勝さん。今日お帰りですか?後でお聞きしたい事があるので食堂で12時に待ち合わせしませんか?」星璃は勝の目を見て微笑んだ。「はい、わかりました。」勝も星璃の目を見た。二人はタラップを上がってバルコニーに立った。まだ、3人が手を振っているのが見えた。「妹さん達ですか?」勝は星璃に声をかけた。「そうです。」星璃も返事を返した。「みんな!元気でね。バイバイ」星璃は怒鳴って手を振ってこたえた。船が離岸すると3人の姿はみるみる小さくなっていった。勝との思わぬ再会に気をよくした星璃は部屋に入ると荷物をテーブルの上にドサっと置くとベッドにだいぶした。スマホの目覚ましをセットし終わると眠りこんだ。頭の中に今までの仕事のフラッシュバックを見ながら良い休息になった。ぐっすり寝ていたせいかめざましが鳴っているのに気づかず寝ていた。ハッとして目覚ましをみると11時45分だった。15分間気づかず寝ていたのであった。昨晩、八重洲の後で酔ったしまむらで白のワンビースとパンティを10枚を買った。隣にダイソーがあったので化粧品を爆買い、キッチン用品も爆買いした。中に300円の商品も入っていたらしく会計が10000円を超えていた。すぐ起きて、顔を洗い化粧を始めた。つけまつげ、付け黒子をつけて準備万端、食堂へ向かうと勝が食堂の入口で待っていた。一番端に空きテーブルを見つけ二人はそこに座った。勝が星璃の顔をジロジロ見てきた。「なんか変わってませんか?顔、左目の下にゴミがついてますよ。」勝は指を指して指摘した。星璃は、お主の目は節穴かよ。と心の中で思ったが「それは、付け黒子。これ、気づかない!これ?」星璃は右手人差し指でつけまつげをチョンチョンと触った。「つけまつげか!元が良いからわからなかった。」勝は、星璃の目を見て微笑んだ。「そんな、綺麗だなんて。」星璃は自分で言ってから口を押さえた。「勝さんこそ展示会どうでしたか?良い商品ありましたか?」星璃は勝の目を見て微笑んだ。「ありましたよ。テレビとエアコンと洗濯機。もう押さえてきました。」勝は星璃の目を見た。「家のエアコン調子悪いから1台分取り置きしてください。」星璃は勝の目を見た。「あかりさんこそ妹さん達との食事会はいかがでした?」勝は星璃の目を見た。「東京駅の八重洲って所の兜っていうシャブシャブ店行ったんだけど美味しいってありゃしない。なんか今まで食べてた肉が何だったの?って感じ。口の中で蕩けるのよ。勝さんも機会があっら是非!おすすめします。でも高いけどね。」星璃は勝の目を見て微笑んだ。あかりさん。注文何にします。勝がメニューを広げた。「私、コロッケカレー。カレー美味し買ったから。コーヒーは不味いけど。」星璃が勝の目を見た。「僕も同じ物で。」勝はウエイトレスに注文した。「妹さん達皆さん、似てますね。皆さん美人で羨ましいです。一番若い子、カワイイです。」勝は、星璃の目を見た。「勝さんは何方が好みで。」星璃が勝の目を見てニヤリ微笑んだ。「遠いとこからチラっとしか見ていませんが、末っ子の方です。」勝は星璃の目を見て微笑んだ。「澪に負けたか!ちくしょー!私を選んでくれていれば到着までベッドの上だったんだけどな?残念!」星璃は、勝の目を見て微笑んでからかった。「あかりさん。今日着ています。白のワンビース良くお似合いですよ。顔の日焼け具合にピッタリ映えます。惚れちゃうなあ!」勝は、星璃の目を見て微笑んだ。「それじぁ!これ、サービスすっか!」星璃は右手を握って口の前に持って来た。「冗談、冗談!勝さん。今、ムスコがピクりした。でしょ!スケベなんだから。」星璃は、勝の目を見て笑った。悪い冗談に乗せられ所だった。そこにコロッケカレーが来た。「いただきます。」二人はカレーを食べ始めた。「普通のカレーにコロッケが1個乗っただけしゃね。」星璃は、思いっきり愚痴った。「あかりさん。頼み事ってなんすか?」勝が星璃の目を見た。「東京の友達に結婚式のカメラ任されちゃて、取り方わからないから教えてもらえないかと思って、ついでに音声の取り方も頼んだよ。近い内機材届くからそろからで良い。」星璃は勝の目を見た。「わかりました。手とり足とりおしえます。」勝は星璃の目を見た。「よう!宜しく頼んだ。」星璃は勝の目を見て右手を挙げた。「勝さん。本当に手とり足とりはなしだよ。私、本気になっちゃうから。」星璃は勝の目を見て笑った。二人はカレーを食べ終えていた。カレーは飲み物だった。「コーヒーは不味いからいらないか?勝さん。中井明美さんって知り合い?この間、上京の船出会った女性なんだけど、家が勝さんの家の近所だって言っていた。知ってる?」星璃は勝の目を見た。「明美ちゃん知ってるってか、家の隣。」勝は、星璃の目を見た。「なんか言ってたか?」勝は星璃の目を見た。「別に!あれ、どうやって吹かせるんだって話。私、そんなに有名人なの?そのすじに!」星璃は笑いながら逆に質問を返した。「うん。有名人だべ。」勝は、星璃の目を見て微笑んだ。「子供なんか、クジラみてぇなんて話してんぞ!」勝は、星璃の苦虫を噛み潰したよう顔を見て微笑んだ。「そうか!半分バカにされてんだな?」星璃は、だいぶ怒っていた。「バカにされたなんて、酷いですよ。みんな、そういう噂が好きなんです。平和な島だから。」勝は、星璃の目を見た。「私にはそう思えない!この話、終わりにしましょう。」星璃は勝の目を見て涙を流した。「これ、私の分、払っといてください。」星璃は、自分が食べたカレーの金額をテーブルに置いて立って部屋に帰って引き籠もった。暫くするとドアをノックする音がしたが星璃は完全に無視した。部屋のデッキに出て海を眺めていたら悔しい涙がボロボロ出て来てつけまつげが完全に取れた。夕食にも行かず部屋に引き籠もった。お腹が空いのでお土産で買った饅頭を10個食べた。饅頭を頬張りながらボロボロ涙が出てとまらなかった。部屋に置いてあったお茶を飲みながらティシュで涙と鼻水を拭きながら饅頭を食べた。10個食べた所で口の中川甘くなってきたので煎餅をバリバリバリ食べた。デッキに出て海風にあたっていると涙は止まった。暫く走ると島の光が見え始めた。星璃も安堵したのか笑顔が帰って来た。上陸に備え、洗面所で顔を洗い化粧をし直した。つけまつげと付け黒子もついでにつけた。準備万端後は上陸だけ。この顔なら隆志に見せられる。乗客に会いたくないのでタラップに一番最初に降りられよう先頭に並んだ。上陸10分前には先頭にいた。特に塩谷勝には会いたくなかった。船が接岸しタラップが降ろされた。隆志がいるのが見えた。目から涙が流れ始めた。「お帰りなさい。」隆志は星璃の顔を覗き込んだ。「たたいま!」星璃は涙声だった。「話す事が沢山ある。家に早く帰ろう。」星璃は、隆志の顔を見れなかった。「何かあったのか?」隆志は下を向いていた、星璃の顔を覗いた。「あった!あった!沢山あった。」星璃は、隆志の顔を見れずにいた。二人は軽トラに乗って素早くその場を離れた。車の中で涙の理由を話始めた。「船の中で勝さん度明美さんという隣町のひとから悪意のある言葉を投げられた事。ボートレースで2200000円勝った事、東京駅で美味しいシャブシャブを食べた事。ビデオカメラをその電気店に教わろうと頼んだ事。おがさわら丸のカレーと生姜焼きが美味しい事、コーヒーが不味い事。など。仕事に関しては話してない。」星璃は少し元気になってきた。隆志につけまつげと付け黒子を見て貰った。「うん。似合うよ、つくなくても良い女だ。」隆志の優しい言葉に星璃は、今度は身体を揺らしながら泣いた。暫く走ると家に着いた。「ただいま帰りました。」星璃は家の玄関で怒鳴った。「お帰りなさい。あかりさん。」お義母さんが出迎えてくれた。「ご飯出来てるわよ。お刺身たけど。」義母聡子が星璃を見て微笑んだ。「あかりさん。その顔どうしたの?泣いてたの?まつ毛が取れそう。ほくろも、せっかくのカワイイ顔が台無しだわ。」義母聡子が星璃の顔を見た。「お義母さん。お土産、頼まれた物。あったよ。ちょっと食べちゃたけど。ごめん。」星璃は、お義母さんに袋3つを渡した。「あら!こんなに!有り難う。東京駅八重洲で全部揃ったでしょう。あっちこっち行かないようにネットで美味しそうな物選んだのよ。これでも気を使ってるのよ。」聡子は、星璃を見て微笑んだ。「あなた達、ご飯食べたら一緒にお風呂入ってがんばりなさい。3日ぶりでしょう。」聡子は二人の顔を見てニヤリ微笑んだ。「お義母さんも粋な事するわね。私もしたかったんだ。」星璃は、お義母さんと隆志の顔を見て微笑んだ。「来週になったら東京行ったきりになるね。一週間くらい、ビデオカメラの操作の勉強。あてはないけどとりあえず行ってあっちこっちあたってみる。」星璃は、隆志の目を見た。「ビデオカメラの撮影か?時々、海の中を撮るカメラマンが来てるぞ、その人に聞いたら。あかり、スキューバダイビング出来るだろ。たぶん、明日浜にいるはずいってみろ。」隆志は、星璃の顔を見た。ご飯を食べ終えた。「わかった行ってみる。隆志お風呂はいろうよ。」星璃は隆志の目を見た。「今行く、先入ってろ!」隆志は星璃の顔を見た。上着はもう脱いでいた。