第五章 くのいち四姉妹 星璃の心の葛藤
次の日の朝、星璃は、隆志について一緒に船に乗った。二人だけで話したい事があった。「御免!忙しい中、付いてきてしまって、至急話たい事があってね。誰にも聞かれたくない話だから船の上なら平気かなと思って無理言って悪かった。」星璃は、船を操縦する隆志の横顔を見た。「話ってのはさぁ!私達の仕事の話、裏稼業に隆志を仲間にする事は出来ない。全うな人間だから危険な目に合わせられない。私の答え!四姉妹でやる。ハニートラップの件、隆志は、私が他の男に抱かれるの良い気持しないよね。仕事だからっ割り切れないだろ?流石に、ハニートラップは、今後しない。引退する。約束だよ。」星璃は、隆志の目を見て右手の小指を出した。二人は指切りゲンマンをした。「船は、必ずプレゼントする。だから、今回の仕事だけは殺らせて。その後は、皆で決める。私からは以上。隆志、最近魚不漁なんだって、大丈夫なの?銀次さんが言っていたから。心配でね。」星璃は、隆志の横顔を見た。「うん。それは本当だよ。まったくいないって理由じゃないから、稼ぎは少なくなった、以前と比べれば、中国船とかその辺まで来てるし。チョットずつだけだけど苦労かけるな!だからあかりが裏稼業で儲けろって意味じゃないぞ!そこんとこ履き違えないでほしい。俺としてはな。」隆志は、星璃の横顔を見た。「だって、あかり子供出来たら辞めんだろ。裏稼業は。」隆志は、また、星璃の横顔をチラっと見た。「うん。そのつもり、うちらの仕事は、だいたいがお上の仕事だから警察に捕まる事はない。みんなグルだから。公安も内調も。必殺仕事人とは違う!」星璃は、隆志の横顔を見た。「ソロソロ漁場に着くぞ!あかりも手伝ってくれるか?」隆志は、星璃の横顔を見た。「まかせて!」星璃は、気合いを入れた。「網を下ろすぞ!絶対に海には落ちるなよ。救命胴衣着てるけどそれだけでは安全と言えないから。」隆志は、星璃の顔を見たが顔はもう波でびしょ濡れだった。「今日はちょっと波が荒い。」隆志は、また、星璃の顔を見た。「うん。わかった!」星璃が返事を返した。「お前、安定感あるな。感心する。初めて船に乗る女だと思えん。伊達に人殺しやってねぇな!足と腰の使い方が上手い。」隆志は、星璃の顔を見た。「あんたに毎晩鍛えられてっかんなぁ!アハハ!」星璃は、隆志の顔を見て笑った。「こんな時に下ネタが言えるお前が羨ましい。このスケベ女!」隆志は星璃の顔を見た。星璃は、少し怒っていた。「何ぃ!スケベ女って言ったな。その女に毎晩世話になってるスケベ親父の顔が見てえな!ケケケ!」星璃は、ああ言えばこう言う典型的なタイプだった。最後に妖怪みたいな笑いをした。「網入れてから1時間経つったな!巻き上げるぞ。気を付けて!」隆志は星璃の顔を見た。巻き上げスイッチを押した。ブザーが鳴った。上がって来る網の中を確認すると沢山の魚が入っていた。「カンパチ、イソマグロ、キハダ、ロウニンアジ、タイ、アオリイカまでオールスター級だった。大量だな!あかり。結構高く値段がつく魚が入ってやがる。」隆志は、興奮していた。「隆志、かつおはいないの?」星璃が隆志の顔を見た。「かつおはは、この辺じゃ。滅多に採れない。」隆志が星璃の目を見た。「東京で肉ばっかり食っていたから今晩あたりカツオのタタキを生姜醤油で熱燗で一杯やりたかったんだ。」星璃が隆志の目を見た。「あかり、マグロがいるじゃん。カンパチも。でも、今日はステーキだな!」隆志は星璃の目を見た。「ステーキかぁ。昨日、上手く焼けなくてウェルダンになっちまったからなぁ。今日は隆志が焼いてくれ!」星璃は、隆志の目を見て、最後に丸投げした。「焼き方、ウィキペディアに載ってから。」星璃は、隆志の目を見てニヤリ笑った。二人は、網の中の魚を種類ごとに分けた。帰路に着いた。漁協に着いたら銀次さんが居た。「昨日はご馳走様。」一声かけて来た。「こちら、こそ!」星璃は、微笑んだ。漁協に良い値段で買ってもらい、家で食べる分だけデカいクーラーボックスに入れた。クーラーボックスを軽トラの荷台に乗せると二人は、軽トラに乗り込んだ。パスっとドアの閉める音に星璃は首を捻った。星璃は、ヴェルファイアが欲しくなっていた。「隆志さぁ。あの船まだイケる。私、小春の乗っていたヴェルファイアが欲しくなっちゃてさぁ。室内なんか、本皮仕様で豪華でさ。」星璃は、目を輝かせ、軽トラを運転する隆志の横顔を見た。「車かぁ!いらねぇんじゃねぇ。これ、あるし、ヴェルファイアなんて贅沢だ!船の方が大事だべ。俺らの食いっぷちもってくるから。車は、見栄だけだべ。必要ねぇちゃ!小春が言ってたけど車リースってあるんだって、車は現金で買うモノをじゃないらしい。」星璃は、今回は、食い付いた。「漁業はローンなかなか通らないだ!漁協さ仲に入ってもらえば別だけどな。」隆志は、星璃に少し希望を持たせた。「疲れたね。毎日、こんなに疲れていたんだね。知らなかった。夜のお勤め辞めようか?私はどっちでもって言いたいけど毎晩やりたい。私の本音だよ。」星璃は、隆志の横顔を見た。「俺もだ!毎晩やる。疲れていても、決まりきってる。」隆志も星璃の横顔を見た。「よし、決まった。今晩もやる。気持良いだもん。」星璃は、ニヤリ微笑んだ。「ちょっと遠回りになるが佐藤商店寄ってくか。あかり、酒飲みたいんだろ!昨日、俺が空けちゃたから。買って帰ろう。言ってもらって良かったよ。帰ってなかったら喧嘩になる所だった。」隆志が星璃の横顔を見た。暫く走ると佐藤商店の灯りが見えた。「オバチャン、今晩は!あら、あかりちゃん久しぶりね。」星璃がオバチャンに挨拶をした。日本酒2本買った。「有り難うございました。」オバチャンは、頭をさげて、二人の車のテールライトが見えなくなるまで手を振っていた。「酒も手に入れたし早く帰って、マグロを捌いて、ステーキも焼いて一杯やるか!」隆志は、軽トラを走らせた。街頭も少ない島の大通りをひたすら走り続けた。ヘッドライトの光が二人の未来を照らしていた。二人は、カーステレオから流れるR&Bのリズムに合わせて身体が自然に動いていた。仲の良い夫婦だった。幸せが永劫に続きますように。家に着いて、お義母さんと三人の宴は、朝、隆志が出港するまで続いた。隆志は、流石に寝ないと漁に差し支えるので先に寝た。二人のスケベも中止になった。星璃もお義母さんも酒が止まらなかった。隆志が4時になると起きて来た。「遅刻だな!」隆志は呟いた。そんな時、官僚kからの電話が鳴った。「今夜は徹夜ですか?あかりさん。朝早くからすいません。起きていらっしゃたようなので大至急電話しました。ターゲットを一人追加します。お酒は程々に。」kは、それだけ言うと電話を切った。
本来父島の漁業は一本釣りが主体で網は使わない。調べ方が甘かったです。第十章以降は一本釣りに変更します。