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男の娘がヒロインでもラブコメは成立しますか?  作者: @芳樹
3章 その気持ちに、嘘はダメだよ
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第61話 あたしと彼は、友達で親友で…… 前編

 あたしは、ずっと一人きりだった。

 何を好きと言うにも、何をするにしても。

 友達どころか、親しく話す間柄の人間なんていない。両親は仕事が忙しく、家に帰っても会える時間が限られているから、放課後はいつも一人だった。

 好きなアニメを見たり、ゲームをしたりする時間が増えていくばかりで、誰かと遊ぶなんて、今まで一度もない。

 

 「……あたしは、ずっと独りぼっちよ」

 口からこぼれるように話した言葉は弱々しく、どこまでも冷たい。

 自分のことを認めてくれて、本当の自分を受け入れてくれる人なんて、きっとこの世界にはいないんだとさえ思っていた。

 だから彼が言った言葉の数々も、嘘なんだと思い込んでしまう。

 せっかくやさしい言葉をかけてくれたのに、あたしはそれを拒むように受け入れなかった。

 

 「――早乙女」

 今まで散々な事を言い続けていても、ずっと真剣か顔つきのままあたしの話を聞き続けていた彼は、おもむろに空を見上げた。

 そして彼は、ほんの少し戸惑いの表情を浮かべつつ、続けて言葉を紡いだ。


「お前も、独りだったんだな」

「え?」

 そんな彼が口を開くと、意外な言葉を口にした。

 

「俺もずっと独りぼっちだよ。友達なんて誰もいない」

「……なんか意外」

「こんなすぐ手が出る奴を友達にすると思うか?」


 彼の握りこぶしをあたしに見せつけるように掲げていた。

 その拳はとても立派で、おおよそ小学生とは思えないような力強さを感じるのと同時に、その手で何人の相手を屠ってきたのかと想像してしてしまうようないけない想像が容易に出来てしまうような、恐怖を覚える不思議な手だった。

 だからこそ、彼の言っている言葉にすごく重みを感じた。


「……暴力に対しては否定しないのね」

「まぁな。俺にはこれしかないし、話したりするよりも先に手が出ちまう。多分、そう簡単に治りそうにない」

 あたしの話を聞いていた彼は、適当に同情をするとか、なんとなく言い訳をするだとか、そんなことをしなかった。


「お前と一緒だ。自分の正しいと思う事をしているはずなのに、周りがどんどん離れていく。危険だとか、怖いだの言われ続けてるからか、友達と呼べる奴なんて誰もいない」

「――あたしと、同じ」

「そうさ。だから、俺にはお前を否定する資格なんてない」

 そんだけの話、と。最後に付け足して、彼は空に掲げる手を引っ込めてから大きなため息を吐いた。

 まるで、内面に抱えていた悩みを吐露するように、肩の力を抜いてがっくりと地面を見つめている。

 周りから変な目で見られて、孤立している。

 だから、同じように孤立しているあたしを見下したり、馬鹿にしたりすることが出来ないのだと……彼は言いたかったのだろう。

 今思い返してみても、本当に律儀なやつだと思う。


「正直、俺はこのままでいいと思ってたよ。第一、言いたい事とかやりたい事を抑え込んでまで生きていく必要がどこにあるんだよ。俺は、俺にやりたいように生きていくし、正しいと思ったことを曲げる必要なんてない」

 

 自分のやりたいように生きる。

 その言葉があたしの頭を何度も廻った。

 他人の価値観や見方で自分の事を曲げるなんてしたくないし、これからもそう生きていきたいと思っている。

 彼の考えは、あたしに似ている。

 だけど、彼にやり方はあまりにも乱暴なものだ。

 彼のやっていることは正しいとしても、それが暴力によって解決されるものであるのであれば、それは間違っている。

 けれど、当時のあたしにそれを否定する事なんて出来なかった。


 「――でも、それじゃダメだ」

 あたしは複雑な感情を抱えたままどう返事をすればいいかと考えていた矢先に、彼はその場から立ち上がり大きく背伸びをした。

 そして、とある質問をあたしに投げかけた。


「早乙女、お前兄弟はいるか?」

「兄弟……うんん、あたしは一人っ子」

「そうか、なら少し前の俺と同じだな」

 少し前、という含みある言い方が気になり、あたしは首をかしげて彼に質問をした。


「どういうこと?」

「あぁ、父さんが再婚してな。つい最近一つ下の義理の弟が出来た」

「へー。よかったじゃん」

 再婚というワードにつられて生返事をしてしまうと、彼は待ってましたと言わんばかりに声を荒げた。


「は! よくねーよ。あいつ、俺の事を怪物かと勘違いしてるくらい怯えるんだよ!」

「……そうなんだ」

 その体格と言動じゃ無理ないかもしれないと思ってしまった。

 現に、当時のあたしは彼に対して結構な共振を抱いていたし、家の中にこんなのがいると徘徊していると思うと、怖がられても不思議ではない。


「でも、さっきこのままでもいいとか言ってなかった?」

「あぁ、たしかにそう思ってたよ。でも、流石に家族にずっと怖がられるのも居心地悪い……だろ?」

「まぁ、確かに」

「だからその、お前に頼みがあるんだよ」

「お願い?」

 彼は「あぁ」と短い返事をした後に、大きな手を広げてからあたしの目の前に突き出してくる。


「俺に、人付き合いを教えてくれないか?」


※次へ続きます

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