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幕間2 才川家は今日も平和です

「……裕にぃ、おはよお」

目覚めると、目の前に沙癒がいた。


裕作のベットに二人でインしている状態で、同じ枕に頭を預け、柔らかな表情で裕作を見ている。


表情が固まる裕作に対し、沙癒はまだまだ眠り足りないのか、撫でるような甘声は呂律が回っておらず、瞼を閉じては開けてを繰り返している。

昨晩は一人で眠ったはずなのに、今は何故か沙癒と一緒に起床をしていた。


困惑する思考の中、裕作は体を起こす。

すると、それを見た沙癒もゆっくりと起き上がり、あくびをしてから目元に溜まった涙を拭う。


その姿はまるで猫のようで、愛らしさと美しさ、そして無防備な姿に思わず目を背けたくなる。

綺麗な髪は乱れ、可愛らしいピンク色のパジャマはだらしなく着崩している。

胸元のボタンは全て外れており、ゴムが緩み切ったズボンからは可愛らしい下着がはみ出ている。


男でなければ、いや、弟でなければ即死しているようなこの恍惚とした姿を見た裕作は、瞼を擦りもう一度弟の姿を見る。


従来の人間であれば、沙癒の姿に心乱されることは間違いない。

動物的な本能が溢れだし、理性を失い何をしてしまうか分かったものではない。


しかし、そんな姿を見た裕作は、それ以上にとある疑問で頭がいっぱいだった。

いっそのこと幻覚であってくれと思いつつ、目の前にいる弟に話しかける。


「……鍵はかけた、よな?」

そう、裕作は自室に鍵をかけていた。


高等部に進級してからと言うもの、こうして沙癒がベットに潜り込むことが昔に比べて増加した。

何度言っても潜り込んでくる沙癒に対し、裕作が強行策として、ドアに鍵を取り付けた。

それが、昨晩の出来事。


「あー、あれね」


のんびりと返事をすると、パジャマのポケットから小さな針金が二つ取り出され、ご丁寧に目の前の裕作に手渡した。


「裕にぃ、あーいうのは安物じゃダメだよ?」


どうやって開けたのか。

そもそもどうして鍵をかけた部屋にわざわざ侵入をしたのか。

言いたいことは山ほどあるが、そんなことよりも。


「沙癒、今日ホームセンター行こう」

小さな針金を握りしめ、今度はセキュリティ性の高い鍵を探しに行こうと決意した裕作であった。

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