表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メトロボーイ  作者: 亜同瞬
 
8/20

第八話 極秘ミッション

 地下基地に足を踏み入れた友樹たちは、これまで経験したことのない現実の重みを感じていた。ファルコの新たなミッションとして、彼らはこれから「ゲーム」という次元を超え、実戦に臨むことになる。


 それは、地底の前線基地を守るために、実際の戦闘機「アンダーセイバー」をリモート操作し、地底から襲来する敵機「ドローム」を撃退するという極秘任務だった。


「これから託される任務は、ゲームではなく現実の戦いになるのよ」


 ファルコの社員であり、チームを率いる皆月亜里沙が説明を始める。


「君たちは、RCSを使って、実際のアンダーセイバーを操縦します。戦う相手は、地底都市から飛来するドロームという飛行物体です。地底人の技術は非常に進んでいて、彼らはドロームで我々の前線基地を攻撃してきます。これを撃退することが任務になります」


 天野、福田、橋本、小川の四人は緊張した面持ちで説明を聞いていた。

 これまで彼らが体験してきたアンダーセイバーのゲームとは次元が違う。

 敵は実際に存在し、ミスは命取りになる。

 ファルコが提供するこの「極秘ミッション」は、まさに現実そのものだった。



 皆月は、友樹たちに一人一人、特別に用意されたパイロットスーツを手渡した。

 それは軽くて柔軟性があり、動きやすく、まるで身体にフィットするように作られている。


 スーツには、アンダーセイバーの操作に必要なセンサーが内蔵されており、彼らの身体の動きを瞬時に反映するように設計されていた。


「これを着てみて。今から訓練に参加してもらうから」


 スーツに身を包んだ友樹たちは、RCSの各自の操縦席に座った。

 目の前のディスプレイには、遠隔で操作されるアンダーセイバーの映像がリアルタイムで映し出されている。


 彼らが座る操縦席は、実際の戦闘機と同じ感覚を再現するように設計されており、これまでゲームで培ったスキルをフルに活用できるようになっていた。


「アンダーセイバーを発進させる準備を始めて」


 皆月が指示を出すと、友樹たちはメーターや計器類をチェックし始めた。

 彼らがアンダーセイバーを格納庫から滑走路に出した。


 地底の滑走路は短いので、アンダーセイバーは垂直離着陸ができるように設計されている。

 ジェットエンジンの轟音が耳に響き、機体が浮上していく。


 友樹は操縦桿を握りしめ、深呼吸した。

 RCSを通じて、彼が操作するアンダーセイバーがゆっくりと上昇し、地下のトンネルへ飛び込んでいく。


 四機のアンダーセイバーは狭い曲がりくねった地下トンネルを飛んで行く。

 やがてトンネルを抜けると、鍾乳洞のような巨大な氷柱が天井を覆う空間に出た。


 コクピット内にアラート音が鳴り響いた。

 友樹たちの緊張感が一層高まる。


「敵機接近中。ドロームがこちらに向かってきてるわ!」


 皆月の声がコクピット内に響き渡った。


「来たか……」


 福田が緊張を隠しきれない様子でつぶやく。


「さあ、やってやるぞ!」


 いつもは冷静な橋本が興奮して意気込んでいる。


「落ち着いていきましょう!」


 小川がチームの緊張をほぐすよう促す。


 目の前のディスプレイに映し出されたドロームは、ゲームで何度も見慣れた姿と同じだ。

 しかし、今回は現実のものであり、ゲームとは違うかもしれない。

 友樹は、これまでのゲームとは違うプレッシャーを感じながらも、冷静に敵機の動きを観察していた。


「フォーメーションを組んで攻撃を開始しよう!」


 福田の指示に、天野、橋本、小川はそれぞれのアンダーセイバーを操縦し、斜めに連なるフォーメーションからドロームに攻撃を仕掛けていった。


 戦闘は白熱した。


 ドロームは重力を無視したトリッキーな動きで友樹たちを翻弄した。


 福田が機関砲を放つが、ドロームは左右に機体を振って、銃弾を避けていく。


「くそ、ゲームとは違って素早い」と福田が叫ぶ。


「僕がやってみる」


 友樹がドロームにロックオンして誘導ミサイルを発射する。


 ドロームは激しく回避行動を取ったが、友樹のミサイル攻撃は的確で、ドロームに命中した。

 ドロームは大きな爆発音を上げ、火の玉となって崩れ落ちた。


「よっしゃ!よくやった!」


 福田の歓声が無線越しに響く。


 さらに多くのドロームが周囲を取り囲んでいた。


「来るぞ……!」


 橋本が叫びながらミサイルを発射。


 敵機の回避行動は巧みだったが、橋本の狙いは見事に敵機に命中し、また一機が撃墜された」


「いいわよ!この調子で行きましょう」


 小川の声が、チーム全体の士気をさらに高めた。


「俺も負けねえぞ」


 福田が張り切る。


 友樹もまた、機関砲を発射し、敵機を次々に撃墜していった。


 皆月が見つめるディスプレイには次々と爆発するドロームが映し出され、空には炎と破片が舞い上がった。


「みんな、初めての実戦なのに、すごいわ」


 友樹は実感していた。これは単なるゲームではない。

 目の前で撃ち落とされたドロームが、現実の戦闘機であるという事実が、全身に伝わってくる。


「これが……本物の戦場か……」


 友樹は、ゲームの虚構と現実の違いを実感していた。


「やった!」


 福田がドロームを撃ち落とし、歓喜する声が響き渡る。


 次々と敵機が落ちていく様子を見て、友樹たちは少しずつ勝利への手応えを感じ始めた。

 地面にはドロームの残骸が散らばっていた。


 やがて、友樹たちの奮闘によって、全てのドロームが撃墜された。


 コントロールルームではスタッフからも歓声があがっていた。


「ドロームから基地を守れたんだね」


 友樹は息を整えながら、ディスプレイに映る破壊されたドロームを見つめた。


「これで俺たちスキルがアップしたな」


 橋本が笑顔で言った。


 小川と福田も笑顔を見せ、お互いを称え合った。


 友樹たちの初陣は勝利で終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ