第八話 極秘ミッション
地下基地に足を踏み入れた友樹たちは、これまで経験したことのない現実の重みを感じていた。ファルコの新たなミッションとして、彼らはこれから「ゲーム」という次元を超え、実戦に臨むことになる。
それは、地底の前線基地を守るために、実際の戦闘機「アンダーセイバー」をリモート操作し、地底から襲来する敵機「ドローム」を撃退するという極秘任務だった。
「これから託される任務は、ゲームではなく現実の戦いになるのよ」
ファルコの社員であり、チームを率いる皆月亜里沙が説明を始める。
「君たちは、RCSを使って、実際のアンダーセイバーを操縦します。戦う相手は、地底都市から飛来するドロームという飛行物体です。地底人の技術は非常に進んでいて、彼らはドロームで我々の前線基地を攻撃してきます。これを撃退することが任務になります」
天野、福田、橋本、小川の四人は緊張した面持ちで説明を聞いていた。
これまで彼らが体験してきたアンダーセイバーのゲームとは次元が違う。
敵は実際に存在し、ミスは命取りになる。
ファルコが提供するこの「極秘ミッション」は、まさに現実そのものだった。
皆月は、友樹たちに一人一人、特別に用意されたパイロットスーツを手渡した。
それは軽くて柔軟性があり、動きやすく、まるで身体にフィットするように作られている。
スーツには、アンダーセイバーの操作に必要なセンサーが内蔵されており、彼らの身体の動きを瞬時に反映するように設計されていた。
「これを着てみて。今から訓練に参加してもらうから」
スーツに身を包んだ友樹たちは、RCSの各自の操縦席に座った。
目の前のディスプレイには、遠隔で操作されるアンダーセイバーの映像がリアルタイムで映し出されている。
彼らが座る操縦席は、実際の戦闘機と同じ感覚を再現するように設計されており、これまでゲームで培ったスキルをフルに活用できるようになっていた。
「アンダーセイバーを発進させる準備を始めて」
皆月が指示を出すと、友樹たちはメーターや計器類をチェックし始めた。
彼らがアンダーセイバーを格納庫から滑走路に出した。
地底の滑走路は短いので、アンダーセイバーは垂直離着陸ができるように設計されている。
ジェットエンジンの轟音が耳に響き、機体が浮上していく。
友樹は操縦桿を握りしめ、深呼吸した。
RCSを通じて、彼が操作するアンダーセイバーがゆっくりと上昇し、地下のトンネルへ飛び込んでいく。
四機のアンダーセイバーは狭い曲がりくねった地下トンネルを飛んで行く。
やがてトンネルを抜けると、鍾乳洞のような巨大な氷柱が天井を覆う空間に出た。
コクピット内にアラート音が鳴り響いた。
友樹たちの緊張感が一層高まる。
「敵機接近中。ドロームがこちらに向かってきてるわ!」
皆月の声がコクピット内に響き渡った。
「来たか……」
福田が緊張を隠しきれない様子でつぶやく。
「さあ、やってやるぞ!」
いつもは冷静な橋本が興奮して意気込んでいる。
「落ち着いていきましょう!」
小川がチームの緊張をほぐすよう促す。
目の前のディスプレイに映し出されたドロームは、ゲームで何度も見慣れた姿と同じだ。
しかし、今回は現実のものであり、ゲームとは違うかもしれない。
友樹は、これまでのゲームとは違うプレッシャーを感じながらも、冷静に敵機の動きを観察していた。
「フォーメーションを組んで攻撃を開始しよう!」
福田の指示に、天野、橋本、小川はそれぞれのアンダーセイバーを操縦し、斜めに連なるフォーメーションからドロームに攻撃を仕掛けていった。
戦闘は白熱した。
ドロームは重力を無視したトリッキーな動きで友樹たちを翻弄した。
福田が機関砲を放つが、ドロームは左右に機体を振って、銃弾を避けていく。
「くそ、ゲームとは違って素早い」と福田が叫ぶ。
「僕がやってみる」
友樹がドロームにロックオンして誘導ミサイルを発射する。
ドロームは激しく回避行動を取ったが、友樹のミサイル攻撃は的確で、ドロームに命中した。
ドロームは大きな爆発音を上げ、火の玉となって崩れ落ちた。
「よっしゃ!よくやった!」
福田の歓声が無線越しに響く。
さらに多くのドロームが周囲を取り囲んでいた。
「来るぞ……!」
橋本が叫びながらミサイルを発射。
敵機の回避行動は巧みだったが、橋本の狙いは見事に敵機に命中し、また一機が撃墜された」
「いいわよ!この調子で行きましょう」
小川の声が、チーム全体の士気をさらに高めた。
「俺も負けねえぞ」
福田が張り切る。
友樹もまた、機関砲を発射し、敵機を次々に撃墜していった。
皆月が見つめるディスプレイには次々と爆発するドロームが映し出され、空には炎と破片が舞い上がった。
「みんな、初めての実戦なのに、すごいわ」
友樹は実感していた。これは単なるゲームではない。
目の前で撃ち落とされたドロームが、現実の戦闘機であるという事実が、全身に伝わってくる。
「これが……本物の戦場か……」
友樹は、ゲームの虚構と現実の違いを実感していた。
「やった!」
福田がドロームを撃ち落とし、歓喜する声が響き渡る。
次々と敵機が落ちていく様子を見て、友樹たちは少しずつ勝利への手応えを感じ始めた。
地面にはドロームの残骸が散らばっていた。
やがて、友樹たちの奮闘によって、全てのドロームが撃墜された。
コントロールルームではスタッフからも歓声があがっていた。
「ドロームから基地を守れたんだね」
友樹は息を整えながら、ディスプレイに映る破壊されたドロームを見つめた。
「これで俺たちスキルがアップしたな」
橋本が笑顔で言った。
小川と福田も笑顔を見せ、お互いを称え合った。
友樹たちの初陣は勝利で終わった。