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メトロボーイ  作者: 亜同瞬
 
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第六話 アランの誘い

 ワールドEゲームチャンピオンシップの決勝戦を制し、日本チームは優勝の栄冠を手に入れた。東京アリーナの六万人の観客が立ち上がり、日本チームの勝利を祝福する大歓声がドームを揺らした。


「やったー!」


 ステージ中央で、福田が優勝カップを興奮気味に高く掲げた。

 橋本優と小川美咲がハイタッチを交わし、友樹も仲間たちと力強く手を叩き合った。

 長い戦いを共にした仲間たちとの勝利の喜びに、友樹は大きな達成感で満たされていた。


 その夜、友樹たち日本チームは、ファルコ・グループ代表アラン・ベイカーの特別なディナーに招待された。

 会場は東京の高級ホテル最上階の一室。扉が開くと、豪華な料理が並ぶテーブルと、シャンデリアの柔らかな光が友樹たちを迎えた。


「豪華だなぁ……」


 友樹は贅沢な光景に圧倒され、思わず呟いた。

 そこへ、扉が開いて、アラン・ベイカーが姿を現した。

 紺色のスーツに身を包み、優雅で落ち着いた足取りで上座の席についた。

 彼は微笑みながら友樹たちを見回した。


「皆さん、本当におめでとうございます。ワールドEゲームチャンピオンシップでの素晴らしいプレイに、心から敬意を表します」


 周りから拍手がおこり、アランも友樹たちに拍手を送った。


「ありがとうございます! 僕たちも、この大会を勝ち抜けて本当に嬉しいです!」


 福田が代表して礼を言うと、アランは満足気に頷いた


「この勝利は偶然ではありません。皆さんの技術とチームワークは、驚嘆すべきものです。ファルコ・グループは、そんな皆さんと共に未来を築きたいと考えています」


 福田がはしゃいだ様子で隣の橋本に話しかける。


「ワールドツアーのことかな?」

 アランはワイングラスを手に取って一口飲むと、静かに話を切り出した。


「実は、皆さんにぜひお願いしたいことがあります」


 友樹たちはアランの話に聞き耳を立てる。


「君たちのパイロットとしての腕を見込んで、我々が計画している『リトル・ファイター・プロジェクト』に参加してほしいのです」


 友樹たちは顔を見合わせた。


「リトル・ファイター・プロジェクト?」


 耳慣れない言葉に、戸惑っていた。


「これは、世界中から選ばれた優秀なゲーマーを集めて、極秘のミッションに挑んでもらう計画です。君たちの技術は、ゲームの中だけで終わらせるには惜しい。現実の世界で、その力を発揮してもらいたいのです」


 福田がアランに質問する。


「極秘のミッションって、何ですか?」


 アランは一瞬目を細めた。


「驚くかもしれないが、地底には我々の知らない文明が存在しています」

 橋本がスマ―トフォンでネット検索をする。


「地底文明というと……シャンバラとかアガルタのこと?」

 アランは肩をすくめる。


「ちょっと違うな。その国の名は『アストリア王国』というんだ」


 しばらくの沈黙の後、小川が切り出す。


「地底人なんて、信じられない。都市伝説じゃない」

 彼女は呆れたように苦笑いしている。


「そう思うのも無理はない。だが、私は彼らをこの目で見たんだ。彼らは高度な技術力を持ち、人間とは比べ物にならないほど巨大なんだ」

 アランは真剣な眼差しで話した。


「地底人って、どんな姿なんですか?」

 友樹が恐る恐る尋ねる。


「地底人は、身長が三メートルから五メートル近くあって、肌の色は青白く、邪悪な悪魔みたいな顔をしている。彼らは密かに人間を食糧としていて、地上を脅かしているんだ」


「うぇっ、人を食べるんですか?」と福田が気持ち悪そうに舌を出す。


「そんな巨人が地底に……信じられない」小川が震えだす。


「彼らは人を食糧としている。世界では年間百万人以上が行方不明になっているんだ」

 アランの言葉には重みがあった。


「僕らは、その地底人をやっつけるんですか?」と福田が質問する。


「そうだ。彼らは地上の侵略準備を進めている。それに対抗するためには君たちの力が必要なんだ」

 アランの声には強い意志が宿っていた。


「でも……僕たちはただのゲーマーです。僕らは小さいし、まだ子供だし、力にはなれませんよ」

 友樹は不安を抑えきれず、口を開いた。


「君たちはただのゲーマーではない。アンダーセイバーを操る卓越した技術を持っている。それは現実でも通用する力だ」


 そうアランが言い終わると、後ろの壁にスクリーンが降りてくる。

 そこに映し出されたのは、ゲーム内のアンダーセイバーではなく、現実に存在する戦闘機だった。


「我が社が制作した実際のアンダーセイバーです。我々はこれをリモート・コントロールできるようにカスタマイズしています。人の命は大事だからね。君たちには、遠隔操作でこの戦闘機を動かし、地底人の侵略を阻止してもらいたいんだ」


 友樹達はようやく事情が飲み込めてきた。


「なるほど、ゲームをプレイするみたいに戦闘機を遠隔操縦するんですね」

 福田が興奮気味に言う。


「ドローンを操縦するようなものか」と橋本は納得する。


「そうだ、遠隔操作だから、君たちには危害は及ばないことは約束しよう」


「それなら、僕たちにもできるかもな」と福田は乗り気になっている。


「ゲームと現実の差がどれくらいか、気になるな」と橋本も興味を示す。


「私たちの力で地底人の侵略を防ぐなんて、素敵じゃない」と小川も賛同する。


「君たちは最高だ!君たちこそ、人類を救うヒーローになれる」

 アランは満足げに微笑んだ。


「ヒーローだって!かっこいいじゃん!」

 福田が興奮して声を上げた。


「僕たちに、本当にそんなことができるのかな……」

 友樹はまだ不安を拭えなかった。


「あなたならできるわ、天野くん。あなたの技術は誰よりも特別なんだから」

 皆月亜里沙が、友樹の肩に手を置いて励ます。


「はやく実物のアンダーセイバーを見たいな」と福田が言うと、アランは嬉しそうに答えた。


「来週にでも、地下の前線基地に招待するよ」


「やったー!」

 福田たちは喜んで、はしゃいでいる。


 こうして、友樹たちは「リトル・ファイター・プロジェクト」に参加することになり、新たな挑戦に向けて一歩を踏み出すことになった。

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