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メトロボーイ  作者: 亜同瞬
 
3/20

第三話 エースパイロット

 東京アリーナは、かつて見たことのないほどの熱気に包まれていた。

 巨大スクリーンには、間もなく始まるトーナメント第一回戦の対戦カードが映し出され、会場の期待感が一気に高まる。

 アリーナに集まった人々は、ゲームの最高峰に挑む選手たちを一目見ようと、目を凝らしていた。


 トーナメント一回戦

 日本チーム対ドイツチーム

 ステージ/平原フィールド


 ドイツチーム

 リーダー/フリードリヒ・シュタイナー

 ウィングマン/クラウス・ベッカー

 エース/ハンス・ミュラー

 カバー/グレタ・シュミット


 日本チーム

 リーダー/福田貴史

 ウィングマン/橋本優

 エース/天野友樹

 カバー/小川美咲


 映像と共に、両チームの選手たちの顔が映し出されるたびに、観客席から大きな歓声が上がる。

 特に、ドイツのエースパイロットであるハンス・ミュラーがスクリーンに映ると、会場の一角から「ハンス!ハンス!」とコールが湧き起こった。

 アリーナに設置されたスピーカーからは、アナウンサーの声が会場全体に響き渡る。

「さあ、いよいよトーナメント第一回戦が始まります!本日の開幕戦は、強豪ドイツチームと日本チームの対戦です!」

 試合前、両チームはセンターステージで握手を交わした。

 ドイツチームの選手たちは全員が高身長で、筋肉質な体つきをしていた。

 エースのハンス・ミュラーは、冷徹な表情で日本チームのメンバーを見下ろしていた。

 友樹はハンスの視線にプレッシャーを感じながらも、しっかりと握手した。

 ハンスは薄笑いを浮かべ、その手を離した。

 握手が終わると、選手たちはそれぞれの筐体に乗り込んだ。

 コクピットに乗り込んだ友樹は深呼吸し、レバーを握る手に力を込める。

 画面には広大な「平原フィールド」の映像が映し出されていた。

 青々とした草原が果てしなく広がり、わずかに風が吹き抜ける様子までリアルに再現されている。

「天野、準備はいいか?」

 ヘッドセットから、福田の声が響いた。

「はい、準備できました」

「よし、相手はドイツだ。あいつらは強豪だから気を抜くなよ」

「了解!」

 橋本と小川が応答する。


 一方、ドイツチームも最終調整をしていた。

 リーダーのフリードリヒがチームメンバーに声をかけた。

「作戦通りにいくぞ。気を抜くな」

「|Verstanden(了解)」

 エースのハンスが答える。

 クラウスとグレタも同じく応答して、戦闘準備を整えた。


「スタート!」

 アナウンサーの合図と共に、両チームのアンダーセイバーが一斉に空中へ舞い上がった。

 試合開始直後、ドイツチームの動きは速かった。

 特にエースであるハンス・ミュラーは、銀色の機体を彗星のように恐るべき速度で日本チームの編隊に突っ込んできた。

「突っ込んで来るぞ!」

 福田の声が無線越しに響いた。

 ハンスは開始早々、日本チームの編隊に向けてミサイルを発射。

 HUDヘッドアップディスプレイに表示されたミサイル警告が点滅する。

「いきなりミサイルかよ!」

 福田が叫び、操縦桿を引いて機体を回避させた。

 友樹も即座に動き、左右に機体をスライドさせながら敵のミサイルを避ける。

 ミサイルの追尾音が響き、すぐ背後で爆発音が聞こえた。

「こっちに来てる!」と小川が叫ぶ。

 彼女の機体にはホーミングミサイルが追尾してきていた。

「フレアを撒いて!」と橋本が助言する。

 小川は指示に従い、フレアを発射。

 白熱するマグネシウムの光が空に散り、ミサイルはそちらへ向かって爆発した。

「ふぅ、危なかった……」

 小川が安堵の声を漏らす。

 だが、その直後、ドイツチームのウィングマン、クラウス・ベッカーが橋本に向かって機銃掃射を開始する。

「助けてくれ!」

 橋本が絶叫する。

「今行く!」

 福田が機体を急旋回させ、橋本を援護しようとする。

 しかし、その動きを見越していたハンスの銀色のアンダーセイバーが、後方から機銃を浴びせた。

 福田の機体は被弾し、コントロールを失う。

「ぐわっ!やられた……!」

 福田が悔しげに唸った。

「福田くん、大丈夫?」

 友樹が無線で声をかけるが、福田の機体は制御を失い墜落した。

「こっちも追いかけられてる!」

 小川が焦りの声を上げた。

 ドイツチームの連携プレイで、日本チームは次々と分断されていく。

 友樹は冷静に状況を分析した。

「まずは、ハンス以外の敵を撃墜しよう」

 彼はスロットルを一気に開放し、クラウスの機体を追尾。

 橋本を追い詰めていたクラウスの背後に回り込む。

 HUDの照準が徐々にターゲットを捕捉していく。

「ロックオン!」

 ミサイルが発射され、クラウスの機体に直撃。

 機体が炎を上げ、爆発しながら落下していく。

「助かった!」

 橋本が友樹に感謝した。

「覚悟しろ、アマノ!」

 今度はフリードリヒが友樹を狙い、急速接近してきた。

 フリードリヒ機は、二発のレーダー誘導ミサイルを発射してきた。

 友樹はチャフ(レーダー妨害デコイ)を撒いて回避する。

 一発のミサイルは避けたが、もう一発がまだ追尾してきていた。

「くそ、まだ追ってくる!」

 友樹は咄嗟に、小川機とグレタ機の交戦している場所に急速接近した。

「小川さん、上に逃げて!」

 友樹が無線で指示すると、小川は即座に急上昇した。

 グレタの機体が追撃するために機首を上げた。

 その瞬間、友樹の後ろを追尾していたミサイルがグレタ機を直撃する。

 グレタ機は大爆発して、平原に墜落していく。

「助かったわ、ありがとう!」

 小川の声が無線に響いた。

 フリードリヒは友樹を狙い、再び機銃を放ってきた。

 友樹は急旋回を繰り返し、攻撃をかわし続ける。

 その時、橋本機がフリードリヒ機の後方を取り、ミサイルを発射。

 ミサイルがフリードリヒ機に命中し爆発した。

「さっきの借りは返したぜ!」

 橋本が笑い声をあげる。

「ありがとう、橋本くん!」

 友樹は感謝の気持ちを伝える。

 最後に残ったのは、ハンス・ミュラーの機体だけだった。

 ハンスは友樹の機体に照準を合わせた。

「よくも仲間を……!」

 ハンスの声が怒気を帯びていた。

「ハンスは僕がやる!」

 友樹は覚悟を決め、一対一のドッグファイトに突入した。

「ここからが本番だ、アマノ!」

 ハンスは冷笑しながらミサイルを放つ。

 友樹はフレアを使い、巧みにそれを回避した。

 ハンスは後方から機銃掃射を浴びせる。

 友樹はその動きを読み、機体を垂直に引き起こし、急激に減速。

 コブラ機動でハンス機の後ろに回り込んだ。

「なに……コブラだと?」

 ハンスが驚きの声を上げた。

「くらえ!」

 友樹は機銃を発射し、ハンスの銀色のアンダーセイバーを撃墜した。

「やった!」

 友樹は歓喜の声をあげた。


 試合結果

 日本チーム/残り三機

 ドイツチーム/残り〇機


 日本チームは、世界の強豪ドイツチームを破り、トーナメント一回戦を突破した。

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