第十六話 救出
その頃、福田、橋本、小川の三人は、友樹がアランに会いに行ったまま戻ってこないことを心配していた。控室で何度も時計を確認し、苛立ちと不安が交錯する。
「なかなか戻ってこないな……」
福田は焦った様子で部屋の中を行ったり来たりしていた。
「さすがに遅すぎるよな。こんなに時間がかかるとは思わなかった」
橋本も、冷静を装いつつも、友樹の安否が気にかかっていた。
「天野君が無事ならいいんだけど……」
小川は心配そうに下を向く。
その時、部屋の中に青い光が現れた。
「うわっ!何だ?」
福田が叫ぶ。眩しい光に三人はまぶしくて目を細めた。
光の中から現れたのは、エシャトゥーラだった。福田たちは驚き、目の前に現れた巨人に困惑した。
「あなたが、地底人なの?」
小川が恐る恐る話しかける。
「はじめまして、私はエシャトゥーラといいます」
エシャトゥーラはうなずいて、深刻な表情で彼らに告げた。
「友樹は、アランによって独房に監禁されています」
「何だって……アランが?」
福田が目を見開いて驚いた。
「そんな……天野君が監禁されているなんて、信じられない……」
小川は目を潤ませ、声を震わせた。
「天野を助けに行こう!」
橋本の提案に福田と小川がうなずいた。
そこへドアを開けて皆月が入ってくる。
「みんな、そろそろ帰る時間よ」
皆月は目の前に立つ青い巨人を見て、驚いて後ろにのけ反った。
「だ、誰?」
「この人は地底人なの」
小川が説明する。
「ち、地底人ですって……」
驚く皆月にエシャトゥーラが事情を説明する。
「そうだったの……私も知らなかったわ」
皆月はまだ事情を全部は飲み込めなかった。
「まさかアランがそんなことをするなんて、信じられない……」
彼女はしばらく考え込んでいたが、やがて決心がついたように顔を上げた。
「わかった、天野君を助けましょう」
こうして、友樹を救うための緊急救出作戦が始まった。
皆月は基地内の大半のエリアに入ることができるセキュリティカードを持っていた。
「独房は基地の中でも最もセキュリティが厳重なエリアにあるわ」
皆月と三人はエレベーターに乗って地下階に降りていった。
独房付近には監視カメラが至る所に設置されており、さらに警備員も巡回していた。
センサーも張り巡らされており、侵入者を感知すればすぐにアラームが鳴る仕組みだ。
「セキュリティがすごいな……どうする?」
福田が周囲を警戒しながら小声で尋ねた。
「警備システムをハッキングしてみる」
橋本が携帯端末を操作し始めた。彼の得意分野であるハッキング技術を駆使して、監視カメラやセンサーを無効化する。
「橋本、でかしたぞ」
四人は独房のあるエリアへと進んでいった。途中、巡回する警備員の姿が見えたが、橋本の指示に従って巧妙に避けながら進んでいく。
「今だ、急いでこの廊下を横切れ!」
橋本が指示を出し、全員が一気に廊下を駆け抜けた。
しかし、予想外の事態が発生した。警備員が物音に気づいて振り返ったのだ。
「誰かいるのか?」
警備員が疑いの目を向け、こちらに近づいてくる。
「しまった、見つかる……」
福田たちに近づいた警備員の背後に青い巨人が現れる。
「うわあああ!」
振り向いた警備員は驚きのあまり気絶してしまった。
「ふう、助かった……」と安心する福田。
ようやく友樹が閉じ込められている独房の前にたどり着いた。皆月がセキュリティカードをかざすが、扉は開かない。
「セキュリティレベルが高くてカードが効かないわ」
「どうしよう……」と小川が困惑する。
福田がドンドンと扉を叩く。
「おーい、天野!そこにいるのか?」
「私がやってみましょう」
エシャトゥーラが手をかざすとセキュリティが解除され、扉が開く。
「すげー、開いちゃったよ」と驚く福田。
「我々の文明は五千年進んでますからね」
エシャトゥーラが微笑む。
部屋の奥には友樹が壁にもたれて、うなだれて座っていた。
福田たちが部屋に駆け込んでくる。
「天野!大丈夫か」
友樹は顔を上げて、福田たちを見回す。
「みんな……助けに来てくれたんだね」
彼は救出に来てくれた仲間たちの顔を見て、ほっとした表情を浮かべた。
「ありがとう……」
小川は涙を浮かべながら友樹を抱きしめた。
「無事でよかった!」
友樹はエシャトゥーラを見つけて、「ありがとう」とテレパシーを送る。
エシャトゥーラはうなずいて微笑み、あとは友樹たちに任せたというように粒子となって消えていった。
「天野君、立てる?」と皆月が声をかける。
友樹はゆっくりと立ち上がり、覚悟を持った顔つきに変わっていた。
「皆月さん、アランの所まで連れて行ってください。彼の計画を止めなきゃいけないんです」