第十五話 裏切りの代償
友樹は、前線基地を訪れていたアラン・ベイカーと面会する機会を与えられた。
オフィスに招かれた友樹はアラン自身が出迎えた。
「やあ、天野君。よく来たね」
アランはご機嫌な笑顔で友樹と握手した。
「何か私に話したいことがあるんだって?」
友樹は緊張を解くように、深く息を吸い込んだ。
「アランさん、以前お話ししていただいた地底人について、ご相談があるんです」
「ああ、地底人のことか」
アランは少し眉をひそめながら返事をする。
「実は、地底人に会ってきたんです」
その言葉に、アランの表情が一瞬にして変わった。
「エシャトゥーラをご存じですよね。」
アランは目を見開き、驚きを隠せなかった。
「彼に会ったのか!」
友樹は深くうなずいた。
「エシャトゥーラから聞きました。彼らは決して地上を侵略しようとしているわけではなく、むしろ、平和を望んでいるんです。あなたが僕たちに教えたこととは全然違います。エシャトゥーラたちは、ただ自分たちの文明を守りたいだけなんです」
友樹はエシャトゥーラから聞かされた真実をアランにぶつけた。
しかし、アランは冷静な表情を崩さなかった。
「君がそんなことを言うとは……驚いたよ、天野君。」
アランの口元には、薄っすらと冷笑が浮かんでいる。
「残念だが、君の言うことには何の根拠もない。それに、仮に君が本当に地底人に会ったとして、それがどうしたというんだ?」
その態度に、友樹は憤りを感じた。
「僕は本当に地底人に会ったんです。あなたが彼らの技術を盗み、それを利用して戦争を引き起こしたことも知っています」
アランは立ち上がり、机の上に置かれた呼び出しボタンに手を伸ばした。
「君には、少し頭を冷やしてもらう時間が必要だ。警備を呼んでいるから、個室で静かに反省してもらおう」
ボタンを押すと、すぐに屈強な二人の警備員が部屋に入ってきた。
「待ってください!話を聞いてください!」
友樹は必死に叫んだが、アランは耳を貸さず、冷たい目で見下ろしていた。
「独房に閉じ込めておけ。彼には反省が必要だ」
友樹は抵抗する間もなく、二人の警備員に強引に連れ去られた。
友樹は引きずられるようにして、暗く狭い独房に押し込まれた。
扉が閉ざされ、重々しい鍵が掛かる音が響き渡る。薄暗い独房には、簡素なベッドと硬い椅子が置かれているだけだった。友樹はそのまま床に座り込み、両手で顔を覆った。
「どうしよう……」
そのとき、友樹の頭の中にふとエシャトゥーラの声が響いた。
「友樹……大丈夫か?」
その声に友樹はハッと顔を上げた。
「エシャトゥーラ……ごめん、僕の力じゃアランを説得できなかった。彼は聞く耳持たないんだ……僕にはどうしようもなかったよ……」
友樹は涙を浮かべながら話した。
「諦めてはいけない、友樹。君は一人じゃない。君には仲間がいるじゃないか。」
エシャトゥーラは優しく励ました。
「でも……僕がここにいることを、みんな知らないよ。福田たちにも何も伝えられなかった。」
友樹の声は弱々しかったが、その心にはまだわずかな希望が残っていた。
「私が君の仲間たちを呼んでくる。必ず助けに行くから、待っていて。」
「うん、待ってるよ。信じてるから……」
友樹は独房の暗闇の中で、仲間たちが自分を救い出してくれることを信じて、じっと耐えた。