67. 孫娘はエピローグを語る
大好きな祖母が亡くなった。
晩年は結構ボケてきていて。心配だった私は、なるべく学校の前後に家に寄るようにしていた。
そしてそんなある日の朝、祖母は眠るように息を引き取っていた。
「おばあちゃん……」
祖母は強くて優しい人だった。畑仕事が趣味でいつでも畑にいた。料理も得意で、よく振る舞ってくれた。
夏は縁側で、冬はこたつで。のんびりと話すのが至福のひとときだった。
『ほら、持ってきなさい』
家を訪れれば、必ず野菜と缶ジュースを持たせてくれて、甘やかしてくれた。愚痴をこぼせば聞いてくれて、成績が上がったり賞を取れば自分のことのように喜んでくれた。あんまりにも誉めてくれるものだから、私は照れて、「それはじじバカ、ばばバカだよ」なんて言うこともしょっちゅうだった。祖父母は笑っていた。
『おい恵美子。これ』
『あら帽子。忘れてたわ。ありがとうあなた』
『自分の年くらい考えろ。今、日射病になればすぐあの世行きだ』
『たまたま忘れただけじゃありませんか。とかなんとか言って届けてくれるくせに』
そして、祖母は祖父と凄く仲が良かった。いつも喧嘩のような惚気のような話をして、笑っていた。二人ともお互いがいない時に、こっそり教えてくるのだ。祖父は少し気難しい人だったけれど、祖母を見る目が、とにかく優しくて。私はそれを見るのが好きだった。
『おじいちゃん……』
そんな祖父が癌で亡くなった。祖母は一見気丈なように見えたけれど、やっぱり悲しそうだった。それからというもの、祖母の口から祖父のことは語られなくなった。あれだけ、孫に惚気ていたくせに。
『まったくあの人ったら』
『でもね、昔は野菜が嫌いだったのよ』
『不器用な人よねぇ。そこが可愛いのだけれど』
私には、わざと思い出さないようにしているとしか思えなかった。
大好きな祖母が、大好きな祖父を忘れてしまうのが嫌で、たくさん話題を振ったのは、未だ記憶に新しい。
「ああ、これ……」
遺品を整理していると、タンスの中から一台のゲーム機を見つけた。ああ、これは。
『乙女……げーむ?』
『ボケ防止にいいよ! 多分!』
『それって機械なんでしょう? おばあちゃんはそういうのダメなのよ』
たまたま中古で買った乙女ゲームだった。よくある、主人公が平民だけど凄い力を持っていて、学園で恋愛をするやつ。いろんなタイプの攻略対象の好感度をあげて、悪役令嬢を断罪して、卒業式で誰か一人選ぶエンド。
普通こんなの祖母に勧めない。でも、何をとち狂ったのか、私は必死だった。
『だってこのキャラとかおじいちゃんの若い頃に似てるんだよ!! ほら、おばあちゃんこの間、おじいちゃんの顔忘れてきちゃったって言ってたじゃん!』
そのキャラは外部講師だった気がする。確か、お見合いでこっ酷く振られて、痩せた努力系キャラ。見た目と性格が祖父そっくりで、勢いのままに祖母に語ったような……。結局祖母は機械音痴だから無理だったけれど。
なんだか懐かしい気分になって、これは持って帰ることにした。
「今頃天国で仲良くやってるかなぁ」
なんて呟きながら、引き出しの中の大事なもの入れに乙女ゲームのカセットをしまう。きっと、もうやらないだろうけど、思い出として残しておきたかった。
────その祖父と祖母がまさか乙女ゲームに転生し、ストーリーをいい方向にめちゃくちゃにした挙句、もう一度結婚したことなど、孫は知る由もない。
今までお付き合いいただき本当にありがとうございました。完結です。
いいね、ブクマ、評価、感想、コメントなどとても励みになりました。一日三話を続けられたのも読者様のおかげです。
|ω・`)お疲れーくらいの感じでひょいっと評価していただけると喜ぶ秋色だったりします)
追記 レビュー、誤字報告ありがとうございます
繰り返しとなりますが、読んでいただき本当にありがとうございました。ただ一年くらいは四季に合わせて少しだけ番外編を出す予定ですのでその時は読んでくださると幸いです。またどこかでお会いできたら嬉しいです。




