表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/71

51. 菜の花はおひたしに



「あらケンさん。どうしてここに」

「探していた」

「まぁ」


 すっかり春の陽気になってきた今日この頃。私が摘んでいるのは菜の花。そう、黄色い花で有名なやつですね。


「花を摘んでいる……わけではなさそうだな」

「ええ、咲く直前の蕾ですよ」

「食えるのか」

「さすがケンさんご名答」


 菜の花はじんわり苦くて美味しいのよねぇ。酢味噌和えでもおひたしでも、単純にマヨネーズでもいい。

 近くに菜の花がたくさん咲くところがあるからと毎年採っているのだけれど、家族は食べてくれないのよねぇ。


「朝のスッとした空気の中、菜の花がいい匂いだわぁ」

「……そうだな」


 今は朝だけれど、「菜の花や 月は東に 日は西に」なんて有名な俳句もあったわねぇ。

 昔学校で習ったような気がするわ。大昔も、昔も、今も、みんな菜の花が好きなのねぇ。


「あら、摘んでいくんですか」

「……ん」

「帰りにしなさいな。萎れてしまいますよ」

「ああ」


 気に入ったのかしら。あの人も菜の花好きだったものね。

 確か花言葉は、小さな幸せ、快活……。


「元気いっぱい」

「何がだ?」

「花言葉ですよ、花言葉」

「ああ、だからか」


 何がだからなんでしょう。

 さて、持ち帰って茹でて朝ごはんにしましょうかね。


「朝ご飯、食べていくでしょう」

「ああ」


 というわけで名残惜しそうですが、屋敷に戻りまして。お勝手にてまずは水洗い。


「そうしたらたっぷりの水に十分くらい浸けて」


 その間にお湯を沸かします。茹でる用だからこれまたたっぷり。塩少々。


「これくらいでいいですかね?」


 水に浸け終わったら、上下半分に切る。それぞれ分けてサッと茹でまして。水につけて軽く絞る。


「菜の花はですね、さっと茹でるのが大切」


 おひたし全般そうですけどね。

 さ、これで完成。あとは醤油、鰹節、出汁でいただきましょう。

 ふと横を見るとワクワクした様子のケンさん。そうよねぇ、菜の花大好きでしたもんねぇ。


「ちょっと味見します?」

「する」


 朝ご飯でも食べますけど……まあいいでしょう。味見は大事よ、味見は。


「はいどうぞ」

「いただきます」


 と箸でそのまま渡せばパクりと。もう慣れたものね。というか私昔からずっとこうしてるわ。最初の頃に躊躇なくあげられた理由が今わかったわね。


「うまい。このじんわりとした苦さがいいな」

「あなた山菜も好きだものねぇ。明日にでも採りに行こうかしら」

「山菜……?」


 ちょうどうちには裏山がありますし。今の時期なら……。


「ああ、そういえば」

「なんだ急に」

「今日はなんのご用件で」


 私今日は呼んでませんもの。一体どうしたのかしら。今更だけれど。


「ああ、婚姻の件で話にきた」

「ああ、婚姻の件で……って早くそれを言いなさいな!」

「別にそんな慌てた話じゃない。いつ頃式を挙げるかという話だ」


 ああ、そうよね。もう一回しなきゃよね……って私貴族よ? 結構重大じゃない。婚約ですらサラッと決められてしまったけれど。結婚となると招待客に日程に……。

 貴族社会が苦手なのがここで仇と。どうしましょう……そんなの無理ですよ。

 内心うんうんと悩んでいる私をつゆ知らないケンさん。


「いつにするんだ?」

「……もうお父様と決めてください」


 私的にはもうずっと夫婦なので。今更言われましても。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓をタップしますと連載中の作品に飛びます。
隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ