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50. たけのこ堀りは大変だな



「桜があるならもしかしてと思ったんですよ」


 そう言って見せつけられたのは、地面から少しだけ生えている先の尖った野菜のようなもの。なんだこれは。


「たけのこって言うんですよ」


 エミリーは楽しそうにこれは野菜だとか育ったら竹になるとか話してくれる。なるほど。

 今日は朝早くからこれを掘っていくということか。


「さ、掘っていきますよ」

「だから汚れてもいい格好で来いと言ったのか」

「これだけのたけのこを一人で掘るのは大変なんですもの」


 それに少しでも放っておいたら味がおちてしまいますし、と。なるほど、これは育ちすぎると不味くなるのか。

 エミリーはたけのこの近くをガツンとクワで掘り始めた。そして、何やら手応えがあったらしく、少し手で掘る。根のようなものをナイフで切って、またクワで掘り起こした。


「こんなに大きかったのか」

「これでもまだ小さい方ですよ。だから頭が出たくらいで掘らなきゃダメなんです」


 どうやらある程度小さい方がいいらしい。自慢げな表情が物語っている。

 というか危ない。後ろに転んで山から転げ落ちたらどうする気だったんだ。


「やる」

「はいはい。ちょっとコツがいりますけど……まああなたなら大丈夫でしょう」


 エミリーがいうには、ずんぐり太くて重く、穂先が黄色で色つやがいいと上物らしい。あとは根元のぶつぶつが少なく色が薄いとアクが少ないのだとか。


「そうそう。そんな感じです」


 このたけのことやらは地下茎から伸びていて、まずはこのクワで根を切るんだな。コツというのは掘り起こす時の梃子の原理のことか。そして付け根の部分をナイフで切ると。結構硬いな。あの小さい体のどこにそんな力が……ますます謎が深まったな。


「流石上手だわぁ」

「ん」


 相変わらず、エミリーに褒められると嬉しい。格好良く見せたいし、頼られたい。これは何なんだろうな。

 そんな風に考えている間に粗方掘り終わってしまった。流石に少し手が痛い。鍛えているつもりだったんだがな。


「さて、茹でましょうか!」

「俺が持つ」

「じゃあお願いしますね」


 お願いだからそんな当たり前のように重い籠を持つな。怪我でもされたら正気じゃなくなる自信がある。

 奪って背負った。凄く重い。なんだこれは。背負えないほどじゃないがエミリーの体格では普通無理だろう。


「まずは洗って皮を何枚か剥がします」


 もはや私物化されているカーレス家の台所でひたすら洗って皮を剥く。広くてよかったな。

 

「このブツブツは取りますよ」


 俺が下の方にあるブツブツを剥がしている間に、エミリーは穂先を斜めに切り落とし切れ込みを入れているようだ。


「あとは鍋に入れて、糠と鷹の爪を」


 そう言って、大鍋にたけのこが浸かるくらいの水と、米糠、唐辛子一本を入れた。


「落とし蓋をして煮て」


 あとは三、四十分待つらしい。たけのこは大変なんだな。


「根元に串を刺して柔らかくなっていれば完成ですよ」

「……ああ」


 エミリーがニカッと笑う。眩しい。目がしぱしぱする。少し疲れた。

 

「完全に冷めてから取り出して、水洗いをして、硬い皮の部分を剥けば……ってあらあら」

「なんだ」

「お疲れ様です。寝ていて大丈夫ですよ」


 なんでわかるんだ。テオでさえわからないと言うのに。


「いや」

「いいから、ほら、膝を貸しましょうか」


 よくよく考えれば、こんなのはおかしい。分かっているのだが……。


 目が覚めた時には、エミリーの膝の上に頭が乗っていた。

 不覚だった。



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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
― 新着の感想 ―
[良い点] 旦那を勝手に見限って捨てる話がなろうに多い中、こういうほんわりじんわりなお話に癒されます
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