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43. 年末は大変ですね



『…………はぁ』


 なんてケネス様が深刻そうにため息をついていたのが三日前。話を聞けば、


『仕事がより忙しいのに、パーティーを開かなければならない年末が大嫌いだ』


 とのこと。

 どこの世界でも、年末は忙しいのねぇ。クリスマスの日に仕事を終えてきたのって奇跡に近かったんじゃないかしら。

 ……そう考えるとなんだか凄く申し訳なくなってきまして。


『じゃあどれだけ遅くなってもいいから、パーティーが終わったら、うちにご飯食べにきてくださいな』


 開く側は全然食べられないのでしょうし。ご褒美があれば少し頑張れるでしょう?

 そう言うとケネス様はまた周りに花を飛ばして元気を出したのを思い出しまして。



「さて、まずは畑からネギを引っこ抜いてきましょうかね」


 うんうん、収穫するのにちょうどいい太さだわ。ネギは植え溝を作らなきゃいけないからちょっとめんどくさいのよねぇ。

 こうやってうねの片側をクワで崩して。この時ネギを傷つけないようにするのが大切。


「あとは春菊〜」


 うちで育てているのは株ごと収穫するやつ。ガッと持ってぶち抜いたら、根のすぐ上をハサミで切る。


「野菜の下処理とご飯の支度して待ちましょうかね」


 それももちろん終わってしまって。


「編み物でもしようかしら」


 カチコチと時計が音を立てるのにうんざりしてきた頃、やっとお勝手をノックする音が。


「……すまない、遅くなっ」

「っおかえりなさい!」

「…………ただいま」


 あらやだお出迎えが勢い良すぎたかしら。ケネス様は少し驚いた後、ふっと笑いまして。


「さ、お夕飯にしますよ。今日はすき焼きです」

「すきやき?」

「そう、すき焼き」


 本当なら年越し蕎麦なんですけどねぇ。流石に蕎麦はありませんでした。来年にでもソバを育ててみようかしら。

 すき焼きは、確か江戸時代に鋤を鉄板代わりにして魚を焼いていたことからきているのよね。


「さ、寒かったでしょう。暖炉のそばにでも座っててくださいな」

「……いい。見ていたい」

「ああそう」


 今日の具材は、ネギ、白菜、春菊に、焼き豆腐、椎茸。まず野菜をよく洗って、食べやすい大きさに切りまして。きのこはえのきでもいいけれど椎茸の方が食べ応えがありますかねぇとうちはしいたけ。

 そうしたら、牛脂で春菊以外を炒める。ネギは軽く焼き目がつくくらい。炒め終わったら、すき焼き用鍋に入れてと。大体の場所を分けつつ、豆腐も入れる。同じく牛脂で肉をサッと焼いたら、野菜と野菜の間の開けておいたスペースに入れる。

 割り下を肉にかけながら入れて。割り下はいつも出来合いのを使っていたのだけれど流石になくて、しょうゆ、みりん、砂糖、だしで手作り。

 煮て全体があったかくなったら完成。春菊は煮えてきたら脇に入れて食べましょうね。くたくたになっちゃいますから。


「すぐだったな」

「私は効率重視なんです。早く食べられた方がいいでしょう?」

「ああ」


 さ、いただきましょうか。今年もいっぱい美味しいものが食べられましたね。


「「いただきます」」


 まずは卵を割りまして。ああ、安心してくださいな。うちで採れた安全で新鮮な卵ですから。

 お肉と野菜を潜らせてパクリ。これよ、これ。お肉と野菜の旨みの調和と味の濃い割り下が至福。それを包み込む卵。ネギは甘くて白菜は汁を染み込ませてなおシャキッと。


「……これはなんだ?」

「春菊ですよ」

「独特の苦味と風味があるな」

「美味しいでしょう?」


 あの人も春菊好きだったのよねぇ。やっぱり似てるわ。ごめんなさいね、許してちょうだい。婆は細かいことは気にしないの。


「今年も一年、お疲れ様でした」

「来年も食わせてくれ」

「はいはい」



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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
― 新着の感想 ―
[一言] カ○○ムから来ました。 こちらでは完結しているんですね。続きを楽しく読ませていただきます。
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