41. クリスマスでぇと……?
「……突然になってすまない。一日付き合ってくれ」
「はい?」
いよいよ年末に近づき、一層寒くなってきた今日この頃。朝っぱらから訪ねてきたケネス様。
「何に付き合えば……」
と聞くと、遠い目をされまして。
何をそんな落胆する要素があるんです?
「今日は何の日だ?」
「二十日大根の種を蒔く日ですが」
「違う」
じゃあ何の日です? 私は今日二十日大根の種まきをしようと思っていたのですが。それ以外は知りませんよ。
「今日はクリスマスだ」
「ああ、そういえばそうでしたね」
「……普通忘れないだろう」
呆れるケネス様。
仕方ないじゃありませんか。そりゃ幼い頃はうちでお祝いもしていましたが、すっかり育ってからは、我が家はいつもお父様が遠縁の親戚の家のパーティに行くだけですし。もちろんお姉様とお義兄様の邪魔をする気もありません。せいぜい使用人を早く帰らせるくらいですよ。
「我が家はあまりそういうの行事に関心がないんです」
ああ、だから最近色恋沙汰の相談が多かったのね。納得だわぁ。
「出かけるぞ」
「えぇ、どこに」
「王都だ」
「これまた遠いところで」
まったく強引なんだから。じゃあ着替えてこなくては……服をどうしましょう。この間のドレスは……寒すぎますし。
「…………」
「服なら向こうで買えばいい」
「王都の服屋なんて高いから無理ですよ」
「俺が買うに決まってるだろ」
いや、そんな悪いですよ。というかあなたは私に服を贈りすぎです。あの服とあの服を縫い合わせれば、王都でも恥ずかしくないような服が……。
なんて思っている間にあれよあれよと馬車に乗せられ、王都へ連れて行かれてしまったのでした。
取引先から観劇のチケットを貰ったから……って先に言いなさいな。
「はい、どのようなお洋服をお求めでしょう」
「なるべく暖かいもので頼む。観劇をする予定だ、ドレスコードなども配慮してもらえると」
「わかりました。ええと……こちらなんてどうでしょう?」
と品のいいご婦人が奥からドレスを出してきてくださいまして。生地からお高さが滲み出てるわぁ。これで野菜の種やら株がいくら買えるのかしら。
「その色より、向こうの青い方がいい。ここで着替えることは可能か?」
「もちろんでございます」
私の知らないところで勝手に話が進んでるわねぇ。買うのはケネス様ですし、別にいいけれど。
素直に着替えますかね。ここで時間を取るのもよくありませんし。
「どうです?」
「…………」
「満足気な顔してないで言葉を発してくださいな」
さっきまでペラペラと饒舌に話していたくせに。随分と都合のいい口だこと。
「……行くぞ」
「もう!」
王都は流石の賑わい様で、どこもかしこも家族や恋人達がたくさん。私達も恋人に見えているのかしら。まあ、婚約者なんですけども。
「あら? エミリーさん?」
「この声は……シャーロット様にステラさん。二人でお買い物?」
「はい! シャーロット様がいまだに殿下へのプレゼント買えていないって仰るから!」
ちょっと! と怒るシャーロット様。ふたりで似たようなコートを着て、ホットチョコレートを飲んでいるあたり、前よりずっと仲良くなれたのねぇ。よかったわぁ。
「では、ウォード伯爵令息もエミリーさんもよいクリスマスを」
「ええ、クリスマスを楽しんで〜」
まさか会うとは思わなかったわぁ。
そのまままっすぐ大通りを歩きまして、見えてきたのは立派な建物。ここが歌劇場なのね。
「なんとか間に合ったな」
まったく、こんな急に誘ってきたからですよ。ちゃんと事前に言ってくださればドレスくらいどうにかしましたのに。
「強引ですまなかった」
本当ですよ、まったく。
「無理かと思ったが、ギリギリで仕事が片付いた。どうしても一緒に過ごしたくて、捨てきれずにいたのだが」
……はい?




